逸脱した思考とドゥルーズ~ノマドロジー~

「逸脱した思考とドゥルーズ~ノマドロジー~」。

ジル・ドゥルーズの思想の中核には、常に既存の枠組みから逸脱し、思考の地平を開く試みがあります。彼はこの「逸脱した思考」を、「ノマドロジー」という概念で表現している。

ノマドロジーとは、遊牧民のように定住することなく、絶えず移動し続ける思考の様式を指す。これは単なる場所移動を意味するだけでなく、思考そのものが領土化された価値観から離脱し、新たな可能性を切り拓いていく営為。

従来の哲学は、普遍的な真理を求めて一つの中心的体系を築こうとしてきた。しかしドゥルーズは、そうした中心的思考に反旗を翻し、無数の方向へと分岐し続ける「ノマド的思考」を提唱した。

このノマド的思考は、決して無秩序な彷徨を意味するわけではない。ドゥルーズはあくまで、強い主体性を獲得しながら、既存の枠組みから逸脱し続けることを目指していた。思考が新たなコード化へと至る過程が重要だった。

ノマドロジーの実践は、様々な場面で行われます。芸術作品の体験、思索、出会いなどを通じて、私たちは習慣化された自己から離脱し、新たな可能性に開かれていく。これらの強度体に触れ、思考のリゾーム的運動を体現することで、私たちはノマドとなれる。

しかしドゥルーズ自身も認めるように、このノマド的実践は決して容易なものではない。既存の秩序から抜け出し、無数の方向へと分岐していくことの困難さは計り知れない。私たちには「日常生活」というものがあり、すべての時間を自分のために使えるわけではないからだ。ただしこの試練を乗り越えることなくして、真の思考の自由は獲得できない。

このように、ドゥルーズが説くノマドロジーとは、単なる移動ではなく、思考を既存の枠組みから絶えず逸脱させ、新たな地平を切り拓いていく挑戦的な営為である。私たちは遊牧民のようにノマド的に思考し、生成変化の渦に身を投じ続けなければならないのかもしれない。

 生成変化とは意識や行動、思考様式が変化し、以前の自分とは違う者に変容することである。

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