見出し画像

政治の季節

ロックダウン下なので、パブも閉まっていてレストランも閉まっている。それでも飲んだくれが集まってこっそり飲んでいるところはあるという話である。

で、ま、そういうところに今日行ってきた。あんまり書けないので、アレだが、近所のアイルランド人が集まっていた。といっても、5人くらいだけど。

左官屋、水道屋、ガス屋当たりが集まって、工事現場である家の話しているという体だが、お酒が出ていた。(ビジネスミーティングの体)。

まあ、話は本日は一つだけというか、話していることは一つだった。

40年前、ボビーサンズが今日からハンガーストライキに入ったという話である。そして、66日後に彼はなくなった。その時の話をずっとしていた。1981年の話である。ボビーサンズはハンガーストライカーで政治活動家である。IRA暫定派で活動家だった。度重なって逮捕されて、英国の刑務所に入れられていた。そして、英国の刑務所で「政治犯待遇」ではなく、ただの暴力に訴える犯罪人扱いされ、そこから抗議活動が始まる。(これを指示したのはマーガレットサッチャーと言われている。)そして、同じ立場の人達他9名、計10名ハンガーストライキに入り亡くなっている。

このプロテストは調べてみれば見るほどかなりなんというかダークで、なんとも言えない。体力気力のある方だけ調べてみたらという感じである。最初はブランケットプロテストなるものから始まったらしい。これはすぐわかった。クリスティムーアがブランケットという曲を作っているからである。

で、そのあと10人でハンガーストライキに入り、亡くなっていったという話を今日は延々していた。10人のメンバーの名前出しクイズから始まって、それにまつわる歌を歌い、そして、ボビーサンズが亡くなったときのお葬式の話をみんなしていた。黒い布を旗のようにしていて家の外に掲げた話、喪章をつけて出勤したら、上司に殴られた話、葬儀に参列するのに傘をさしてくれと言われ、雨が降っていないのに傘を差した話(イギリス軍がヘリコプターで監視しているので、葬儀に参加している武装したIRAの人を傘で遮るために傘をさしてほしいという要請があったと言っていた。他の人に言わせれば要請ではなく、自然発生的に差していたという話もあった。)、ダブリンの大通りではイギリス資本のデパートやスーパーマーケット、ホームセンターが襲撃されるという話があり、イギリス軍がマーケットの前を厳戒態勢で守っていた話、などである。

そのあとの話もちょろっとしていた。1984年にIRA暫定派がブライトンのグランドホテルを爆破した話をしていた。そこにいたサッチャーを暗殺する目的だったらしい。で、ま、これ犯人とかちゃんと捕まっているが、イギリスの警察は怪しいのには全員何かしらコンタクトを取ってきたらしく、家に電話がかかってきたとか、この後にアイルランドに里帰りして、イギリスに戻ってきたら、入国管理官にとっつかまって、かなりの長い時間拘束されたとかそういう話をしていた。会社の上司のイギリス人がわざわざヒースローまでもらい受けに来てくれて、助かったという話もしていた。

もう、これは本当にどうしようもない話であるが、ある一定の年齢以上のアイルランド人と付き合うのなら、この手の話題は避けて通れない。もうカソリックだ、プロテスタントだ、IRAだユニオニストだ、イギリス軍がなんだ、暴力がなんだ、闘争で武力行使だ、なんだ、かんだで、70年代、80年代は北アイルランド問題から派生したいろいろな問題が絶え間なく起こり続け、そして、人がたくさん死んでいった時代であった。U2の歌とかも初期はこの手の題材の歌があるね。ブラッディサンデーの話も尽きることがない。

40年前にある程度物心のついているアイリッシュは、誰がどの境遇にいてもどこの出身地であろうと、北アイルランド問題が起こした政治の季節をくぐりぬけてきている。人生の中で一番大事な、情操が育つ時期や、子供から大人へのはざまで揺れ動きやすい時期などに、毎日この手のニュースに接して育ってきてしまっている。ちょっと人生を見る目や政治やら宗教に対しての視線というのが、全然、よその国の人と違うなあと思うことが多い。

本日ロンドンに渡ってきて職を得て、今までやってきた人達は、やっぱりそういうアイルランドを去って、ロンドンでお気楽に生きていることをどこか後ろめたく思っていることもある。それでも、僕はお気楽な、政治も闘争もない青春を過ごしたかったと言い切る人もいる。それだけ、こちらの想像がつかない苛烈な世界があったのだろうと思っている。

本日はたまたまそういう面を目にしたので書いてみた。この手の話はいろいろエピソード持っているのだが、ものすごい難しい。もっと筆力をつけ、勉強し、整理してから書くべきなのであろうなあ。ううむ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?