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J2第7節 ギラヴァンツ北九州戦 レビュー

連敗中と苦しいチーム状況の中、迎える相手は北九州。
昨年は連勝した相手に今年も勝ち、連敗を止めたい。

1.スタメン

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甲府
前節から4人変更。
河田、小柳、中村、有田に代えて岡西、メンデス、野津田、長谷川を先発に起用。
前節の後半で良かった時間のメンバーを先発から起用してきた。
ベンチには開幕戦で負傷退場した金井が復帰となった。

北九州
前節から1人変更。
永野に代えて六平をボランチに起用してきた。
配球面での変化が狙いとなるか。

2.アグレッシブ

3試合続けて試合の入りに失敗したことで、難しい試合を強いられた甲府は立ち上がりからアグレッシブな姿勢を見せていく。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前半から前に押し込みながら、ボールを握りながらというプランで入りました。お互いにボールを保持し動かすことに長けたチームで、我々は守備の圧力と前への推進力を出していこうというとし、ボールを保持しサイドあるいは中へサポートしながら、コンビネーションもしくはサイド攻撃というところを今週やっていたので、前半から良い入りをしてくれたかなと思います。』

開始20秒ほどで、右サイドで関口がボールを運びながら前進し長谷川を使いCKを獲得する。
試合の入りから前への推進力を見せ、立ち上がりからアグレッシブに入る。

最初のシュートは甲府。
後方でのビルドアップに対し、食いついてきた北九州を引き出し背後を取った泉澤へ岡西からフィードが出る。
スローインを経て北九州を押し下げた中で、ボールを受けた新井がボールを運び前が空いたところをミドルを放つ。

攻撃でアグレッシブさを見せた甲府に対し、守備でアグレッシブな姿勢を北九州は見せる。
ビルドアップしたい甲府に対し、積極的にプレスに出ていき最終ラインはそれに合わせ、高い位置を保つ。

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今節は左サイドで泉澤がアイソレーションの形で生駒とマッチアップする形を作れることで多くのチャンスを作れることとなる。
北九州としても警戒はしており、人数を掛けたいところだが甲府が北九州のハイプレスを上手く利用することで生駒一人で対応せざるを得ない状況となる。
今節の甲府はビルドアップの際に岡西を活用することで、数的優位を保ちプレスを回避していく。

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山本を上げずに、ビルドアップしていくことでも数的優位は作れるがGKを使うことで高い位置に人を配置できるようになる。
また、岡西が泉澤、荒木へと上手く配球できていたことで北九州の生駒はどこを狙うのかターゲットを絞りきれない。
ハイプレス回避のために岡西をビルドアップに組み込んだと思われるが、引いて構える相手にも活用しても良いのではないかと思う。
相手を押し込んでいくためには前線に人数を掛けていくことは必要となり、ビルドアップにGKを組み込むことでその分一人浮く形となり前線に人を配置できるようになる。

左サイドではタッチライン際で時間を作れる泉澤に対し、内側に勢いを持って荒木が飛び込んでいくという形を持つ甲府だが、右サイドは関口の縦へのランニングやドリブル突破に限られていた。
長谷川の起用により、中央で起点や時間が作れることで関口がタッチライン際で自由ができる。
サイド攻撃が主体の甲府にとって、良くない試合では泉澤からの形に終始しがちとなるが長谷川の存在によって右サイドが活性化し中央でも起点が作れることで攻撃が多彩となってきた。

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一方の甲府も前からのプレスで規制をし、サイドへと追い込む守備を見せる。

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特に右SBの生駒へと誘導をさせていく。

最初の決定機は左サイドで起点を作ったところから甲府に訪れる。

いつもの形から三平が合わせるも、直前に接触で負傷していた吉丸が防ぐ。
やはりこの形は甲府の武器となる。
ここで見逃せないのが、クロスに対して関口がゴール前に上がってきたことである。
これにより、永田が関口への警戒が必要となり岡村との間にギャップができた。
そのスペースを三平が活かしてヘディングシュートを放ったが、止められてしまった。
その流れで得たCKからもチャンスを作る。

