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ソムリエだから知っている あなたらしさの見つけ方 〜cotreeのオンラインコーチングを受けて〜

昨夜、僕のパートナーが新しい歯磨き粉をおろした。

「これ、歯磨き粉だよね?」と聞かれた僕はパッケージにあるはずの“toothpaste”の文字を探した。

「うん、これは歯磨き粉だね」と僕が答える。

パートナーはそれを使って歯を磨くとこう言った。

「なんかこれ、外国の歯磨き粉の味がする」

「そりゃ外国のだからね」と僕は答えた。

決まって僕らは○○らしさの中で生きている

今朝、歯を磨こうとそのtoothpasteを手にとった。中には半透明で緑色の柔らかいものが入っていて、僕はそれを少しくたびれたハブラシに載せて歯を磨いた。

うん、これは外国の歯磨き粉の味がする、と思った。

なんだかいかにも大量生産され、味や風味はそっちのけの無機質な化学的な味がする歯磨き粉だった。

それを使っていてふと思った。

僕らが使う日本の歯磨き粉は、おうおうにして美味しいな、と。

皆さんはどんな歯磨き粉を使っているんでしょうか。

今までに使ってきた歯磨き粉に思いを馳せてみると、日本の歯磨き粉というのは全体的に「美味しい」ものが多かったのではないでしょうか。

もちろん、ビジネスホテルに備え付けられた、小さな白いチューブに入ったあいつなんかはわりかし無機質な味の歯磨き粉君な気もしますが、僕が今朝味わった歯磨き粉はそれよりさらに人間味のない味がしました。

日本の歯磨き粉って、なんか「美味しい」。それと違って外国の歯磨き粉はなんだか「化学的な味がする」。僕は海外経験が長いわけでもなんでもないので、いくらか僕の偏った見方によるものはあると思ってはいますが、似たように感じてくださる方もそれなりにいるのではないでしょうか。

日本のものと外国のものとで、それぞれにカテゴライズされた味がある。

こんなことはときおり、他の分野でもあります。

チョコレートが結構わかりやすい例なんじゃないかと思うんですよね。特に日本とアメリカのそれを比べてみたりすると。

たとえば、ハワイ土産のチョコレートってみんな同じ味しません?甘さの主張の強い、粘性がある大胆な味わいのチョコレート。本来メーカーの差はあると思うのですが、あんまりそういうものを感じないんですよね、僕は。

M&M’sやハーシーズのチョコレートにも似たような大胆な味わいがあるように僕は思います。なんとなくそれらは同じ方向性のものだと思っています。

日本のチョコレートはもっとなんというか粘性が少ないというか、けっこうパリッと食べられるものが多いと思ってます。冬季限定のメルティーキッスとかはちょっと例外で、あれはしっとり系ですけど、それでもアメリカのねっとり系とはまた違ったりしますよね。

CMのせいかもしれませんが、日本のチョコレートは爽やかなポップチューンだったり、かわいらしいキュートなタレントさんと合っているように思います。同じ音楽や映像でもM&M’sの映像に合わせたら、食べてる世代は合うはずなんだけれど、なんか違うな……ってなりそう。

……このM&M’sのねっとり具合(笑)。

これは僕の勝手な予想なんですけど、これ、日本の企業は「日本人ならこういう味が好き」みたいなのがだいたいわかっててそれに合わせて各社作っているから似たような味になる。そしてアメリカではアメリカ人の味覚に合わせて製品開発やPRをやっているからそれらにも共通点がある、みたいな感じがします。

あ、そうそう、僕の知人が大好きなチョコレートブランドのTops、ちょっと調べたらどうやら日本の会社のようなのですが、あれもともとアメリカンレストランから始まってるんですね。Topsのチョコレート、スケールの大きな甘さはまさにアメリカっぽいなぁと思っていたのですがなるほどアメリカらしさをむしろ出してるのか、とまで思いました。

こんなふうに、チョコレートの味一つとっても「日本らしい味」や「アメリカらしい味」みたいなカテゴライズってできたりします。もちろん細かい商品を挙げていけば例外はたくさんありますが、大雑把な方向を掴むという意味ではご理解いただけるのではないでしょうか。

