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本当の意味を読み解く力がデザイナーには必要な時代です

どうも、ベテランです。
ここ2〜3年のネット上でフィーバー(死語)していた『独学からのいきなりフリーランスデザイナーでデビューしよう大作戦』がちょっと落ち着いてきたかな・・・と思いきや、またしてもぶり返してきた感のある今日この頃です。

再三、「デザイナー職」の最短距離は「まず就職」を推奨してきたワタクシですが、就職を推奨しているのはなぜかというとあくまでも「最短距離」という事での話で、不可能だとは一切言ってません。
たとえば・・・

こんな人なら学習からそのままフリーランスも可能

  • その分野における能力が元から非常に高い(人並み外れるレベル)

  • 非常に太い人脈がある

  • 他人との会話が好き、または積極的に動くことが好き

  • 行動範囲が広い

  • 社会人経験があり、既にクライアントワークが身についている

  • 経理や税務面の知識があるか、委託先を既に見つけている

  • 収入にあまりつながらなくても生活に困らない(別の収入源がある)

  • 趣味程度でも問題ない

  • 失敗してもすぐに他の職業に就業可能な年齢or資格持ちである

とりあえず、フリーランス=個人事業主、であるからには必須である「責任の所在感」「お客様との距離感をわきまえてうまく立ち回れる」ような方は、間違いなく「可能」な人とも言えるでしょう。

そういう方にはぜひともトップクリエイターとしてセンセーショナルに場を切り裂いて走り抜けて頂きたい・・・とは思います。

しかし別の問題が目に余る・・・

ただ、どうも心配に思ってしまうのが、SNSなどによくある「完全に業界未経験・他業種や学生で1から独学でフリーランスになって数ヶ月という立場の方に話を聞いて参考にする」方が非常に多いところ。
そういう方たちがよく書いているキーワードとして「自分と同じ立場の人の話を聞いて、勇気をもらった」という部分。

確かに「自分と同じような立場」の人の話は「自分でもできそう」と思うことでしょう。要は「安心感」ですね。
そこでよーーーーーーーーく考えて欲しい。

あなたなら、今の自分の経験、今の学習状況を「お金を払わせて」聞かせることは果たして相手にとってプラスになると思いますか?
その相手の方は、もしかしたらあなたと同じレベルや学習スピードでほんの少しだけ先を歩いているかも知れません。そこで運良く「最初の仕事を受注」したのかも知れません。

「安心感」を得て、さて、次に取るべき行動は?というところまでを考えてみましたか?残念ながら、どうやらこの安心感を得ることでそのまま立ち止まる人や、そこから全く動かない人がたくさんいるようです。

プロであれば、こう考えます。
「話を参考にさせてもらって、『同じことをしないようにしよう』」と。
そして、プロは自分よりはるかトップクラスの方の話は、マインド面やその思考、プロセスなどはとても参考になりますし、新しい考え方の発掘にもつながり、モチベーションにもなります。

ただ、あくまでも「仕事内容や分野、ノウハウなどは丸かぶりしないように気をつけるもの」です。
なぜなら。

同じ事ができる同じレベルの人が2人いたとして。
ギャラ設定なども全く同じだとして。
クリエイター側のバックボーン(背景)などもほぼ同じカテゴリに属しているとしたら?
本当に少ししか違わないとしたら?
お客様が依頼する先が一人の場合、どちらを選ぶでしょう。

おそらく「他の初心者からお金を貰って、体験談を話して『ビジネス化』させることを知っている、商業的感覚により優れた人」を選ぶでしょう。
実際に技術面が同じであっても、そういう人はお金を得るための工夫を知っています。

さらに、もしも同じジャンルで同じものを作り、選択肢の場に出てくることがあれば、クライアントはトップクラスの人を選ぶでしょう。ギャラの問題さえクリアすれば、という条件つきになりますが。

何かの違いがなければ、何かの特筆したものがないなら、後発組はすぐに選ばれるようなことはありません。

プロの世界が厳しいと言われる所以

もちろん、普段情報交流をして、仲良くして切磋琢磨することは大切ですし、同業者同士で助け合うことだってたくさんあります。
大きなプロジェクトであれば協働することだってありますし、手持ち案件があふれるときには他のクリエイターに協力を要請したり、自分にはできないようなものなら、その案件に適している信頼できる知りあいを依頼主に紹介して仕事をつなぐ、なんてことは普段からよくあります。

