納豆(「食品の科学知識」より)

※Newton別冊「食品の科学知識」より要約(第2版を参照しています)※

<粘りの成分の正体>
納豆のネバネバの主成分は、グルタミン酸が1万個程度繋がった『ポリグルタミン酸(PGA)』である。
グルタミン酸は、たんぱく質を構成するアミノ酸の一種である。納豆菌は、細胞膜にある酵素を使い、グルタミン酸を繋げてPGAを合成し体外に生産する。
納豆は混ぜるほどに粘りが出て糸を引くが、これは大豆表面にのみ分布していたPGAがくっつき合うことで表面から離れて糸を作るためであり、
混ぜることで粘り成分の総量が増えるわけではない。
また、うま味成分であるグルタミン酸の量が混ぜることで増えることも考えにくい。かき混ぜた程度ではPGAが壊れてグルタミン酸に分解されることはない。なお、PGAそのものには味は無い。

<粘りは納豆菌のための非常食>
納豆菌は、周囲に栄養が不足した時に使う栄養源とするためにPGAを作っていると考えられている。
納豆菌の数が少なく、周囲に栄養が豊富な時は、PGAはあまり産生されない。
納豆菌がある程度増えてくると、納豆菌は密度が高くなったことを細胞表面のセンサーで感じ取り、将来の栄養不足に備えてPGAを作り始める。
更に周囲に納豆菌が増加すると、栄養分として使うためにPGAを分解し、グルタミン酸を体内に取り込み始める。
なお、納豆を冷蔵庫から出して時間が経つと、かき混ぜても粘りが出ないことがある。これは低温で活動が抑えられていた納豆菌が再び活動を再開し、PGAを自分たちで食べてしまうためである。

<ビタミンKが大豆の80倍>
納豆菌の活動の結果、PGA以外にも様々な成分が作られる。
中でも特にビタミンKが非常に多くつくられ、納豆には同量の大豆のおよそ80倍ものビタミンKが含まれている。
ビタミンKは骨を作るたんぱく質の働きを助ける。

<納豆のにおい成分>
納豆菌が作るにおい成分の中に「イソ吉草酸」(いそきっそうさん)があるが、この成分は足のにおいの原因物質でもある。
このイソ吉草酸を作る能力を持たない納豆菌を選抜し、納豆独特のにおいが少ない納豆も製品化されている。


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