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A to Z

あたりが徐々に黒に染まり始め、
白い光が灯り出す。

家路につく疲れたサラリーマンの流れに
逆らう優越感に浸りながら、

後ろには子供1人くらい
入れてしまうような荷物を連れて、

駅へ向かってゆっくりと歩いていく。

追いかけてくるような人はいない。

関係が少しづつちぎれっていった
日々に思いを馳せる。

綺麗になった身の回りのおかげか、

空気さえも澄み切っているようだった。

蹴りたい背中はもう見えない。

「こうまで差が開くとはなぁ……」

寂しさに漏れた言葉を聞く人もいない。

知ったような気になっていた

擦れた自分に嫌気がさす。

正当化しようと考えを巡らせる。

そういうことじゃない。

ただただ優しくされたかった
だけなのかもしれない。

散った桜の花びらのように、
かつての自分に夢を馳せる。

辛いのはあんた1人じゃないと
ラッパーの言葉に、

手と汗を握った手を
少しづつ解いていってしまった。

隣には誰もおらず、誰も辛くない。

なんでこうなったとネガティブが
渦とくだを巻く。

睨むも視線は虚空を彷徨い、

泥濘は抜け出せないまま、

根を張るように馴染んでいく。

宣う言葉は形にならず、
伝わることはない。

話にならないが、相手もいない。

人影は近づかずに周りを揺れていた。

ふと気がつくと、

へらへらした笑顔が板について、

本当に剥がれなくなってしまった。

まともがわからない
25歳になってしまった。

見かけだけ育ってしまった。

昔の彩りに縋りつく思考に、
褪せて美しい走馬灯は照らされる。

目も光も当てられない。

靄が頭から幕を下ろし、
視界を狭めていく。

辞めれたら、
どれ程楽だっただろうか。

夢を見れたら、
どれほど楽だっただろうか。

夜になれば、
どれほど楽だっただろうか。

ライトアップされた舞台は止まらず、
主人公を演じ続けなければならない。

理由なんて探したところで見つからない。

ルールを守れずに、
ボーダーを跨ぐ。

レールを外れたら意義は与えられず、
生み出すしかないのだろうか。

路頭に迷った世捨て人は、
部屋に閉じこもり、

蟠りが光で浮かび上がるのが目障りで、
灯火

を消したのかもしれない。


「ん」から始まる文章って無理じゃない?

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