それは、クライアントとの信頼関係を途切れさせないための大切なことです。そして、その思考を持つ同業者とのつながりも大切なものなのです。

ただし、プロの世界はまず根底に「仕事による報酬で生活をしている」ということからも最終的に「仕事」に関しては基本的には同じジャンル、同じカテゴリの人であればライバル同士であることも忘れてはいけないのです。

なお良くないことですが人によっては「相手を陥れて蹴落として仕事を奪う」ということもあるでしょうし、自分が奪われる側に回ることがないとは言い切れません。私も実際、仕事を奪われたことだっていくつかあります。蹴落とすことや、騙す事などは言語道断であってはならないことですし、自分がそちら側へは決して行かないように気をつけたいものです。

独学でもデザイナー/エンジニアになれる、の本当の意味

そして、プロとして仕事をするのであれば、この業界に限らず「本質を見抜く力」こそが最も大切なものとも言えます。

つまり、表の言葉だけを見ていてはダメということです。

言葉の意味をよく考えることが基本になります。
「独学でも○○になれる」は、間違えてはいません。

もちろん私も独学からデザイナーになったクチです。
しかし「はしあやが独学でなれたなら、自分もなれるだろう」と今思っても、全員がなれるわけではなく、なれない人も多数出てくると思います。
もしかしたら、50人がたった今上記のことを考えても、1人か2人しか最終的にデザイナーを仕事にすることはできないのではないか、とも思います。

その一つの見極めとして、
「私も独学でデザイナーになりましたよ!」
この言葉を聞いて、何をまず思ったか、というところです。
「デザイナーになった」という事実だけではなく、「独学」とは何をしたのか「デザイナーになるにあたってどんなスケジュールで、どんなことをしてきたのか」という結果に至るプロセスがあるのだ、というところまでを即座に深く考えられたかどうか、です。

「独学」と言っても、

  1. ただAdobeソフトの練習を1ヶ月やってみた

  2. 勉強用のブログを見てなぞって1回練習してみた

  3. 本を数冊買ったり有料の動画講座を購入して2ヶ月ほどやってみた

  4. デザインの教室に半年通ってみた

  5. デザインの基礎を勉強するために大学へ入学して4年みっちり勉強した

  6. 子供の頃からずっと画を書き、美術部に入りデッサンを少なくとも20年以上やってきた

さて、どれを想像しましたか?

1と4でもかなり違うイメージだと思いますし、5や6まで行くと、今、なんとなくの余暇で真似しようと思っても無理だというイメージになると思います。
実際は4と6ですし、さらに当時の時代背景や運や人とのやり取りその他があってのことですので、おそらく今の時代では再現は不可能なので、当時の状況を聞きたいという方がいたとしても、何かのドキュメンタリー的な楽しみ方をして「マインド面」のみ参考にして頂くしかなさそうですが・・・。

私と同じように「独学から」Webデザイナーになられた方でこんな方がいらっしゃいます。
おいナビさん。(リンクは上から)

しかし、この方のブログ内容を拝見して「私も50歳になったらWebデザイナーの勉強をしよう!」とは思いません。もし思ったという方がいたら、失礼ながらデザイナーには向いていないので今のうちに諦められたほうがいいです。
まず「内容を読んでから」もしくはせめてリンクにある「概要のテキスト文章」を読んでから、それでもできる!と思った方のみ最初の一歩へ進むことをおすすめします(ややこし
※もちろん、ブログ自体はとてもおもしろいので読んで欲しいところですが

概要文章にはこう書かれています。
「HTMLの独学からスタートして15年間続けた仕事への思いと・・・」
こちらの方は現在65歳、つまり、もしブログがつい最近書かれたとしても、独学でHTMLを勉強されたのは今から15年以上前ということです。

ここから考えるべきことは、今から15年前のWebまわりの環境がどうだったか、ということです。
まずはそれらをネットで検索してもいいので調べてみましょう。その上で記事を読んで見ること。そこから導き出せる答えがあるでしょう。

