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門下生作品講評【No.11】
◉札幌手稲教室 本間智美さん
『明』
智美さんは長く通われていて(たぶん5年くらいかな…)
3年前に、私ともう一人の生徒と3人で
札幌のギャラリーで共同展示会をやった方です。
絵本作家でもあるので、
絵画的な造形が得意なんだと思います。
さて、ペタペタと版画技法で
模様作品をたくさん生み出していて、
その中から
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/110861381/picture_pc_a9e205c6ce35301e29071955aee93738.png?width=1200)
「先生、これを、脈と派とかの、こっちの
右側のツクリ、にしたいんですけど…
でも、そうすると、左側に、月とかサンズイとかを
書かなくちゃならないですよね…
だとすると、どうやって書いたらいいか…
あまり書き過ぎると…変ですよね…」
ほほー…なるほどー…
脈かぁー…うーん…遠いなー…
この模様、ものすごく綺麗です。
これが右側にあるのが
あずましくない。(北海道弁で、居心地が悪い)
なぜ、あずましくないのか、は
感覚的なところではあるんだけど、
私の感覚や分析だと、日本人は心理的に
書道作品を見る時にパッと
「上から」見るし、「左から」見ると思うんです。
なので、この綺麗な模様が主役だと思うので、
これを左側に置く方が、
見た時に一番に目に入るので、落ち着くかな、と。
90°回転させて、
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/110861859/picture_pc_7bdd5fe874ad9338b746521f4db6a285.png?width=1200)
こうしてみたらどうだろう。
おー…わかった!!
「よし!明、にしましょう!
ここに、ポチっと、薄墨で丸い点を入れて、
右側に、例の紐持ちの線で月を書きましょう!」
「わかりました!月は、どこから書き始めますか?終わりは?」
「月は、上にはみ出して、下は、
ラッパずぼんみたいに、少し広げてください!」
そして、智美さんは、「月」の練習を。
しばらくして、
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/110862587/picture_pc_2e6f1e7c751275e994454374c816a9fc.png?width=1200)
「こんな感じでどうでしょう?」
はい!オッケーです!
では、本番!!書いてみよー!!
「わぁ〜…緊張するー…」
そうなんです。
渾身の、とても上手くいった模様に
筆を入れる。
一発本番。失敗したらもう二度と同じ模様は
書けない。台無し。
わかります…
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/110862687/picture_pc_a5eafe75866acf21b96c2253fb9f5eb1.png?width=1200)
そしてできたのがこちらです。
おおー!良いじゃない!!!
でもご本人は
「さっきの練習の月の方が良いですよね…」と。
良いか悪いか、は置いといて
実は、これ、半紙が違うんです。
本番の半紙と練習の半紙が違うので、
線の出方、墨の滲み方、掠れ方が違います。
半紙の質で言えば、本番の方が
良い半紙です。(高い半紙です!)
写真ではわかりにくいですが、
墨の黒が本番の方が綺麗です。
なので、こっちの方が良いです。
(裏打ちするともっと黒が綺麗に出るはずです)
墨も紙も、自然のものから作られています。
なので、「いつも同じようにいかない」
「意図しない表現が出る」ことも
多々ありますが、そこが墨と紙との
面白いところですよね。
偶然性と、再現性無し。
だから難しいし、面白いです。
2023.07.11@北海道札幌市
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