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イギリスの馬文化とグランドナショナル今年はどうなる?

ロンドンに住んでいるからそこまでではないが、イギリスに移住してきて感じたことの一つに「馬と人々の生活の結びつきがかなりある」ということである。

警察も騎馬警官というのがいて、結構それが珍しくない。これが、地方ではなく、ロンドンでもしょっちゅう見る。たとえばであるが、LGBTのパレードとか、チャイニーズニューイヤーなどのパレードがピカデリーサーカスあたりから出発などというときは、結構な数の騎馬警官を見る。イベントの時や、大きなスポーツの試合などの時、あとは皇室関係の行事のときなど、ちょくちょくみる。確か、皇室関係のお厩は結構中心地に贅沢に土地をとってあったりしてびっくりする。あとはちょっと郊外へ行くと馬を走らせている人達がいたりして、朝、道の真ん中に大きな糞があったりする。(わらが混じっているのですぐわかる。)ロンドンから電車で3時間くらいの田舎にセカンドハウスを買って、馬の遠乗りをしている人たちもいる。セカンドハウスの近くに自分の馬を預けて(人から預かった馬を飼育している牧場などがある。)土日に乗って、またロンドンへ戻ったりするのである。イギリス南部の海辺の町に何回か滞在したことがあるが、海辺を馬で散歩しているのを見たりする。その脇を、トレッキングの恰好をして歩いている人達などがいて、ロンドンだけだとわからない世界があるもんだと感心したことがある。

お城などがあって、旧街道筋にあるパブは、圧倒的に馬の名前がついたパブが多い。「Coach and horses」とか「白馬」「黒馬」など、馬の名前が多いのである。街道が発展して、乗合馬車が通って、街も発展しているので、パブなども元馬車の乗降場だったなどという歴史を持つパブもあるし、お城の近くに家を買うと、結構な割合で、馬の厩舎を改造した長屋風の家などがある。

乗合馬車をコーチというが、今も乗合バスをコーチという。中、長距離バスもコーチという。

アンティークフェアやアンティークを扱っている寄りあいマーケットなどに行けば、必ず馬のグッズだけを扱うお店などがあったりする。もちろんエルメスなどがあるわけでもないが。

そして皮製品も馬の皮は別格。コードバンの財布などになると、「あら素敵ね」と言われることが多いようである。

自動車の前は馬だった。そういう歴史みたいなのをまざまざと感じることがたまにある。それはこちらに来てから、という感じである。

あとは競馬がやはりビッグカルチャーというか、競馬はかなり細かく専門的にやっているなあという感じがする。

だいたい、馬や馬に関する名前がついているパブは競馬をテレビでやっていることが多い。「xxサドル」(サドルは馬の鞍という意味)とか、鞭とか、まあ、関係している名前がついているところはテレビで競馬をやっていることが多い。

競馬だけは別枠というか、だいたい「レーシングTV」という有料テレビがあり、パブはそのチャンネルを購読していることが多い。そして朝から晩までレースを流すのである。馬のレースがなくなれば、犬のレースを放映する。そしてそれがなくなれば、ジョッキーの伝記とか過去の名場面集などを放映している。

それを毎日新聞かって、オッズみて賭けしているギャンブラーがいるのである。前にもここで書いたが、競馬はどこかで毎日やっているので、みんな毎日賭けしている。正直、競馬をやっているパブはあまり好きではない。サッカーのいい試合が重なってあった場合など(チャンピオンズリーグなど)、パブは3台あるテレビが全部違う試合などというとときがあるのだが、競馬好きの年よりが急に「レースがあるからサッカーなんかやめろ」とか言い出して、一個が競馬などになると結構最悪である。「みんなサッカー見たがっているから競馬は我慢してくれ」などというパブのオーナーもいるが、正直、そんなこと言われて聞く人達ではない。ギャンブラーなので、気が立っているし、酒も入っているから、ちょっとめんどくさい。そしてサッカーは毎日ではないが、競馬はまいんちなので、毎日来るお客は大切にしたい。やはりパブのオーナーは競馬を優先することが多いような気がする。

