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フリーランスデザイナーがなぜ納期に遅れてはいけないのか?というお話

どうも、ベテランデザイナーのはしあやでございます。

フリーランス(※個人事業主)クリエイターやエンジニアの方でも、そこそこ長く続けている方には経験があって、業界未経験で参入した・もしくはこれから参入しようとしている方が遭遇していないものの一つに「実際のトラブル」というものがあります。

代表的なトラブルと言えば…

・成果物のクオリティが低いとクレームが来てやり直しになった!
・追加仕様が多すぎて費用に見合わない作業量になった!
・内容が変更になってやりなおしになった!
・素材や内容に関する情報が全くあがってこなかった!
・そもそも作成したものにミスがあった!
・急な体調不良により作業ができなくなった!
・その他、いろいろな理由で…
『納期に間に合わなかった!』

結局、クオリティが低くてやり直す場合も、ミスがあってやり直す場合も、それらはイコール「完品を納品していない」つまり「納期に間に合わなかった」とくくることができます。

そして、「納期に間に合わない事」には2つのパターンがあります。

・クライアント側の都合で納期がずれ込んだ
・制作側の都合で納期に間に合わなかった

クライアント側都合は、「トラブル」ではありますが責任はクライアントにあるものですので問題はありません(作業時間が圧迫されることによってミスが誘発されるという悪癖はありますが)。ただ、一部のクライアントによっては制作側に責任を押し付ける場合もありますので、契約書はしっかり読み込んで内容に不備がないか予め確認しておきましょう。

問題は下段の「制作側都合で間に合わなかった」です。
この業界ではまずあってはならないことであるという認識を持って仕事をするというのは、必要最低限のマナーでもあります。

この部分が抜けてお仕事をすることは厳禁とされています。
では、なぜダメなのかを順を追ってお話いたしましょう。
※今回は背筋ゾッとする経験者の方も多いと思います…

納期が遅れると誰が困るの?

さて。お仕事はPCの上で行うものではありますが、勝手にPCから発生するものではありません。
まず、その仕事(案件とは呼びません)は、どこから来ていますか?ということを考える必要があります。

そう、クライアントがいてこそのものです。
クライアントの要望を形にして、その対価を頂く。
ここの観点が抜けていると、色々と困ることが起こっても、つい「仕方ないでしょ、○○で無理だったんだから」と考えてしまう方もいるのではないでしょうか。

仕事である以上、「仕方ない」はないのです。

例えば、自分ひとりで仕事を請けた場合

まず、この場合に損害をこうむるのは誰でしょう。
※Webサイトの発注だとします。

約束の納品日に全く間に合わなかった、もしくはクオリティが低かった等でやり直しになった場合に困る人は?

クライアント

がまっさきに頭に浮かぶことでしょう。
「プロに頼んだから待っていれば出来上がるはず!」
と半ばワクワクしながら納品されることをまちのぞんでいらっしゃいました。なのに一向に上がってこない。問い合わせれば、まだできていない。

こんな状態では、クライアントも怒って当然でしょう。

その後の対応として、クライアントから代金の値引き要求があったとしましょう。もし、10万円で請けていたお仕事で半額値引きを伝えられたとしたら?(実際には納品できなかったらそれで済まず、支払いなしになることもゼロではないと思います。働いた分を支払ってもらえるシステムではないので…)

ここで制作者としては5万円の損失です。
10万円もらえると思っていたのに、5万円しか入りませんでした。
時給で換算すると一気に半額です。

さて。経験者の皆様はここで「待てよ待てよ、それだけじゃないだろう?」とニヤリとしているでしょう。

損害を被ったのはクライアントだけでしょうか?

場合によっては、これが納品されなかったがために契約にもよりますが、数倍の金額の損害賠償が発生することもありえます。

なぜなら・・・

(仮定)『Webサイトの目的がイベント告知のものだった』場合。
・イベント告知のスタート日が遅れたことによる、申込み人数分の損害
・別媒体への告知(特に印刷は先行している場合が多い)の再作成費用
・既に申し込みを済ませているチケットシステム各所への調整連絡人件費
・関係各位のメンバーの手間、時給の発生…etc

これらが一気にかかってくる場合もあります。

また、セール告知であったり店舗のオープンでも同じことです。
予定していた広告を出せなかったということは、そのサイトを世に出した場合に見込まれていたであろう売上関連の分(実際にはまだ発生していないが)が減ってしまう(=損害)場合だってありえるわけです。

もちろん、Webサイトを出したからと言ってすぐに検索に乗るわけでないのは当然ですが、上記のイベント関連に出した例などでは、別媒体(例えば新聞やテレビ・ラジオ広告など)で先行して告知をかけていたりもします。期日に間に合わなければトラブル時対応をしなくてはいけません。他メディアへの再度の訂正広告を出すには日数もかかり、追加で数十万円以上がかかることだってあります。
告知していた日にスタートできていないとなると、主催者側の信用問題にも発展しかねません。

一人で請けた仕事でも、その仕事の周りには多数の関係者が存在している、ということを肝に据えて取り組むことが大切です。

そして、一度の納期遅れは、クライアントがリピーターとなっていたかも知れないという可能性を潰してしまいかねません。ネット上での仕事なら、悪評価がつくでしょうし、紹介での仕事なら紹介者の顔に泥を塗りかねません。その周囲からは仕事の紹介は二度とないかも知れません。

