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Food for Well-being

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特に「食×健康」の分野に関心があり、学習記録メモ等をnote・マガジンに残しています。 <ブログ> https://qaqqar.com/ (Wordpress) https:…
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記事一覧

「食の歴史」(ジャック・アタリ著)

~「食の歴史」ジャック・アタリ著~

フランスが誇る知の巨人・ジャック・アタリ氏が、文字通り食の歴史について纏めた書籍です。決して食が専門分野という訳では無いにも関わらず、よくここまで調べ上げたなと舌を巻くほどの詳細な言及がなされています。

「食の歴史」というタイトルではありますが、ジャック・アタリ氏がこの書籍を通じて読者・社会に伝えたかったメインテーマは、現在そして未来の食に対する警鐘ではない

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納豆(「食品の科学知識」より)

※Newton別冊「食品の科学知識」より要約(第2版を参照しています)※

<粘りの成分の正体>
納豆のネバネバの主成分は、グルタミン酸が1万個程度繋がった『ポリグルタミン酸(PGA)』である。
グルタミン酸は、たんぱく質を構成するアミノ酸の一種である。納豆菌は、細胞膜にある酵素を使い、グルタミン酸を繋げてPGAを合成し体外に生産する。
納豆は混ぜるほどに粘りが出て糸を引くが、これは大豆表面にのみ

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アメリカ・悩める肥満大国

「佐々木敏の栄養データはこう読む!」(佐々木敏著・女子栄養大学出版部・2015年)第3章:「introduction アメリカ 悩める肥満大国」より

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ここ30年ほどのアメリカにおける肥満者の増加はただ事ではない。
40~59歳の男性を例に挙げると、1960年代初め

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日本人のカリウム摂取の特徴

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第2章:「5 日本人のカリウム摂取の特徴」より

食塩やアルコールが血圧を上げる厄介者であるのに対し、カリウムは血圧を下げる(または上げない方向に働く)有難い栄養素である。

栄養について少し詳しい人であれば、「カリウムは野菜とくだものに豊富」と覚えているかもしれないが、
実は植物性・動物性の別を問わず、どの食品にも満遍なく含まれている稀な栄養素である。

動物も

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この40年間で日本人はどれだけ減塩出来た?

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第2章:「4 日本人と減塩」より

国民健康・栄養調査は、半世紀以上にわたり毎年数千人にお願いし、食事記録法によって国民の栄養素摂取量を調べ続けている、恐らく世界で唯一の調査である。
食塩摂取量は1975年から報告されており、これによると70年代にはおよそ14gもあった摂取量が、最近は10gにまで低下している。

一方で、エネルギー摂取量は75年に1日あたり2,2

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天然の防腐剤としての「塩」

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第2章:「3 歴史のなかでの食塩の役割」より

塩は天然の防腐剤としての役割があるが、これは微生物が生きていくためには水が必要で、微生物が食塩が使える水を奪ってしまうためと考えられている。
「微生物から水を奪う」という点では、乾燥や砂糖漬けも同じ観点である。

また、腐敗の原因となる微生物の多くは極端な低温や高温では活動出来ない。加熱すると食品そのものが変質してし

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未来のあなたを守る減塩の話

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第2章:「2 未来のあなたを守る減塩の話」より

世界52の地域に住む約1万人を対象として、尿中の食塩排泄量と年齢による血圧測定結果を調べた研究結果に基づくと、食塩摂取量と血圧上昇量の間の密接な関係が見て取れる。

すなわち歳を取るにつれて血圧が上昇するのは自然な加齢現象ではなく、
長年摂取してきた食塩量の影響を強く受けていることが分かる。

このデータに基づくと

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健康問題:1位はたばこ・2位は○○

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第2章:「1 生活習慣病対策のためのアクション」より

「生活習慣病対策のために世界全体がとるべき5つのアクション」(2011年)によると、

1:「たばこ」→タバコの規制に関する世界保健機関枠組み条約の履行の推進
2:「食塩」→食塩の消費をおさえるためのマスメディア・キャンペーンと食品企業による自発的な活動
3:「肥満、不健康な食事、運動不足」→マスメディア・キ

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コレステロールが「高い」「低い」どちらが長生き?

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第1章:「5 コレステロールと寿命の関係」より

あるアメリカ人高齢者(65歳以上)を対象に血中コレステロール値と死亡率の関係を(単純に)調べた調査によると、血中コレステロール値(mg/dl)が、

160以下の場合:1.63
161~199の場合:1.00
200~239の場合:1.03
240以上の場合:0.96
となっている。

これだけ見ると、「血中コレス

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高中性脂肪には炭水化物・脂質どちらを控える?

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第1章:「中性脂肪値を上げない食べ方」より

飲酒量と中性脂肪との関連を調べた研究によると、お酒は「1日に1合」を超えると高中性脂肪血症になりやすいことが言える。
また、総エネルギー摂取量を変えずに総エネルギーの5%を炭水化物から脂質に置き換えた研究では、LDLコレステロールが増加する一方で、中性脂肪値は減少する(=炭水化物の方が中性脂肪を上昇させる)ことが分か

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トランス型脂肪酸と飽和脂肪酸、どちらに注意すべき?

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第1章:「トランス型脂肪酸の問題点」より

飽和脂肪酸/トランス型脂肪酸と血中コレステロール(LDL÷HDL)変化量を観察した研究をまとめた結果によると、
同じ量を摂取した場合は、トランス脂肪酸の方が血中コレステロールにより悪い影響を与えることが分かった。

しかし、日本国内で成人男女の食事を調べた研究によると、トランス型脂肪酸の摂取量平均は総エネルギーの0.8

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コレステロール対策は揚げ物に注意するだけで万全?

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第1章:「揚げ物と高コレステロール血症」より

総エネルギー摂取量の5%だけ、炭水化物から各脂肪酸(飽和脂肪酸/一価不飽和脂肪酸/多価不飽和脂肪酸)に置き換えた時の血液中LDLコレステロール値変化を観察した研究によると、

飽和脂肪酸:+6.4mg/dl
一価不飽和脂肪酸:-1.2mg/dl
多価不飽和脂肪酸:-2.8mg/dl

であり、飽和脂肪酸だけがコレス

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2つの「コレステロール」が招いた誤解と混乱

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第1章:「コレステロール値を下げるには」より

食品中のコレステロール:
主に動物の細胞膜に存在し、細胞内外の物質輸送を担っている。
特に神経組織に多く、他には卵の黄身にも豊富である。

血液中のコレステロール:
コレステロールは主に肝臓で合成され、全身の細胞に輸送される。
コレステロール単独では動脈の中を移動出来ないため、リポたんぱく質と結合し、リポたんぱくコ

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[フィンランド]森と湖と疫学研究の国

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第1章:フィンランド「森と湖と疫学研究の国」より

フィンランドが生活習慣病の予防に関する様々な医学研究、特に「疫学」(※)と呼ばれる分野の研究を他の国に先駆けて行い、数多くの成果を世界に発信してきたことは日本であまり知られていない。

(※)疫学:疾病や健康に関連した出来事とその要因を集団を対象に研究する学問のこと。

1960年頃、フィンランドは世界一心筋梗

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