波状攻撃を仕掛けるも、ゴールライン上で防がれてしまう。
ボールへの寄せをき北九州が怠らなかったからこそ、ゴールを割らせなかった。

試合後の小林伸二監督のコメントより。

『前半は圧をすごく感じてボールを持ち出せなかったということに尽きると思います。』

試合後の新垣貴之選手のコメントより。

『前半は終始押し込まれていたんですけど、前半は特にやりづらくて修正が上手く効かなかったです。』

北九州側のコメントにあるように、甲府の圧力は強くビルドアップして前進を図りたいところだが思ったようにできずロングボールに糸口を見つけ出すしかなかった。
小林監督のコメントにあるようにボールを持ち出すことは相手を押し込むことに繋がり重要となる。
これはビルドアップに限った話ではなく、どの局面においても大切なことであり、甲府側でみれば長谷川はこの点においても大きな役割を果たしていた。

良い時間は今節も作れるも決めきれず、嫌な展開となりかけるも前半終了間際に先制に成功する。

スローインから三平が岡村と入れ替わる。
泉澤の背後へのランニングに合わせ、スルーパスを送る。
泉澤がGKを交わし、ゴールに流し込み先制点を挙げる。
三平の身体の使い方が上手く、入れ替われたが何でもないスローインから得点と取れる時には簡単な形から取れるものである。

試合後の泉澤仁選手のコメントより。

『三平和司選手が前向きの良い状態でゴールに向かっていて、あとは走っていってGKが出てきたのでかわせれば流し込むだけだと思いました。』

良い試合の入りをして、決定機をいくつも作りながら決めきれないのかという展開になりかけたが終了間際に得点を挙げることができた。
アグレッシブさを示したことが最後に報われた。

3.一瞬の隙

後半開始から北九州はGKを代える。
前半途中に接触により負傷した吉丸に代えて志村を投入する。

後半から風が強くなってきた中で、最初のチャンスはまたも甲府。

関口の縦パスを受けた長谷川が中盤とDFラインの間でボールを受け、ターンし前を向く。
連動し、背後へ飛び出した三平へスルーパスを送りGKと一対一となるが、志村が防ぐ。
ここ数試合欠けていた前線の選手の動き出しから生まれた形だが、三平の動き出しがあることで今節は前線に動きが出ていたことがチャンスを多く作れていた一つの要因となる。
北九州が前からプレスに来ることで、後方にはスペースがあることも要因だが動き出すことでできるスペースもある。
止まること、動くことは状況によって異なってくるため、その都度見極めが必要となる。

次のチャンスも甲府。

最後は野津田のシュートが枠を外れた形だが、最終的にペナルティエリア内に6人入っており、厚みのある攻撃を見せた。

決めきれないでいると、徐々に流れは北九州に移っていく。
58分に初めて北九州がチャンスを作る。

厚みのある攻撃を見せた北九州だが、最後はSBの生駒のパスを受けたボランチの針谷がシュートを放った。
北九州が徐々に流れを持っていくことになったのは、甲府が決めきれなかったからだけではない。

試合後の小林伸二監督のコメントより。

『後半はもう少し、そこをやられていないんですけど、修正をかけて運び方を、あまりにも圧を感じて回らないので、立ち位置を変えてボールを運んだというところはいい形になったと思います。』
『左サイドで言えば、ガキ(新垣貴之選手)を高い位置に置いて、縦の関係で2対1を作る。前半はタク(永田拓也選手)がプレスを受けていたので、そういうところの回避とボール保持者のオカ(岡村和哉選手)との関係で、相手の横で2対1を作るというような感じで、立ち位置を少し高い位置と横で2対1を作る、縦で2対1を作るという感じが、うまくシステムを変えたので(相手も)対応が難しかったのではないかなと思います。』

