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たった2度の失敗で功績をなかった事にされた大先輩

こんにちは。
ベトナムアンカーです。

私が初めて勤めた会社での印象に残っている出来事や経験ってたくさんあるのですが、

組織の怖さというか虚しさというか、そういった複雑な感情が印象に残っている、ある出来事があります。

当時、私が職長を務めていた時期で、社内の幅広い人と、業務でのコミュニケーションが増えてきて、

社内でだんだん顔が広くなっていってた時期でした。


で、とある別部署なんですが、同じ職長を務めていたベテランの大先輩がいました。

ちょうど私の部署の次工程にあたる部署の職長さんで、品質不具合などが出た際に、よく相談に行ってました。

次工程の作業工程でどんなところで不具合が良く起こっていたかとか、

不具合でないにしろ加工しにくい部材がないかどうか、

もしあればどのくらいの寸法のところを狙っていけばいいのかとか。

保有している技能も確かで、経験豊富、部下からも慕われている社内でも一目置かれているというような方でしたね。

で、ある日その方の部署で加工した製品に客先で不具合が出たんですよ。

その不具合内容がただ単にビスの締め忘れ、しかもマジックチェックがなされているにもかかわらずビスが締まっていない。

要は、マジックチェックが確認ではなく流れ作業になってしまっていたという事ですね。

その当時の課長はカンカンに怒り、その部署に不具合発生原因と流出原因を当然指示しました。

そして、あがってきた不具合是正報告書が驚くような内容だったのです。

作業者がそのベテランの職長さんで、出荷検査もその職長さんが行ったというのです。

私も最初その話を聞いた時は信じられませんでしたが、その部署の友人に聞くと、

本当にその職長さんが作業したようなのです。


まあ得てしてベテランの熟練技術者ほど簡単なポカミスを犯しがちなのは事実ですが、

それにしてもあの人がなあ、といった感じでした。


まずは客先での不具合発生なので、代替品をすぐに納めなければなりません。

で、その代替品をそのベテランの職長さんが再度加工して納める事になったのですが...。

なんと!といった感じで、再びその職長さんが加工して納めた代替品の同じ箇所のビスが、締まっていないというのです。

これには客先も相当怒ったそうで、品質保証部長や前述の課長さん、工事長など幹部総出で平謝りに向かったそうです。


まあ客先が怒るのも無理ありません。2度もあり得ないレベルの不具合品を納入されてしまったのですから。

その後、人事異動が発令されてその職長さんは全く畑違いの倉庫作業に異動となりました。

...まあ組織で動く中でそういった不具合を立て続けに起こしてしまったのですから、

厳しいとは思いますが、異動というのはやむを得ない部分もあったのかなと。

ですが、私が一番印象に残っている複雑な感情にさせられた出来事はこの後でした。

当時勤めていた会社は、定年退職となった従業員の方に、

これまでの功績を称える意味と労いの気持ちを込めて、花束贈呈のセレモニーを行い、

その後盛大に飲み会が開催されるのが通例となっていました。

で、そのベテランの職長さんが定年退職を迎える日が来ましたが...。

なんと社内セレモニーはなし、飲み会もなしで社内報で定年退職がお知らせされただけでした。

その事実を知った時、なんとも言えない寂しくもあり、虚しさもある複雑な感情を抱きました。

40年勤め上げた会社で、定年間際のたった2度のミスで、本人にとってはさも会社に存在しなかったかのように扱われたのです。


40年の間会社に貢献した事も多数あったでしょう。

優秀な部下も何人も育てました。

何より90年近い歴史を持つ会社の技能・技術やノウハウを後に繋いだ功績は何より大きいはず。

しかし、切り捨てられたのです。

私はその職長さんの定年の日、ご挨拶に行きました。

お疲れ様です。
今までありがとうございました。

もっと色々な技術話をしたかったですと。

それだけを伝えましたが、

ご挨拶を終えた後、何か言いようのない会社への不信感や、やり場のない腹にこもるような怒りを感じていました。

その出来事がきっかけで、自分が働く会社の事しか知らないのは非常に危険な事だと悟り、

とりあえずは自分の技能・技術に関連のある品質管理検定1級の受験を決意し、勉強に励む事にしたのです。

今思えばその出来事から受けた言いようのない感情から、自分自身で道を切り開く覚悟が徐々に固まってきたのだなと思います。


現在その職長さんと連絡を取ることはありませんが、せめて有意義な老後生活を送られている事を切に願います。

#エッセイ #会社 #組織 #定年退職

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