見出し画像

門下生作品講評【No.1】

◉東京教室 伊藤理香さん「無心」

5月、6月と2ヶ月かけて取り組みました。
この作品に至るまでは、約60枚書いたそうです。
理香さんは古典書道を長年やって来られていますので、
紙と墨の相性をとてもよく理解していますね。

特徴的なのは、背景の模様の作り方です。
身近な日用品を色々試してみて
とても楽しんで創作しています。
ポツポツ…とあるこの模様は、
ゴムの滑り止めがついた「軍手」です。

「無」の最後の長い横線の入筆の角度と
圧力も良いですね。
たくさん書きすぎて疲れてくると、
ここの角度が弱く、傾いてきます。
墨の量を考えながら、ゆっくりと引っ張って
最後の最後まで気を抜かず、ねばって掠れを表現しています。

「無」の縦線は本来4本ですが、
これはそれ以上ありますし、上に飛び出しています。
『線の距離を稼ぐ』『一本の線を長くする』
これは私がとても大切にしている考え方なので
それを遂行していますね。線が綺麗なのと
ストーリーが見えてきます。

「心」は、わざと少し小さめに、
コロンと丸く書いています。
これは上の「無」のダイナミックさを際立たせるための
「引き算」です。
全体として、紙の下にグッと塊があると
引き締まりますね。

「心」から出てる細い線、
反時計回りにシューっと出てる細い線、
これもまた最後に引き締める効果と、
何かストーリーを感じます。
ここも細部まで気を抜いていません。


これからも、理香さんの
独自の「表現方法」を楽しみにしています!

2023.06.16@東京五反田

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?