試合後の新垣貴之選手のコメントより。

『僕とダイゴ(髙橋選手)が後半は(サイドに)張ったということで、相手のサイドバックが出て来れなくなったというのが、真ん中がうまくいきだしたことに繋がったと思っています。ただ、後ろのボール回しだったりビルドアップのところで全然まだまだうまくいかないことが多くて、ショートカウンターも何本も食らっていたし、シュートも相手の方が多かったのでそこはうまくいかなかったなと思います。』

前半から立ち位置に変化をつけ、自ら流れを呼び戻すことになった。

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541でブロックを作ることが甲府の特徴だが、サイドで張られることでWBが蓋をされる形となり前への推進力が欠けてしまう。
両シャドーは内を締める形で守るためサイドでは1対2の状況を作られてしまう。
シャドーやボランチが出ていくと中が空いてしまう悪循環となる。
甲府が前半、北九州のハイプレスを逆手に取ったように後半は北九州が甲府の前からのプレスを活かす形となった。
リードをしている展開ということもあり、前からのプレスを控え構える戦い方をしていても良かったのかもしれない。

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ただ、構えることで押し込まれる時間が増えることは確実なので結果論に過ぎない。
見方を変えれば、甲府というチームは守りを固めて戦うチームでは無くなってきたということである。

針谷のシュートの直後、北九州は選手交代を行う。
西村に代えて前川を投入する。

立ち位置の変化だけでなく、プレー面でも変化をつけることで北九州は攻勢を強める。

試合後の新垣貴之選手のコメントより。

『ボールを持ったら仕掛けるというところはあったんですけど、縦だけじゃなくて中に行くことで相手の視線というかマークもずれが生じると思ったので、中にドリブルしてということ、チャンスメイクは意識していました。』

そして、71分に同点ゴールが生まれる。

背後に抜け出した前川のシュートのこぼれに富山が詰めて同点に追いつく。
失点の理由は主に2つ。
左サイドに人数を掛けすぎ、右サイドでのリスク管理を怠ってしまっていたこと、荒木と岡西の判断の迷い。
きっかけは山本のパスミスからだが、この局面を見てもらうとわかるが左サイドに人数を掛けており失った直後に奪いきりたかった。
結果回避されることとなったが、それでも数的優位は保てており防ぐことは可能であったように思う。
新垣のパスに前川が裏に抜ける形となったが、荒木がメンデスと並行に並んだ時に止まっていればオフサイドを取れていた。
また、背後に抜け出した前川に対し、岡西が出るのか出ないのか判断に迷った。
町田戦での失点場面でも見られたが、岡西に迷いが見られている。
技術的な問題というよりは、メンタル面での迷いと見えるが前節先発したがコンディションが上がらない河田とGKで勝ち点が稼げない現状となっている。

試合後の富山貴光選手のコメントより。

『後半はボールが回るようになってきて、そこから裏に抜け出して大河(前川選手)がキーパーと1対1になった場面で後ろにいたんですけど、もしかしたらこぼれてくるんじゃないかなと思って走っていたら本当にこぼれてきたので、シュートの場面もヘディングで面を作ってミートだけ意識して決められたのでよかったかなと思います。』

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『まずは攻撃に行っているときのセキュリティの問題。やはりこぼれ球への反応だったり、逆サイドのボランチのところの締めだったり、逆サイドのサイドハーフの戻り、細かなところを言えばいっぱいあると思いますが、あれだけ攻めていた中でのセキュリティの問題、やられたら浮き彫りになってしまうのですが、それまでも何回かしっかり押さえこんでいられたところと、ちょっと抜けていたところがあるので、もう一回映像を見直しながら、カウンターに対してまず最初どこで抑えるかというところ。』

