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『短編小説』 時々なりたい悲劇のヒロイン

あの人が、先週家族旅行に行っていた。

今回は、事後報告ではなくて、事前に、しかも1ヶ月前に教えてくれた。
これは嬉しい事なのか?それとも悲しい事なのか?

旅行にいくと聞いてから、毎週末毎週末、女友達との予定を詰め込んで
私も毎週末、女友達と旅行してた。

何もないのは、分かっているし、信用もしている。
あの人の同僚が、「彼は奥さんと電話で話す時にめっちゃ冷たいんですよ」なんてわざわざ教えてくれる。
家族旅行は仕方ないとは頭では解っているけど、いつも一緒の部屋で寝ていない奥さんと旅行先では同じ部屋で寝ると考えるだけで、嫉妬で狂いそうになる。子供も一緒に寝ているだろうけど。
もちろん、旅行中だと思って、我慢してメールは送らないようにしてたけど、結局2週間1度も連絡なし。
私の事なんて、もう忘れているのかも、と悲しくなる。
この時期は、毎年家族との行事が多い事もあって、私の入る余地はないと痛感させられる。
いつも、我慢との戦い。
毎日忙しくしていないと、あの人の事ばかり考えて気が狂ってしまいそう。

そんな気持ちを解っているかのように、旅行のお土産と言って、あの人は私の好きなスワロフスキーのアクセサリーをくれる。
今回は、とても素敵なスワロフスキーがキラキラしているピアス

やっぱり、あの人は私の事を愛していると思う。

昨日の夕食の帰り道
ちょっとした事で口論になった
でも、彼は謝りながら、2人っきりのエレベーターの中で、大事そうに私を抱きしめてくれた。
この温もりは私のものじゃないと思ったら、切なさと苦しさが押し寄せてきて、家族旅行に行ったという嫉妬が拭えなくて、そのまま駅まで無言状態で歩いた。
お互いの電車が別々の方向なので、そのまま何も言わずに別れて、ひとり最寄駅を降りてから泣きながら帰った私。

あの人との恋愛になると、まるでダメな私。

愛し過ぎてしまうと、全部欲しくなる。
それを考えすぎると、すごく悲しくなる。
でも、あの人と同じ時間を共有して、一緒に美味しいものを食べたり、あの人に触れたりする事ができる今が、本当に幸せなんだと感じる事ができる
今を大切にしていこうと思う。

現実の生活は、本当に大変で逃げ出したくなる事も多いが、あの人がいれば私はいくらでも頑張れる。

本当に愛している人と触れ合えるという事は、この上ない幸せである。


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