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本物のデザイナーと遭遇した話

どうも、なんだかジャンル限定して○○デザイナーと名乗れなくなってきている「マルチデザイナー」のはしあやです。

今回は、かつて遭遇した『本物のデザイナー』さんのお話です。

チラシ作ってる人?

かなり昔の話になりますが、当時の別の部署にいた先輩で、いつもちょっとダサ目の「チラシ」ばかり担当していた方がいらっしゃいました。
その方はすごく正確に丁寧に紙面を作られていて、間違いもほとんどなく「デザイナーというより職人」というイメージで見ていた記憶があります。

A先輩と呼ばせていただきましょう。

当時の私はまだまだひよっこ、デザイナー歴数年のまだまだ未熟なやつでしたので、やはりその年代なら誰もが通過する「派手で大きな金額の動く仕事こそがすごいデザイン!」とちょっと思ったりもしていました。

私の周りの同期達も同じような感想で、酷い人によっては「ベテランになっても、Aさんみたいな仕事は続けたくない。もっと凄いデザイン作れる上のデザイナー目指したいから」と平気で言っていた人も・・・。

さすがに私はA先輩の「職人肌」の正確なレイアウトに感服しているところもありましたし、すごいことは実感していました。

でも、やっぱり周りからは「チラシ担当の人」というイメージではありました。

やればわかるさ

ある日の事、ほとんど休みを取らなかった(※当時、有給を取ったら減給するぞというブラックがまかり通っていたので)A先輩が、珍しく数日連休を取ったことがありました。

しかし、週に数回のチラシの締切はやってきます。
その先輩からは、他の部署の5年先輩Bさん(DTPオペレーター部の方)と、デザイン部の私が名指しで「依頼」されていたとのことで、先輩の仕事の代打をさせて頂くことになったのです。

先輩がファイリングしてくれていた「原稿」を見て、思わず唸りました。

お客様から送られてきている原稿類の用紙はきちんとページ毎、コーナーごとにさらに小さいクリアファイルに入っていただけでなく、前回までで似たような感じで作っていた「参考にすべき号数」「ファイルの位置」の表記、レイアウトで難しい場合の回避方法を数パターン予めヒントとして手書きメモ、そしてさらに付箋で携帯番号(休みなのに…)と、迷惑かけてしまうけどよろしくお願いねというメッセージ。

なにこれ、完璧じゃないですか?

普段はオペレーター業務であるB先輩にはもっと詳細なレイアウト指示が入った赤原稿も付いてました。

で、早速レイアウトしてわかったんですが。

チラシ、めっちゃくちゃ大変です。
難しいです。
これを強引に入れ込まないといけない上、自然に「無理してないですよー」という配置でありながらも、売場担当者の意図している配置は崩してはいけないという。

高度テクニックいるやないかーい!!

A先輩の仕事、侮ってるヤツいたらでてこーい!!!!!!
この人、今思えば超優秀なディレクションやってるじゃないですか。
私のレベルに合わせた見ればわかる原稿と指示。
B先輩のレベルに合わせた見ればわかる原稿と指示。
当時、ディレクションとかの概念はなかったんですよ。

チラシと言っても現在は2パターンあると思います。
①既にある程度フォーマットパターンがあって入力だけすればほぼ自動的にレイアウトが決まるタイプのもの(CMSシステムを入れているもの)
②完全に人の経験と力でレイアウトするもの(この当時はコレ1本)

でも、先輩の置いてくれていた「ヒント」をもとに、なんとか仕上げることができたのでした。

なお、この経験があったため、先輩が忙しい時にはヘルプで急遽チラシ作ったり(私は本来、チラシ以外の別のパンフとかポスター系の担当が多かったのです)が、先輩が退職してこの仕事が外注業者さんへ行ってしまうまでの間、大変だったことはいうまでもない・・・。

やっぱりすごい人だった

ある日、会社の会議室の大きなテーブルになにやら見たことのない素敵すぎるデザインのチラシが置かれていました。キャンペーン用の広報チラシらしかったんですが、確か他社で作られたもので。

同僚たちは「いいなー、こういう仕事やりたいなー」とざわざわ。
そこにやってきた営業部の方が一言。

「あ、これ、前にうちにいたAさんが作ったやつ!」

同僚たち、さらにざわざわ。

いや、Aさん本当に優秀だったんだよ!
こんなすごいデザインだって難なくこなす人だったんだよ!!!
そりゃもっといいところに転職できるよってずっと思っていたよ。
なんで他にする人がいないとか、新人達が敬遠するからってA先輩をチラシ業務でしばりつけて辞めさせたんだよ〜。

もっとA先輩の「丁寧で正確なディレクション」と「部下に気づきを与えるディレクション」を体験させてほしかった・・・。

部署が違うしこちらの方がデザイン主体だったのもあって、直接「デザインそのもの」を教えてもらったわけではなかったけれど。
レイアウトでの気をつけるべき箇所などは、教えてもらったわけじゃなかったですが、横からA先輩の成果物を見ては自分と何が違うのかを研究してみたりと、とても参考にさせて頂いていました。
本当に、仕事のやり方や周りとの調整方法など、色んなものを沢山持っていた「本物のデザイナー」でした。

そして私も型破りなデザインを目指すのはやめ、Aさんのような仕事をしたいと思い(別部署だったからずっとちゃんと見ていたわけじゃなかったけれど)できるだけ実践しようと頑張って頑張って。
目標を実際に見た人が頑張れる力は、遠くの有名人を目指すより現実感があるようにも思えるでしょうが、周りもその人の仕事を知っている分、そう簡単じゃないということも実際に身に沁みて感じることができます。目指す先は思った以上に高く険しかったです。

その後、会社がさらに混沌と化したために私も転職をせざるを得なかったわけですが。

退職する時、なんと後輩から今度は私が同じ言葉をかけてもらいました。

「先輩が目標でした。辞められても、先輩を目指して頑張ります!またいつか指導してくださいね!!」

もしかしたら、Aさんにちょっとは近づけたのかなって。
その時すごく嬉しかったのを覚えています。

意外と身近な人が凄い人かも知れない

今はネット上で派手な活動をしている人こそが「すごい人」ともてはやされる時代ではありますが、身近で地味な仕事をしている人が、実は言わないだけで本当にすごい人だった、ってことだってありえるのです。

でもそれって、直接対面して体感してみないとわからないこともあって。

外向けに大きく見せることが上手な人もいれば、すごいのに出せてないもったいない人もいる。

世間では後者を馬鹿にすることもありますが、私はそういう人こそがすごいと思っているので、やっぱりリモートワークだけじゃなくてちゃんと出勤して同じ空間で先輩たちの仕事っぷりを肌で感じたいなぁと思うのです。

すごい人の仕事を見たいなぁって思ってるそこの皆さん、ちょっと一息ついてまわりを見直して見るのもいいかもしれませんよ?

意外なあのひとが「すごい人」だったりして。

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