同点に追いついた北九州は73分に永田に代えて乾を投入する。

77分には甲府に決定機が訪れる。

長谷川が右サイドで起点を作り、関口へと繋ぐ。
関口のクロスから荒木の落としに泉澤がダイレクトで合わせるもポストに阻まれる。

79分には甲府が3人の交代を行う。
野澤、野津田、長谷川に代えて山田、中村、鳥海を投入する。

82分には北九州が2人の交代を行う。
新垣、富山に代えて藤谷、平山を投入する。

88分に甲府に決定機。

志村からのフィードをメンデスが狙い、セカンドボールを拾った中村から泉澤、三平へと繋ぎ、スルーパスに抜け出した鳥海がGKと一対一となるがシュートを打てず。
流れたボールを拾った関口がクロスを入れると、最後はメンデスがシュートを放つも枠の外へと外れてしまう。
直後に甲府泉澤に代えて有田を投入する。
この流れでのゴールキックから有田にチャンス。

ゴールキックに競り勝ち、セカンドボールを拾った甲府は三平からのクロスに有田が合わせるも枠の外へと外れてしまう。

このまま、試合は動かず、2点目を決めきれなかったことで、勝ち点2を失う試合となってしまった。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『突破したときのクロスの質でしたり、ゴール前で落ち着きが無く大きく足を振ってしまったり、そこの冷静さをもう少し持たないといけないかなと思います。1つのクロスの質、これだけセットプレーがあって、キックの質がもっと良ければと思う部分もあるので、そこを特化していく必要があるかなと思います。あとはディフェンスラインをブレイクしていくところだったり、左サイドの崩しからの中の入りだったり、コンビネーション的には良くなっているので継続しつつ、あとはゴールネットを揺らすクオリティとパワーと冷静さが大事になってくるのかなと思います。それを1週間やっていきたいと思います。』

試合後の山本英臣選手のコメントより。

『100%の確率で取れるようなシュートシーンもあったし、追加点が取れないからといってカウンターやCKでチャンスを与えた流れはしっかりとマネジメントをしないといけなかった。』
『これだけシュートを打てているので……そこは前の選手だけではないけれど、後ろも守り切れていない。前も点を取れていないのは戦術よりも試合に出ている選手の責任。』

ワンチャンス、一瞬の隙で勝ち点2を失ってしまった。
決定力がフォーカスされるところだが、2点目を取りにいくことに必死となりリスク管理を怠ったことで与えた隙を突かれた。
2点目が決まっていれば、勝ち点3を掴んでいた可能性は高かったとは思う。
シュートも多かったことで、気持ちが得点を取ることに傾いてしまったように思う。
リードしている状況であったことを考えても無理をする必要はなかった。
監督のコメントはシュートに対する、ゴール前の冷静さについて触れているが試合をコントロールするという意味での冷静さも必要であった。

4.MOM

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長谷川元希
今節は非常に難しかった。
一人に絞らなければ、北九州のGK陣を挙げるべきかと思う。
長谷川は得点を挙げたわけでも、アシストをしたわけでもない。
チームに欠けていた歯車のような存在となり、攻撃を活性化させた。
ドリブルで運びながら相手を押し込むプレーや関口を活かす位置取り、三平に通したラストパスや狭いエリアでのターン。
チャンスを多く作れたのは長谷川の存在が大きかった。

5.あとがき

またも勝てず。
苦しい結果が続いている。
勝ちこそが最大のきっかけとなることは間違いないが、勝つためのきっかけが掴めない。
若手が良いプレーを見せ、可能性は感じさせたが勝ち点3までは届かなかった。
前半でもう1点あるいは後半の立ち上がりに得点が取れていればという試合になった。
なかなか90分通して安定する試合が作れないが、相手がいるスポーツであるため簡単ではない。
良い時間はどの試合でもあるだけに、そこで決めきれるか。
決して悲観するような試合ではない。
あと一歩のところまで来ている。
今できることは焦れずに続けていくことではないか。
次の相手も難敵だが、勝てれば間違いなくきっかけとなる相手。
伊藤ヴァンフォーレにとって勝負の試合となるのではないか。
次節こそ絶対に勝つ!!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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