イギリスには公式というか、合法の賭けやが存在している。ブッキーズといわれるものであるが、これがだいたい伝統的にパブの近くに必ずある。いつも行っているパットの店のちょっと先にも一件ある。競馬場に行ってお金をかけてというより、ブッキーズへ行ってお金をかけることが多いような気がする。しかし、最近はみんな電話にブッキーズのアップを入れていて、携帯で賭ける人が多いような気がする。ただし、これは個人的によくはないと思っている。これは、本当に「xxxxに刃物」なのである。手元のお金が尽きても、何倍かレバレッジが聞いているから、安易に賭けがしやすい。近隣でもギャンブラーで有名な人が何名かいるが、ある時からみんなアップに切り替えた。正直、やめてくれと思う。が、ブッキーズも普通に支店を置いて人を雇って、店を維持するよりは、アプリの方が維持費はかからないのだろうなあと思う。

あんまりそういうことはないが、たまーにだが、日本の騎手や馬が出たりするので、そういうときはアップを持っている人に声をかけて、お金を渡し、馬券を買ってもらう。日本の馬やら騎手に賭けることがあるが、勝った試しはない。

あくまでも賭け自体は庶民の楽しみのところはあるが、馬主とか見に行っている人達はそこそこの階級の人が多いような気がする。毎年、アスコットで行われるレース(マイフェアレディに出てきたアレです。)やチェルトナムフェスティバルなどになると、一日券や3日通し券などが売り出され、お値段に応じて屋根付きとかシャンパンと食事つきとかいろいろオプションがある。男性はタキシードで、女性もフォーマル、頭にはファッシネーターをつける。お祭りなので、伝統や歴史というよりはイベントなので、ものすごい好きな人達が行くというよりは、企業の接待や、婚約のお披露目で使う人もいるし、クラス会みたいな行事で使う人もいる。みんな色とりどりのドレス着て頭に羽つけてシャンパン持った写真撮って、インスタにあげて帰ってくる。

イギリス王室は競馬好きが結構多く、女王様の所有の馬などがレースに出るときもある。そしてその馬に乗るのはジョッキーにとってこの上ない名誉であったりする。

ジョッキーの立ち位置ってイギリスやアイルランドではどうなんだろう、と思うが、結構いい職業として認知されている。あと、日本でいうとおすもうさんやプロ野球選手の奥様におきれいな方が多いように、イギリスではジョッキーは自分よりかなり大きいトップモデルや女優などと付き合っている人が多いイメージがある。男性からは嫉妬の目線で見られているというか。まあ、でも最近は女性のジョッキーも進出しているので、ジョッキー同士の結婚などもあり、前ほど男性社会でもないし、その辺のイメージがだんだん薄れてきているような気がする。

ちょっと前までよくあったパターンが、小柄でかわいい顔をしている俳優などがジョッキー見習いだったという話があったり、スヌーカーのワールドチャンピオンで細身で小柄で有名だったアレックスヒギンズも中学出てすぐジョッキーになるために修行に出ていた話などがある。今はそういう話があるのかないのかわからないが。

さて、さて、だいたい競馬好きでない人達でも盛り上がる競馬シーズンが3月4月である。3月はチェルトナムフェスティバルという3日から4日通しのフェスティバルがあり、だいたいセントパトリックデーに絡んでいる。毎年派手にレースが行われ、アイリッシュパブなどでは、ビールを注文するとベーコンキャベツというおかずが出てくることが多い。ベーコンキャベツはベーコンとキャベツとジャガイモのシチューであるが、だいたいそれが紙皿に入って無料配布される。熱いのをフーフーしながら競馬を見るのである。そして中日がだいたいセントパトリックデーでみんな緑の服を着てギネスを飲んでアイルランドの守護聖人のセントパトリックをお祝いしながら競馬を見る。競走馬の産地としてアイルランドは名高く、そして有名な厩舎もたくさんあり、アイリッシュのジョッキーも非常に多いので、チェルトナムはアイリッシュの競馬関係者が一堂に会するお祭りである。(アイルランドでは地域の互助会などでチェルトナム詣でのために積立金をしたりして、村全員で参戦したりするのだ。)

