見出し画像

J2第22節 愛媛FC戦 レビュー

群馬、岡山に連勝して迎える相手は降格圏に沈む愛媛。
リーグ戦も折り返し初戦で勝ち点3を得て上位に食らい付いていきたい。

1.スタメン

画像1

甲府
前節と同じスタメンとなった。
ベンチ入りメンバーも同じとなったが、怪我人や陽性反応が出た選手がおりベンチ入りメンバーを揃えるのもギリギリの状態となっている。

愛媛
前節から1人変更。
小暮に代えて三原を起用した。
ベンチには鳥栖から期限付きで加入した石井が復帰した。
また、内田はスタメンとなったが横谷は甲府凱旋とはならなかった。

2.ポジションレス

立ち上がりは愛媛の戦い方を伺う入りをする甲府。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『試合の中では、相手が5枚で来るのか4枚で来るのか、さらには可変してくるのか、我々はこれらを想定して臨みました。』

前節までとは異なる可変を見せる愛媛。
ボール保持の際には全体が右肩上がりとなり攻撃に人数を掛けていく。

画像2

茂木がサイドにスライドすることで三原を高い位置に押し出し、近藤が藤本に近いポジションを取る。

試合後の三原秀真選手のコメントより。

『攻撃では4バックになって(自分は)ウイングになってプレーした。』

試合後の西岡大志選手のコメントより。

『今回(システムを)可変でやって、守備ではミスマッチしないようにして、攻撃ではミスマッチを狙って臨んだ。』

ボール保持時と甲府がボールを保持する状況によって愛媛は立ち位置を変化させる。
ボール保持時の甲府は新井が中盤に上がり、野澤と並ぶ形を取り野津田を押し出す。
右サイドでは関口が幅を取り、左は泉澤を中心に荒木と野津田がポジションを入れ替えていく。

画像3

ボール保持の際は4バックに可変する愛媛だが、甲府がボールを持つ際には5バックで引いて構える形を取る。

最初にチャンスを作ったのは愛媛。

泉澤のドリブルを茂木が止めるとクリアのような形でロングボールを前線に入れる。
ロングボールに対し、藤本が単独で抜け出し、シュートを放つが河田が防ぐ。
こぼれ球から忽那が再度シュートを放つが、またも河田が反応し防ぐ。
立ち上がりの決定機を愛媛は逃してしまう。

決定機を凌ぐと甲府が押し込んでいく展開を作っていく。

試合後の實好礼忠監督のコメントより。

『入りは良い感じで入れた。そこから相手のボールの動かしに対して前に出られなくなり、後ろに重くなってしまった。』

ボールを持てるようになった甲府に対し、愛媛は前に出ていくことができず自陣に引いて守るしかなくなっていく。

そんな中、今節の甲府はサイドチェンジをテーマに置き、サイドからの攻略を狙う。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『まずはチェンジサイドはテーマにありました。相手が5バックで来るのか、4バックで来るのかでそこで狙い場所を変えるということ。特に5バックで来るのであれば、ウイングバック裏へのランニングを上手く使いつつ、サイドの空いたスペースを使っていこうということがありました。』

サイドチェンジを活用しながら、WBを引き出し空いた背後を狙いとしたが引いて構える愛媛に対しサイドにボールを運ぶことはできるが引き出した背後までは使うことができない。
だが、ボールを持ち押し込んでいくことで厚みのある攻めは見せていく。
特にメンデスと小柳がドリブルやランニングで愛媛陣内に入り、愛媛守備陣を押し下げる。

後方から攻め上がったメンデスが甲府にとっての最初のチャンスを作る。

流れの中でゴール前まで攻め上がり、鳥海からのクロスをヘディングで狙うが岡本が防ぐ。
3バック全員がゴール前に関わっていく今節の甲府。
それに対し、野澤がDFラインに降りたり、荒木がボランチに近いポジションを取りながらポゼッションに加わりバランスを取っていく。
ポジションという概念はなく、空いているスペースを見つけ進入したり埋めていく。

だが、ボールは持てるが得点が取れないでいると徐々に攻めが単調となっていく。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前半しっかりとボールを握りながら、相手の出方やバイタルエリアにボールを入れるということもありましたが、途中に中央に集まりすぎてカウンターを受けることもありました。』

