読書ノート  ヘルシンキ 生活の練習  林 沙羅

 私は、思いやりや根気や感受性といったものは、性格や性質だと思ってきた。けれどもそれらは、どうも子どもたちの通う保育園では、練習するべき、あるいは練習することが可能な技術だと考えられている。

 これから練習の必要なスキルがあれば、それらが話題になるだけだ。それも、「できていない」「能力がない」「才能がない」と評価されるのではないし、目標達成に向けて努力しているか否かすら、おそらく問題にされていない。もっとあっさりと「ここはもうちょっと練習しましょう」と言われるだろう。

 「感受性が豊かだ」「好奇心が強い」「共感力がある」「根気が続く」といった、通常なら性格や才能などと結びつけられてしまいそうな事柄が「スキル」と呼ばれている理由は、このあたりにありそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?