非常にリスクが高いと言えるでしょう。

下請けで請けた場合

ということで、一人で請けて納品できなかった場合はその人やクライアントだけではなく、周りにも迷惑がかかること、本人の評価も落ちてしまうことは理解頂けたかと思います。

そして、制作会社や個人フリーランスの方からの下請けとして仕事を頂いている場合も同様です。その納期遅れは場合により、仕事を出した側(制作会社や仕事を出したフリーランス)で巻き取って挽回してくれることもありえます。

が、それも「挽回できる時間のうちに報告連絡相談」があってこその話。

間に合わないギリギリになって「できません、無理でした」の連絡をすることはご法度です。いくら百戦錬磨の制作会社でも、ギリギリではどうやっても挽回はできませんし、何も連絡しないなんて言語道断です。

制作者が有耶無耶にしたところで関係者が存在する以上、責任から逃れることは不可能です。

今までその会社が積み上げてきた信頼を、仕事を受けた外の人が一気に潰してしまう危険性だってはらんでいます。
そのリスクを背負って、元請けは下請けに仕事を出しています。

よく、下請け業者が「元請けが手数料を引いている」と愚痴をこぼしているのを見かけますが、元請けはそれなりのリスク(表に立って名前を直接エンドクライアントに出して商売している)を背負っているのですから、それは当然とも言えることなのです。

※3次請け4次請け構造や、中抜き金額の割合が高い等は別問題として。

また、アルバイトとしてその会社の監督下で仕事をしているならまだしも、フリーランスとして仕事を頂いているということは「責任を持ってやり遂げます」という意思表示(あるいは契約書に基づく契約)をしていることでもあります。立場としては「対等」なのです。
その信頼を裏切るような真似は決してしてはいけません。

なお、「対等」というのも意味を履き違えてはいけません。
仕事に対しての向き合い方を指しているのであって、あくまでもお金の流れで考えればわかりますが、依頼者と受注者の立場です。
仕事を出している側は責任を持って外注フリーランスに「依頼した仕事を完遂することを条件」として渡しているので、その条件に従って「納期内に完納する」のは義務となります。

※もちろん、仕事を外注に出す側も逐一報告してもらい進捗管理や監督をすべきではありますが、ここはそちらの観点での話は省いています。

制作会社や個人からの下請けで仕事をして、納期遅れの場合は、損害賠償になる手前で回避できることもあります。もちろん、仕事の巻取りを行うことで仕事を出した側に多大な迷惑を掛けてしまっています。

対応次第では、失敗を許してくれて引き続きお取引ができる可能性もなくはないですが、ここできちんとした対応(事前連絡等)ができなかったり、クオリティが極度に低かったりした場合は残念ながら二度と発注を頂くことはないでしょう。

ではどうやって納期に間に合わせればよいか

スキルがその仕事に見合っていない場合、要求されたクオリティで納期内に間に合わせることが難しい場合だってあるでしょう。

回避策は、

・依頼主、元請け業者に逐一進捗報告をする
・事前にどこまでできるか等のスキルチェックをお願いしておく
・万が一の場合の対処について仕事前に話をしておく
・スケジュール管理をしっかり行う
・間に合いそうにない時は寝る時間を究極削ってでも作業時間を確保
・納品前に必ず早めの段階でチェックをする
・トラブルの際のヘルプ(有料で質問できるところや人)先を作っておく
・協力会社やフリーランス等と繋がっておく

他にも様々な回避策は考えられると思います。

特に、まだスキルが安定していない時期に請ける仕事の場合は、よくネット上で見かけるブログに書かれているように「怖がらずにプロとして仕事を取ろう!」を真に受けず、きちんと現状で自分がどこまでできるか等を下請けで請けるなら元請け業者に伝えて、責任を持てる範囲を明確にしておくことや、直接クライアントから請ける場合でも、できること・できないことについては契約前にしっかり話し合うことで解決できることもあります。

なお、これらをせずに「自分はプロです」と仕事を取った場合は、お客様からは見極めなどできませんので、思っているレベルのものでないものが納品されたり、納期に全く間に合わなかった、なんてことがあると「この業界のプロというやつは…」と、業界全体に対しても迷惑をかけてしまうことにも繋がりかねません。

とは言え、長く仕事をしている人たちもこういったトラブルを経験してきた人は少なくないと思います。また、会社員として仕事の流れをしっかり身につけてから独立したフリーランスに至っては、発注側を体験していることも多々ありますので、相談に乗ってくれる人(メンター)もいるでしょう。

これから目指す人も、最近なった人も、それから、長くやってきている人も全員ひっくるめて…まずは、フリーランスだけじゃない「制作者」としてやっていくための必要最低限である「納期に遅れない」はしっかり心に刻んで、「プロに頼んで良かった」とクライアントに言ってもらえることを目指していきましょう。


(追記)

基本的にこちらに書いているような「損害賠償請求」のようなことは、ほとんど起こりません。指示出し側の不備もありえますし。ただし、同じく書いているように「きちんと事前に報告連絡相談」ができていればこそ、ということです。連絡せずだったり、連絡できないように着信拒否するなんてことはNGです。

どんな場合でも、不慮のトラブルはつきものです。そのときにどういう行動を取れるかと言うことが、プロとそうでない人との違いでもあります。

でも、基本的には締め切りは守ろうね、ってことですね!

記事を読んで「コンビニコーヒーでも1杯おごってあげよう!」と思った方はサポート頂けると嬉しいです♪ ※高額はやめてくださいね。あくまでもコーヒー代の足しにさせていただければこれ幸いです(笑