サイドから打開したい甲府だが、強みである泉澤を封じられてしまうことでボールが中央に集まり始めてしまう。

試合後の三原秀真選手のコメントより。

『監督からは背後を取られないことを求められていた。ボールを足元に入れさせてからの対応をしっかりとしよう、絶対に前を向かせないことを意識してプレーした。』

泉澤の足元にボールは入るが、対面の三原が泉澤に自由を与えないことで、個人でサイドを打開する展開を多くは作れない。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『相手は約40パーセントがセットプレーでの失点ということから、セットプレーをアラートにし、セットプレーで仕留めようという話をしていました。』

ドリブルという質的優位は愛媛に抑えられるが、高さの優位性を活かし伊藤監督のコメントにあるように甲府が38分にセットプレーから先制する。

相手の守備が重なって処理しきれなかったこともあるが、メンデスの高さが活きた場面。
180㎝を越えているフィールドプレイヤーは甲府が5人で愛媛は1人と高さで甲府が優位に立っており、特にメンデスに対してはマークしていた浦田とは12㎝もの身長差があった。

試合後のメンデス選手のコメントより。

『その前の段階でチームは良いプレーをしていて、CKを取った。練習どおりにしっかりとみんなが意識を共有して、良いボールが上がり、決められて良かった。』
『良いボール、速いボールを上げてくれて合わせることができた。GKのミスもあったと思うが、運が良かった点もある。』

CKを得たきっかけは可変して中盤に上がった新井が持ち運び、自らミドルシュートを狙ったところから。
引いた相手に対しての可変の効果、ボールを運ぶ重要性がわかる場面である。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『セットプレーからこれだけ得点を取れているディフェンダーはそうそういないので、メンデスがいるセットプレーの強さというのは攻守において力になってくれているなと思います。』

メンデスの不在時には高さに不安感もあり、セットプレーから失点を重ねていたが出場時には逆に武器となる。
メンデスの存在の大きさを感じさせた。

愛媛を押し込み続けた中で、攻めあぐね得点が取れない雰囲気もあったがセットプレーから先制に成功した。
得点はセットプレーからであったが、ポジションという概念ではなく、スペースやタスクによって立ち位置を変えるポジションレスなサッカーは伊藤監督の目指す形に近づいてきたことを感じさせる前半となった。

3.パワー

後半開始から甲府は小柳に代えて北谷を投入する。

前半よりも愛媛はアグレッシブな姿勢で後半に入る。
プレスの強度が高まるが、甲府がプレスを回避することでオープンな展開にもなりリスクもある戦い方となる。

後半も最初のチャンスは愛媛。

藤本が内田からのロングパスに抜け出し、シュートを放つが河田が立ちはだかる。

後半になり、甲府は可変の形を少し変更する。

画像4

荒木が前半より高い位置を取り、野津田がリラに近いポジションを取る。
より攻撃的に追加点を狙いにいく。

67分に甲府は野澤に代えて長谷川、愛媛は浦田、三原、忽那に代えて森谷、岩井、吉田を投入する。
長谷川はそのままボランチに入ったが、愛媛は田中がCBの真ん中に下がり森谷がボランチ、岩井が右サイド、吉田はシャドーに入った。

投入された長谷川がチャンスを作る。

中央を野津田起点に長谷川と鳥海のルーキーコンビで崩し決定機を作るが、岡本が防ぐ。

75分に甲府はリラに代えて有田を投入する。
今節も得点はならなかったが、徐々にコンディションは上がってきた。
あとは結果だけだ。
有田は古巣愛媛相手に2試合連続となる得点を決めたい。

