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門下生作品講評【No.4】

◉名古屋教室 間宮眞理子さん
『石』

眞理子さんは、タイミングが合わず、
まだ「紐持ち」の書き方を習っていませんでした。
私も、指導の仕方の記憶を引き戻しながら、
伝えました。

久美愛玩(弊社オリジナルで製作した筆)は、
使用する毛(豚毛、狸毛、羊毛)と毛の長さ、
軸の重さと長さにこだわって作りました。
私の理想の書き味になるように作りました。

その久美愛玩の軸の頭の「紐」を持って書きます。
とにかく軸を寝かせて、紐を引っ張って、
ズズズーーーとずって、毛の腹を使って書きます。

よく間違うのが、紐は持ってるんだけど、
軸が立ったまま書いてしまうこと。
たまにはそのような書き方をしてもいいですが、
立ったまま、振り子のように書いてしまうと
あまり良い線になりません。

眞理子さんに、一通り説明した後は、
ひたすらその線の練習をしていました。

筆に墨が無くなって掠れても
それでもなお、まだまだ残ってるわずかな墨を使って
粘って、ゆっくり時間をかけて書き進めていくのが素晴らしいです。
この粘りが眞理子さんの武器です。

そして、ひとつ文字を書きました。

「先生、どうでしょう…?碧という字です。」

時間をかけて、粘って書いている素晴らしい線が
見えてきます。

でも、その良い線が主役として見えてこない。
邪魔がある。
それは、左上の「王」です。

ここの「王」は、短い線で作られている部分です。
紐持ちで書く時は、
線を長く長く見せたいです。
つまり、
短い線の部分がある文字は、選ばない。
短い線のパーツがある文字は、不向きです。
表現として、もったいない。

…と説明したあとで、
「よし!“石”だけにしよう!
碧に思い入れ、ある??」
「いえ、無いです!笑」

紙を横にして、「石」という字に。

そして眞理子さんは書き始めましたが、
途中経過をチラ見した私は、
「ちょっと待って!!!」

👆これが途中でストップさせたものです。
何が気になったかというと、
「横線の位置が上だ…!」と。
このまま普通に書いたら、普通のバランスの
「石」になる。つまらん。面白くない。
せっかく良い線なんだから、面白くしたい。

なので、
「この横線、もう少し下に下げよう!
半紙、折ってもいいので(裏打ちするので
折り線は消えるので)
半分の印をつけて、紙のど真ん中に、
この横線を書こう!
また最初から、になるけど…🙏」
「はい!やってみます!」
「横線を書き終えたら、声かけてください。
左払いと口の書き方、その後に伝えます!」

そして、横線だけを書き終えました。
なんと素晴らしい!
写真ではわかりにくいかもしれませんが、
最初に墨をつけてから一度も付け足さず、
これだけの横線を書き上げました。
良い線です!

この横線群を活かすための
左払いと口の書き方を伝えて、
このような作品になりました。

私は常々、
「一枚の作品に時間と手間をかけたものは
人を感動させる。」と
お話ししています。

まさに、この作品も、
横線だけに、相当時間をかけて、
手間と技術力をかけています。
粘り。辛抱。

毛の腹を使って書く線。
表現の方法のひとつとして、
面白がってこれからも使っていって欲しいですね。


2023.06.18 @愛知県名古屋

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