そんなふうに僕らは誰かが作った○○らしさに囲まれて生きてるわけです。

マンガ「ラーメン発見伝」での名ゼリフに「奴らはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」というのがありますが、僕らは誰かの発信したそういう○○らしさみたいな情報を受け取りながら生活しているものなんですよね。

ワインにもカテゴライズはある でもそれは品種じゃないかもしれない

僕はずっとレストランで働いてきて、その中の長い期間をソムリエとしても勤めてきましたが、僕はあんまり品種でワインを語らないようにしてきました。

理由としては、品種のカテゴライズって、ちょっと飲み慣れてない人にはわかりづらいんです。

もちろん「バラやライチのような香りのするゲヴェルツトラミネール」みたいな「こう感じたらこう」みたいな品種もありますが、ほとんどの品種は様々な要素を複合して考えた結果やっと品種を特定できるもので、違う品種でも濃度の違いはあれ、似たような特徴を持っていたりします。だから、ブラインドでワインの品種あてクイズをしたらプロでも結構外します。

なんだそれと思うかもしれませんが案外そんなものです。だから僕はお客様に品種の説明はあまりしませんでした。名前にも触れないことも多かったです。

対して、よく話していた説明は産地に関するものでした。

たとえば、日本の中でも北の果物って酸味がきりっとあるものが多く、南の果物って甘いものが多いんですよ。

青森のりんご。ジョナゴールドとか結構実は酸っぱいんですよね、今度見かけたらちょっと感じてみてください。

反対に、宮崎のマンゴー。甘い。甘いですね。

ぶどうも果物ですから北の産地だと酸味がきいて、南の産地だとぶどうの甘さがすごくワインにも現れてきます。

だから僕はそのワインが気に入っていただけたら次はご自身で選ぶ楽しみも増えるように、産地の話をよくしました。「海風がびゅうびゅうと吹くところで日中と夜間の寒暖差が激しい場所なんです。それがキリッとした酸味を生んでくれてお食事を気持ちよく進めてくれます。もちろん日中は暖かいところなので芯には豊かな甘みがありますから、ちょっと時間がたってきたら口の中に広がる甘い香りもぜひ楽しんでみてくださいね」みたいな。

興味を持ってくださったら、「そのワインが中部イタリアの産まれ」だとか「ワイン買うときに産地をソムリエさんに聞いてみてそれに近い産地のもの買って見ると外れが少ない」とか、「もうちょっと酸があってかろやかな方がよければ少し北上してみてください」とか、そんな話をします。

これ、意識的にやっていくと、だいたいではありますが国ごとの差異って結構わかるようになってきます。緯度や場所による気候差のほか、国民性みたいなものもあるのかもしれません。基本、ワインはその土地の人たちが飲むように作られているわけですし、土地の味があれば土地の味にあった酒が生まれてくるわけです。日本酒とかでもこういうことはよくありますよね。

僕はこんなふうにワインを産地でカテゴライズしています。

産地でカテゴライズ、これワイン以外にもあるんですよ、ご存知ですか?

みなさんがすぐ試せるのはコーヒーです。

サードウェーブという、スタバとかタリーズの後に出てきたコーヒー世代以降の、新進気鋭のコーヒー屋さんが出しているコーヒーは産地で語られることが多いです。

「これはエチオピアのナチュラル(※豆の精製方法)で、こちらはケニアのウォッシュト(※これも精製方法)です」みたいな。

いつかのブルータスかなんかで、産地ごとの豆を擬人化して説明していましたが、ケニアとか力強いし、エチオピアはなんか可憐だし、のような感じでした(コーヒーは専門外なので細かな表現、違和感あったらごめんなさい)。

ぜひ職場やご自宅近くの、産地で売っているコーヒー屋さんを見つけて試してみてください。色々飲んでいるとなんだかその国のイメージってできてきますよ。

※近くにそんなコーヒー屋ねぇよ!という方のためにお気に入りのバリスタをお二人、ご紹介します。このnoteを書いているのは2020.4.2ですが、昨今の自粛ムードに落ち着かない二人がもぞもぞとコーヒーを入れています。動画だけでも雰囲気をどうぞ。(落ち着いたらぜひ飲みに行ってみてね!!)