なお実際には、最初にインターネットを触ったのが1996年と書かれていますし、よく読み込めばわかりますが。おいナビさんはそこからWebデザイナーを目指そうとした50歳より5年も前に既にHTMLをちょっと触り始めています。そう、最初にWebデザイナーデビューの前に5年の独学期間があったのです。
当時はプログラム系の理論などが得意な方ならそこまで無理しなくてもその年令からでもなんとか習得するのは不可能ではなかった時代でもあり、Webデザイナー自体の数が今よりずっと少なく、グラフィカルな要素も少なかったような時代、ということでもありますが当時のパソコン機器の価格帯は今よりずっと高額で、なおかつインターネットも一般的に普及していない時代、家庭にPCがあるなんて「マニアック」と呼ばれていた時代です。

今のように教則本も大型の本屋に行かないとない時代です。
当然ながらAmazonもYou Tubeもこの世に生まれてない時代です。
それでも、5年はサイトを作りまくったわけです。
これが本当の「独学」というものでしょう。情熱と根性がないとできないと思います。

私はまだインターネットがちゃんと世間に波及する前、小学生時代からプログラミングをかじってましたし(中学時代に独学でBasicで簡易なゲームを作って遊んでいた)さすがに20年以上デザイナーをしているので、Web側の人たちの状況はなんとなく知っていたので「○○年前〜〜〜」でピンと来て、「今50歳の人がHTMLを勉強しただけでWebデザイナーになれるんだ!」とは解釈しないのですが、先日若い方にこの記事を見せてみたところ、なんとそのまま先程の意味に受け取ったということがありました。

知らないなら、まずは調べる。
しかし、この方はそれをしなかった。
なぜしなかったのかと聞いてみると「調べ方がわからない」「スマホを開いても書かれていない」だから、わからなかったと。

それは「何もしない」のと同義語なのです。
わからないなら調べる。調べてもわからないなら、調べ方を変える。
方法も見つからないなら、別の面から調べてみる。
それでもわからない場合は、業界の先輩となんとかコネクションをつなげて質問してみる。質問は全ての回答を求めるのではなく、もらった回答から自分なりの解釈をまとめ、そしてその審議を確かめる。
ここまですることこそがこの業界で生き抜いていくために必要な行動様式です。

裏の意味を読み取る力が威力を発揮する場面

実際にデザイナーの仕事では「裏の意味」に気づくことで、無駄な堂々巡りを事前回避できることに繋がります。

例えば、デザインの仕事をするときには、こんな方々とやり取りをします。

  • お客様(担当者様)

  • お客様(担当者様の上司の方や経営者様)

  • 営業担当(同じ社内、または外部の営業エージェントなど)

  • ディレクター(同上)

  • 他のデザイナー(同上)

このうち、ディレクターや他のデザイナーなどであれば、比較的業務内容に精通しているために言葉をそのまま受け取っても問題のないことが多いです。(だといいなという意味で。もちろん摩訶不思議な方もいらっしゃいますので・・・

しかし、営業はともかく、別業界のお客様からの言葉については、本当に「額面通り」に受け取るとご希望されているのが全く違う内容だった、ということは往々にしてあることです。また、結構ありがちですが経験の少ないディレクターからの指示内容が「ざっくりしたもの」や「雰囲気のみを伝えてくる」などということもあり、様々なぼんやりしたものをそのまま放置してはデザインすることが難しいため、一つずつほころびを取ってゆき、こちらからもお客様の示す言葉の裏までを見抜き、噛み砕いて説明し、本来の望む結果へ導くための能力というもの、つまり「裏の意味を読み取る力」が必要になってくるのです。

斬新なデザインをするデザイナーが必ずしも優秀とはみなされません。
どちらかというと、要望をきちんと具現化できるデザイナーのほうがより重宝されるため、賞レースが中心ではなく通常の商業デザインを生業としたい場合には、必ず「読み取る力」を鍛え続けることをおすすめしたいのです。

今、目の前に見えているSNSの文章でも構いません。
これからは「本当の意味は何か?」を考えるクセを身に着けて、本物の力を少しずつ養っていくことも、勉強のプラス(+)要素として良いものですよ。

記事を読んで「コンビニコーヒーでも1杯おごってあげよう!」と思った方はサポート頂けると嬉しいです♪ ※高額はやめてくださいね。あくまでもコーヒー代の足しにさせていただければこれ幸いです(笑