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甘い予感

先月末。あと4日を残して私たちは慌ただしく部屋を後にした。もうくたくたでへとへとだった。

体力の限界を感じながら義母の暮らす家にたどりつくと、薄暗い部屋の中でだらしなく寝転んだままの義母の姿が飛び込んできた。もう見慣れている光景ではあるが、ぎょっとする。ここ1ヶ月半の引越作業と仕事との両立で心身ともにすり減っている。そんな私たちに労いの言葉はなく、ぼんやりとした表情でのっそりと炬燵からはい出してきて、ああ来たんだという表情で見つめてくる。
私はその目をみていられなくて逸らしてしまう。

時刻は19時半を過ぎていて私たちはお腹も空いていた。
3人で夕食は外で食べることにした。釜飯の美味しいお店の近くまできたので、
「ここで食べたいな」と私がいうと、
「20分くらい待つから嫌」と義母がいった。
「釜飯以外のものもあるはずだよ」とオットは駐車場に車を入れた。
いつこんな感じ。絶妙にずれていく。

お店の中ではいつも通り、義母の弾丸トークがはじまる。
優しいオットは上手に相槌を打つ。喉に言葉が引っかかって無口になるわたし。

去年の11月に3人で住もう、という話になった。これまで好き勝手にそれぞれ過ごしてきた50代の私たちと70代の義母がどう暮らし方をすり合わせていくのか、話し合ってはいなかった。オットは義母と何度か話をしたから大丈夫、どうにかんsるよ、とさらっと言うのみ。不安だよ。そんなに簡単なのか?ついに今日になってしまった。いまここで3人で蕎麦をすすっていても、どう大丈夫なのかさっぱりわからない。

2023.4.26


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