そして、4月はグランドナショナルである。4月の初旬、リバプール郊外のエイントリーという競馬場で行われる障害レースで40頭近くが出頭するという大きいレースである。40頭も出るので、だいたいどの馬が勝つのか全然わからない。一応私も競馬はやらないが、このレースだけは毎年買っている。だいたいインターネットで馬の名前を調べ、事前にブッキーズに行って賭けてくる。このレースのめんどくさいところは直前まで出走馬がコロコロ変わるので、レース始まる4分前とかに馬券を走って買いに行ったことがある。年寄りは4分じゃ馬券は買えないので、そういう時はボランティアで行ったりする。

グランドナショナルは一回だけ、派手に買ったことがあるが、あとは全然である。だいたい、20ポンドくらいかけて掛け金が返ってくるか、もしくは丸損して終わりが多い。

グランドナショナルはコースに設けてある柵や障害に名前がついている。「ふぉいねいぼん」とか「ビーチャーズブルック」とか実況を聞いて覚えた。(1967年の勝ち馬の名前。23番目の障害で集団落馬があって、ふぉいねいぼんが抜け出て勝利。その障害があったところがその名前になったそうだ。)

40頭近くの馬が一遍に走って障害を越えていくので、壮観である。ま、日本のレースなどでは見たことがない。迫力もすごいし、だいたい落馬もすごい見る。落馬して、空馬が走っていたりとか。ツールドフランス並みに落馬がある。そして重なるとどんどんと行ってしまう。運もかなりあるよなというレースである。スタートが日本のようなゲートに入ってのスタートではなく、スタートラインから何メートルかさがったところに馬が集まって、ピストルが鳴って、馬がスローペースでぞろぞろ走り出し、一定の箇所を過ぎるとスピードがぐんと上がっていく。日本のファンファーレも好きであるが、なんというかスタートになって馬がぞろぞろ行くのはちょっと不気味、そしてだんだんレースの展開が早くなっていくと、周囲の熱気がすごいことになる。あと、やはりいろんな人がかけているので、パブの中の雰囲気も異様である。最後の方などパブ自体がうねっているような気がするくらい揺れ、みんな机をたたき、自分がかけた馬の名前を連呼する。

だいたいまあ、春はこの二つのレースで盛り上がり、そしてそのあとプレミアリーグ(サッカー)のシーズンが終了し、夏はワールドカップやらユーロやらオリンピックで盛り上がるというのがスポーツシーズンである。秋はGAA(ゲーリックフットボール)そして、プレミアがまた始まり、冬はラグビー、とカレンダーがあるのだが、そういう意味で、春の競馬は重要なのだ。

が、昨年、強行したチェルトナムフェスティバルではコロナの集団感染が起こり、かなりの批判にさらされた。それを受けて、グランドナショナルはなんと第二次世界大戦以来の中止。

チェルトナムは今年は無観客でやるという話である。そしてグランドナショナルも4月10日開催でアナウンスされた。

ただ、グランドナショナルについては大問題が生じている。4月12日まで、ノンエッセンシャルビジネスはクローズになっている。イギリスは4月12日まではお店もクローズで、パブも飲食もクローズ(持ち帰りはオッケー)である。もちろんブッキーズもクローズである。一応飲食店はガーデンがある店で野外の営業はオッケーになるのが4月12日である。そういうことで、パブとブッキーズはグランドナショナルというものすごい大きいビジネスのチャンスを逃してしまうことにある。これ結構深刻な話である。パブはまだ他で取り戻せるチャンスがあるかもしれないが、ブッキーズにとっての大収入が今年も飛んでしまうのは見過ごせない。プラス、12日オープンとか競馬も10日設定ではあるが、これから先はどうなるかわからないので、その辺もまだ固まっていませんとアナウンスされている。

ミラーの記事、奥歯にものが挟まったような記事。

てなわけで今年どうなるか、わからないが、20ポンドくらいはかけてみようかなと思っている。



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