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3月最後の読書と花魁ごっこ

毎日古典ドリルと日本史の参考書ばかり読んでいるので、反動で小説の一気読みをしたくなった。何か春らしさを感じさせるものはないかな・・と探したのがグレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』。1924年のちょうど今頃、3月30日の出来事(お坊ちゃんとメイドさんの逢瀬)をメイドさんの心理描写を中心に綴った物語なので、3月の締めくくりにぴったりじゃん!という感じ。実は読み終わるまで、本当に女性作家が過去を回想しているものだと思い込んでいた。作者は男性(めちゃくちゃ有名らしい)でまったくのフィクションらしいのだけど、ここまで女性の心をみずみずしく描くのって一体どういうことなのでしょう? エスパー?ちなみに翻訳の人も男性(=真野泰)で、それにもまったく気づかなかった。フィクションを真実だと思って最後まで味わい尽くしたのだからまあお得な読書体験だったといえる。ちなみにこれは『帰らない日曜日』という映画作品として5月下旬に公開されるらしい。ちょっと世間には受けなさそうだけど、わたしは観に行こうかな・・(映画に出てくるメイドさんを見るのが好きなんです実は)。

年度末だから、お仕事されてる方は大変な時でしょう。わたしは公園で遊ぶ子どもたちの声をききながら、自室にこもってひとり読みふけっておりました。こんな隠居みたいな人生でいいのかな、と思いながら。

公園から聞こえてきたのは、女の子たちの「花魁ごっこ」の声。どうもお姉さん風の女の子(でもたぶんまだ小学生ぐらい)が小さい子たちに花魁とはどういうものかを教えていて、一人一人に役を振り分けたり、演技指導したりしている様子。小さい子は「しゃみせんって何?どういうのだっけ?」なんて質問してるのが可愛い。花魁に会いにくるお客さん役にされてる子もいて、聞いてるこっちがしみじみしてしまう。しばらくすると小さい子たちは勝手がわからず飽き始めたのか、怪奇現象みたいな話で盛り上がりはじめる。「鬼の音ってきいたことある?」「鬼はないけど、そこにいない人間の心臓の音がすることはあるよ、夜になると聞こえることあるよ」「だからそれ鬼だよ」。統率がとれなくなったころ雨がぱらついて、お姉さんの指示でみんないっせいに帰っていった。女の子たちの声はやっぱりヤロウたちと違って艶めかしい。耳で聞いているだけでもお花見をしたような気分にさせられる、すこし気恥ずかしいような午後のひとときだった。


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