人間だって同じようなもの 僕らだってカテゴライズされている

前にオフ会みたいなことをしたんですよ。ヤマシタさん、ひらやまさん、鳩田さんと僕の4人で某所で色々と話しました。それぞれの詳細プロフィールはぜひ以下をご覧ください。みなさん素敵なnoteを書いていらっしゃいます。

それぞれの僕の好きなnoteを貼っておきますね。

・ヤマシタさん
ヤマシタさんのアニキっぽさが表れてるnote。
推せるときに推せ!

・ひらやまさん
優しさ溢れるひらやまさんの珠玉のnoteから選ぶのは相当困難なのですが、にじみ出る人柄を感じてもらえそうなnote。

・鳩田さん
人柄といえば、これも鳩田さんらしい人柄が伝わってくるnote。鳩田さん、文章だけでなくお会いして話すと言葉が丁寧なんですよね。

この4人も多分カテゴライズしようと思えばできちゃうというか、こんなキャラクターです、みたいな紹介ができるんです。

ヤマシタさんはみんなを引っ張ってくれるアニキタイプ、ひらやまさんはヤマシタさんと僕がはしゃいでるのを見守りながらいつも笑ってくれるサポートタイプ、鳩田さんはそこにどこか冷静な視点と話し方で切り込んでくれるお姉さんタイプ。

……僕ですか?僕はただの酔っぱらいです(おい)。

これから仲良くなっていくに従ってもちろん別の面も見えてくるんだと思います。それでも、ある意味先入観かもしれないけれど、僕らはだいたいこうやって他人を○○っぽい人、みたいな感じで分類してるものです。

それでやっとサブタイトルにも書いたオンラインコーチング、cotreeの話につながるのですが、少し前に縁あってそのサービスを受けました。

アセスメントコーチング、ということで事前にアンケートのようなものに答えてそれをもとに自分の状況を話しながら進めていきました。

なお、オンラインでつながって最初に「ひらやまさんに『今はっきりとした悩みはないんですけど受けても大丈夫ですかね……?』って聞いたら『大丈夫です!』と言われたので受けました」って僕が言ったら苦笑いしていた徳田コーチ、すいません。。

カウンセリングは、事前に答えた調査結果を見ながら進みます。

一部だけご紹介すると僕の場合はこんな感じでした。

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とりあえず性格特性からは金儲けしたがってること(おい)と、ソーシャルスタイル分析からは明るく躍動的なことがよくわかります。

このうちの「ソーシャルスタイル分析」について、徳田コーチと話していくうちに「これは社会の中での自分の役割と思ってみてください」みたいな話が出たんですね。

悩みはない、とか言ってましたけど、深堀りしていくと僕にもそれなりの悩みはあるわけです。たとえば僕は自分がリーダーになってみんなを先導するのってすごく苦手意識がある。

でもこれからいろんなことを仕事や仕事以外でもしていくにしたがって、人の上に立つ場面ってどうしても出てくる可能性があるわけです。どんどんおっさんにもなっていきますし。

そんなときにリーダーらしく振舞えなかったらどうしようかな、みたいな不安ってあるにはあるんですよね。

で、こうやってオンラインコーチングを受けつつ、「あぁ、僕はこのあたりにカテゴライズされてるんだ」と分かると自分なりの攻め方が見えてくる。

また、徳田コーチと話す中で「この全部の役割を自分が担う必要はなくて、組織の中にそれぞれ得意な人がいればうまくいく」のような話題になりました。そのとき「あ、自分が全部やらなくていいのね」と肩の荷がおりるような感覚になったのを覚えています。

そう思いながら過ごしている中、先程の3名の方と話していて「あぁ、僕らそれぞれ得意な分野って本当に違うんだなぁ」としみじみ思ったわけです。

何かイベントをやろうとした場合に、ヤマシタさんには先陣を切ってもらって、ひらやまさんにはそれを戦略的に支えてもらい、鳩田さんにはそこにある僕らが気づいてない魅力を表現してもらう。一例としてそんな役割分担ができたら一つのイベントがうまくいくんじゃないかと、4人で話しているときに妄想していました。

