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門下生作品講評【No.9】

◉札幌エルプラザ教室 増田ミサさん
『Apple』

「一本二色技法」…技法としては書道界でも
水彩画の世界でも、古くから使われている技法ですが、
この名前は、私が勝手につけました。笑

筆一本で、二色をいっぺんに書く。
黒とグレーのグラデーションを表現する。

これは、墨の調合が難しいです。
二つの墨(濃いのと薄いの)の
濃さの差が大きすぎると綺麗なグラデーションにはならないし、
差が無さ過ぎると二色にならず、
混ざってしまって一色になります。

そして、書くときに、
筆に墨がなくなったら付け足すのですが、
一回一回、水で筆を洗わなくてはなりません。
(洗わずやると薄い墨がだんだん濃くなります。)

この感覚的な調合と手間がかかるので
なかなか難しいです。
(私は苦手です。)

そんな中、ミサさんはこの手法にトライです。

この段階で声をかけてくださいました。
ものすごく綺麗なグラデーションですし、
ただ単にスーっと引いた線ではない。
筆に力を込めたり、時に抜いたり、
筆の動かし方に所々で工夫をしています。

「あのー…これ、Aに見えたんで、Aにして、
Appleって書きたいんですけど、
この上の部分に小さくppleって書くと
なーんか寂しいような気がして…」

そうそう!!
その「寂しい」と感じた感覚、
同じです!!正解です!!

ミサさんは「寂しい」という言葉を使いましたが、
私は「足りない」です。
言ってる事は同じです。

黒が足りない、もそうですし、
この綺麗なグラデーション、
もっと見たい。

なので、
「pもこのグラデーションで書こう!
Aのこのぼっこ(北海道弁で棒のこと)を
pに使って、
残りのpleをこの上に濃い墨で書けばいいんじゃないかなー?
この綺麗なグラデーションが引き立つよ!」と。

そして出来上がったのがこの作品です。
とにかく線が綺麗。

冒頭に「水彩画も同じ手法がある」と
書きましたが、
使っている紙が違うので、
やり方は同じですが、
出来上がりの、滲みや掠れ、墨の色の出具合は
これは書道ならではの表現ですね。

ミサさんは独特の発想をお持ちで、
私もいつも出来上がりを楽しみにしています。

2023.07.02 @北海道札幌市

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