『メルロ=ポンティと顔ヨガ』



現代社会で注目を集める「顔ヨガ」。これは顔の筋肉を使ったストレッチや運動によって、肌のハリを保ち、しわを減らそうというものです。一見、ただの美容法のように見えるかもしれません。しかし、この顔ヨガには、20世紀の現象学者メルロ=ポンティの思想が色濃く反映されているのです。

メルロ=ポンティは、人間存在の根本に身体性があり、身体こそが知覚と思考の根源であると説きました。身体は単なる物質的存在ではなく、世界との関わりを支える深い意味作用の場なのです。そして、私たちはこの身体を通して、世界に開かれ、新しい意味や価値を発見し続けています。

顔ヨガを実践する時、私たちは顔という身体部位に意識を向け、そこに内在する感覚や可能性に目を向けています。つまり、忘れ去られがちだった身体性への気づきが生じるのです。そして運動を続けることで、顔の筋肉との対話が始まり、それによって新たな自己の在り方が見出されていきます。

見方を変えれば、顔ヨガとは身体現象学的な営みそのものなのかもしれません。私たちは日常的に受け身的な存在でいますが、顔ヨガを通して能動的に身体に働きかけ、自己を発見し、表現していくのです。

メルロ=ポンティは芸術作品の分析を通して、視覚的なものと身体性の関係を探求しました。顔ヨガもまた、顔という身体部位に新たな可能性を吹き込む、ある種の身体的芸術なのかもしれません。

美容法にすぎないと軽んじられがちな顔ヨガですが、そこには身体性の発見と身体からの表現という、人間存在の根源的な問いが宿っているのです。メルロ=ポンティに学びながら、この顔ヨガという営みを通して、私たち自身の在り方を問い直してみる価値があるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?