あ、僕はですね、横で美味しそうにワインを飲む係です、はい。そそぐのと飲むのは上手いんですよ、お任せください。

ワインと人はすごく似ている

ワインって、単体でも美味しいんですが、料理と合わせると恐ろしいくらいのパフォーマンスを示すときがあります。

僕がソムリエかけだしの頃、キッチンの見習いの男の子と相談してこんな企画を始めました。

毎月、1万円ずつ出し合って彼は料理を作る、僕はそれに合わせてワインを買ってくる。彼の自宅でそれを行ったため「リストランテ○○」と名付けていました(○○には彼の名字が入る)。

彼の奥さんと、当時お付き合いしていた僕の彼女と、彼と僕の4人だけの、一ヶ月に一日限定のリストランテです。

彼は料理作るのに精一杯であまり食べられず、今思えば申し訳なかったのですが、とても良い会でした。1年以上続いていた会でした。彼は珍しいイタリアの地方料理にもチャレンジしてくれていたので、ワインのみならず料理の勉強にもなったんですよ。

ワインの選定はこんな感じでやっていました。

彼がメニュー案を作る。その調理法や食材を聞く。その地方で一緒に飲まれるだろうワインを調べる。

ある日彼がシチリア料理でよく見られる、イワシとウイキョウのパスタを作りました。イワシの臭みをウイキョウのハーブ感がうまくなじませてくれ、イワシ自体の美味しい苦味を楽しめるシンプルなパスタです。

これに僕はシチリアの白ワインを合わせたんです。なにしろ10年以上前のことなのでちょっと記憶があやふやですが…たぶんこのあたりですかね……

パスタが来るのを待ちながらワインを飲む。

パスタが置かれる、ウイキョウの香りがふわっとする。

取り分けたパスタを口に運ぶ。

……

ワインを飲む。

……!?

口に運ぶ

……!!!

ワインを飲みたくなる!

パスタ食べたくなるぅ!!

またワイン飲みたくなるぅぅぅ!!!

と、ワインとパスタの最強ループになっていったんですよね。

これがいわゆる料理とワインのマリアージュかと当時感動したのを驚いています。こんなにお互いが次々と欲しくなるものかと。

ワイン単体だと「うまいねぇ〜!」くらいのものが、「なにこれうまいんだけど……ちょwおまwwwとまらんwww」みたいになってたというか。

こういうのって、人にもあると思うんですよ。

誰かと一緒に何かをしたときに、思った以上の成果があげられたり、予想しないくらい楽しい会になったり。

イワシとウイキョウのパスタは、単体ではなんでもないシンプルな料理です。かけだしの彼の腕を考えてもそれが絶品ではなかったかもしれない。でも、そこにいた全員が虜になる美味しさになっていたんです。そんなことが人でもきっとある。

自分らしさ、というのは自分だけの世界ではなくて人と人とのつながりの中で見つかっていくし、発揮されていくものなんだなと思うんです。

僕はもともと人嫌いで、できるだけ人と接しないように生きていた時期がありました。

大学生の頃は運動するのにも一人でサイクリング5時間とか、市営プールに行って休み休み3時間泳ぐ、とかしてました。みんなが「フットサルしようぜ!」と集まるのにどうも参加したくなかったんです。

でも社会人になって多くのワインの個性を知り、その広大な世界に触れ、今ではそれらがきっかけになってこうしていろんな人たちと出会っていく中で、僕らしさみたいなものがぼんやりながら見えてきています。

もちろんその「らしさ」は変わっていくでしょうし、これから出会う人たちによっても刺激されていくのだと思います。

僕がワインを通じて自分に出会えたように、たぶんみなさんも何かを通じて素敵な自分に出会えることを願っています。それははっきりとした言葉にできないものかもしれません。それでもいいんです。

今まではそうでなくても、単調な料理が突然のワインとの出会いで唯一無二の感動を生み出すものになったように、次の瞬間には「あなたらしさ」による感動が生まれているかもしれないのですから。

陰鬱な日々が続きますが、少しでもよい一日を。ではまた。

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