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【メドックの革命児・DomaineUCHIDAとは?後編】

(前編をまだ読まれていない方は、こちらをご覧ください)

天も味方した初ヴィンテージ2015

内田氏:畑を借り、足りないものは周りのブドウ農家にお借りしていました。初ヴィンテージが上手くいかなかったら諦めようと思っていました。なので、2015年は私にとって勝負の年だったのです。

-2015年は近年では最も良かった当たり年ですよね。タイミングとしても天が味方してくれたのですね。

内田氏:本当にそうだと思います。もし、初年度が2017年のような年だったら、今頃ワインを造っていないかもしれません(笑) 現にDomaineUCHIDAには2017ヴィンテージはありませんから。

-そして、メドックの中でも珍しい*マセラシオン・カルボニック製法を用いたカベルネ・ソーヴィニヨン100%の『Miracle』が生まれたのですね。

内田氏:自分としてはテクニカルなことをしているつもりはありません。私の畑のテロワールは一般的な他のメドックに比べて重厚さが少ないので、カベルネ・ソーヴィニヨンのフルーティーさが特徴になります。一般的なメドックワインでは、カベルネ・ソーヴィニヨンは重厚でタンニンが強い品種として使用されていますが、例えば、ロワールではロゼワインとして使用されています。自分のブドウの特徴を最大限生かすためにマセラシオン・カルボニック製法を導入しています。

*マセラシオン・カルボニック製法・・・破砕しない黒ブドウを大きいステンレスタンクをに入れ、密閉した状態でタンク内に炭酸ガスを充満させる製法。ボージョレなどで行われることも多く、味わいはフルーティーで軽いにも関わらず重厚な黒っぽい色身を出すことができる。(Cave様より引用)


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(内田氏の代表作『Miracle』)

ワイン造りに関して

-ワインを造っている中で印象的な出来事は何ですか?

内田氏:2015年の初ヴィンテージをリリースした後、あるドイツ人のジャーナリストが訪れてきました。当時はまだ2015年をリリースしただけですから、全くの無名です。しかし、ワインを試飲し、美味しい!と言ってもらい、その後ドイツで記事になりました。あの時は嬉しかったですね。一生懸命やれば、誰かが見ててくれるんだな、と実感しました。

-ワイン造りにおけるこだわりはありますか?

内田氏:当たり前のことを当たり前にするということです。例えば、仕事が終わって、醸造場を出る際、タンクに葡萄の皮がちょっと付いていたとしますよね。それを時間外だからとほっといておく人もいますが、私は、綺麗に拭き取ります。日本人が持っている衛生観であったり、丁寧さというのは大事にしています。

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-内田さんのワインに対する想いを教えてください。

内田氏良いブドウが良いワインを生みます。私は、「ワインを通じて、農業の素晴らしさを知ってもらいたい」と考えています。また、持続可能な農業を意識しています。森の近くに畑があるので、生物多様性が充実しており、自然と共生しながらワインを造りたいと考えています。  

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(内田氏の畑の隣の森で取れたキノコ。写真は、ピエ・ド・ムートンと呼ばれるもの。)

-今後、畑を増やす予定はありますか?

内田氏:はい。既にメルローの畑を購入し、今年が初めての収穫でした。今後はさらに畑を増やしていきたいと考えています。

-内田さんは現在、*ビオディナミ農法に移行しています。きっかけはありましたか?

内田氏:最初のホームステイ以来、無農薬でワインを造るというのは決めていました。ロワールでのワイン造りの頃から、*ビオロジック農法でやっていたのですが、どうしても農薬は最低限使ってしまうんですね。農薬を使って一番被害を受けるのは自分自身です。分厚い防護服を着て農薬を撒くわけですから、そりゃ体に害ですよね。ビオディナミ農法では農薬を一切使わず自然由来のものを使用します。ビオディナミ農法に移行したのは、自分のため、というのは大きいですね。今後もワイン造りを続けるためには、自分自身が健康じゃないとダメですから。長距離の陸上競技を高校時代やっていたので、今でも定期的に運動はするようにしています。

*ビオロジック農法・・・いわゆる「有機農法」。鶏糞や羊糞などの有機肥料を使用することが前提とされている。(神の雫WineSalon様より引用)
*ビオディナミ農法・・・オーストリアの人智学者ルドルフ・シュタイナーが20世紀に提唱した理論に基づいて生まれた農法で、土壌や植物、生物はもちろん、天体の動きまでも反映した独特な栽培方法として知られている。ビオディナミ農法が独特といわれるのは、自然素材由来の肥料を利用するところである。(神の雫WineSalon様より引用)

-現在では、メドックマラソンにも毎年参加されていますよね。コスチュームを着た内田さんはとても印象的でした。

内田氏:友人からマラソンの話をもらってから始めました。走ること自体フランスではしてなかったので、練習をしなければならなかったです。でも、高校時代のキツい練習の成果もあり、最初から普通の人よりは走れていたと思います。本当に人生に無駄なし、ですよね。点と点が繋がって線になっている感覚があります。一度挫折したマラソンもここに来て役に立っていますし、最近はガイドの仕事も増えてきましたが、それも300以上のワイナリーをバイクで回った経験が生きています。当時はGPSはなかったので、迷ってしまい、時間通りにワイナリーに着けることはなかったです。でも、今ではガイドのバス運転手が道に迷ったら、すぐにこっちの道だよって教えられます。自分が一度迷った道ですからね。

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(毎年、オリジナルのコスプレ衣装でマラソンに参加する内田氏)

-座右の銘を教えてください。

内田氏『ローカルを知る者こそが本当の国際人である。』世界って小さなローカルが集まって一つの大きな世界を作ってるわけですよね。私は、農業を営む人間なので一つの土地に長く住んでいますが、長く住むと色々なことによく気づきます。例えば、ポイヤックの葡萄畑は平坦ではなく、かなり斜面が多いとかね。世界を飛び回るビジネスマンより、農業に従事する人たちの方が国際人だと思います。

-最後に月並みな質問ですが、内田さんにとってワインとは何ですか?

内田氏:...情熱大陸までとっておきます(笑)

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今回は、メドックでワイン造りをされている内田さんにインタビューさせていただきました。内田さんのワイナリーに着いてから驚いたのは、本当にシャトー・ムートン・ロスチャイルドの醸造場が隣にあることです(笑)

その後、試飲させていただいてから、畑を拝見させて頂きました。ちょうどキノコが取れる季節ということで、キノコ狩りをされる内田さんの後ろについて森を歩きながらのインタビューになりました。

自分も試飲させて頂きましたが、今までのメドックワインに飲み慣れている方であれば衝撃を受けると思います。カベルネ・ソーヴィニヨン本来のフルーティーさがしっかりとワインに表現されています。

ご興味を持たれた方は、是非一度お試しください。




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