76分に甲府はCKからチャンスを作る。

長谷川のキックに有田がニアサイドで背後へと逸らし、泉澤が合わせるが枠を捉えられず。
選手交代後から甲府が続けてゴールに迫っていくが、追加点が取れない。

79分にに愛媛は足を攣った田中に代えて大谷を投入する。
大谷は20試合ぶりの出場となった。

甲府の攻勢は止まらない。
80分にはメンデスがドリブルで持ち運びミドルシュートを放つ。

高さだけでなく、ドリブルでの前進にミドルシュートとメンデスの攻撃面での成長が止まらない。

85分には愛媛は近藤に代えて榎本を投入する。
藤本同様に単独で打開できる存在であったが、周りのサポートに恵まれず孤立することが多くなってしまった。

83分には愛媛がCKからゴールに迫る。

森谷のキックに茂木がニアサイドで逸らしゴールを狙うがここでも河田が立ちはだかる。

アディショナルタイムに甲府は泉澤に代えてバイヤを投入する。

最後まで甲府の運動量が落ちず、パワーを持ち続けた甲府が勝ち切った。
チャンスをいくつも作りながら決めきれなかったことは課題として残ったが、今節も複数得点取る可能性はあった。
序盤戦の決めきれなかった状況とは異なり、チャンスは作れているだけにあとは冷静に仕留められるかにかかっている。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『欠場者が多い中、フィールドプレーヤーが須貝も含めて17人でやっている状況の中で、選手たちが集中力を保って、満身創痍の選手もいるそんな中でプレーしてくれた選手もいる中で、それが力となってチームが一体感を持ってやってくれていると思います。』

選手が足りない苦しい状況の中、一丸となり達成した3連勝。
小柳や野澤は早い時間に代わったこともあり、伊藤監督のコメントにある「満身創痍の選手」に当てはまるだろう。
今後もチームの一体感を失わず高めていきたい。

試合後の河田晃兵選手のコメントより。

『内容的にはその前の2試合に比べると良くなかったと思うが、我慢して1-0で勝てたことは大きい。』
『前の2試合は失点ゼロで終われなかったので、ゼロで終えられて良かった。』

チャンスがありながら1点に留まったこともあり、満足感は高くないのかもしれない。
決められていてもおかしくないシュートをいくつか打たれたが、河田の存在もあり完封勝利へと繋げた。
試合に出ることで河田のコンディションも高まってきたのではないか。

試合後の實好礼忠監督のコメントより。

『僕自身はポジティブな要素を感じたので、そこを選手たちと共有し、気持ちを切り替えられるように進めていきたい。』
『複数失点がなかったところ。あとは粘り強く守れたところ。ただ、前に人をかけて守ることはできていなかったので、そこは今後やっていきたい。』

複数失点をしなかったことは誇れるポイントなのかはわからないが、2試合で8失点となっていたチームにとっては意味のあることなのかもしれない。
粘りは見せ、勝ち点を取っていてもおかしくは試合はしていた。

試合後の西岡大志選手のコメントより。

『守備的な戦い方でコンパクトにしてゴール前を固める。そこで(失点)ゼロに抑え続けていれば、違った展開になったかもしれない。ただ、奪いに行く回数を増やさないとボールを持つ時間も少なくなるし、奪う位置が低いとチャンスも作れない。どこでどう守るのかの全員の共通理解が必要。ここからの積み上げが必要になる』

ゴール前を固めることに対しては、ポジティブな要素は示せたがボールを奪いにいくパワーは見せられなかった。
対して甲府は90分パワーを持ち続け、最後まで走り切ったことが勝ち点3に繋がった。

4.MOM

画像5

河田晃兵
昨シーズンからコンディションが上がらず出場しても失点が続いてきた中で2シーズンぶりの完封を達成。
3つほどの決定機は決まっていてもおかしくないものであり、一つでも決まっていれば手にした勝ち点は変わっていただろう。
河田の活躍がチームに勝ち点3をもたらした。

5.あとがき

今シーズン3度目の3連勝となった。
押し込む時間は多くあったが、愛媛の粘りの前に苦しい試合展開が続いた。
だが、決めきれないで追いつかれていたこれまでとは異なり、6試合ぶりの完封で勝ち点3を手にした。
離脱者が多いことに代わりはないが、次節乗り切れば中断期間に入る。
苦しいチーム状態の中で3連勝できたことは大きな意味があり、一段階チームが成長したようにも感じる。
中断前最後の試合で、昨シーズンから達成できていない4連勝に挑戦する権利を得た。
4連勝して中断に入りたい。

愛媛としては勝ち点1は持って帰りたかった一戦だったのではないか。
岡本を中心にゴールに鍵をかけることには一定の手応えは掴んだかと思うだけに、引くだけでなくボールを奪いにいけるエネルギーを蓄えたい。
前に出ていくパワーが出せれば藤本の存在もあり、攻撃でもチャンスを増やしていけるだろう。
このまま降格圏に留まり降格するチームではない。
後半戦の巻き返しに期待したい。

中断まであと1試合。
念願の4連勝で締めくくりたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?