J2第19節 レノファ山口戦 レビュー
上位3連戦勝てず差を縮められなかっただけに再スタートの一戦としたい。
ホームに山口を迎えての一戦、欲しいのは勝ち点3のみだ。
1.スタメン
甲府
前節から4人の変更となった。
出場停止の新井とメンデスに代わり山本と北谷、野津田とリラに代えて中村と三平をスタメンに起用。
山本は8試合、北谷は10試合、中村は7試合、三平は12試合ぶりのスタメン。
野澤陸が4節愛媛戦以来2度目のベンチ入りを果たした。
山口
前節から3人の変更となった。
楠本、神垣、梅木に代わって眞鍋、島屋、高井をスタメンに起用。
眞鍋は7試合、島屋は10試合、高井は2試合ぶりのスタメンとなった。
2.駆け引き
立ち上がりいきなり山口に決定機が訪れる。
続いて甲府がゴールに迫る。
いきなりどちらにもチャンスが訪れたが、共に相手を見て攻め方、守り方を変えていくチームなだけに探り合う形となる。
まずは山口がボール保持する時間が多くなる。
幅を両WBが高い位置に張ることで取り、トップの高井の下に池上と島屋がポジションを取る。
ビルドアップ時には3バックの左右が開くことで甲府のシャドーを開かせ、中央へのパスコースを空ける狙いを持つ。
ボランチは状況を見て佐藤がDFラインに降りてボールを引き出す。
試合後の渡邉晋監督のコメントより。
『非常に良かったと思います。相手が食いついてきたらどこが空くのか。食いついてこなければどうするのか。自分たちがビルドアップを安定させるにはどこが出口になるのか。そういったものをトレーニングしてきています。相手の状況をみて自分たちで選択してやれていたと思います。』
試合後の島屋八徳選手のコメントより。
『僕と池上選手がディフェンスラインと中盤の間で浮いて、そこを起点に攻撃を作っていくことがありましたが、ある程度自由にやらせてもらいました。』
『ビルドアップのところは、僕や池上選手のところを出口にしながら前と後ろをうまく繋げたという実感はあるのですが、最後の1/4のところでもっと人が上手く関わって、クオリティ、回数を高めていけると思うので、練習からコミュニケーションをとってやっていきたいです。』
一方の甲府は山口の守り方に応じて狙いを変えていく。
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『まずは相手が5枚で守るのか、4枚で守るのか、そこで狙うところを変えました。4枚であればサイドバックがスライドしたワイドのところ、臣(山本)から仁(泉澤)へのパス、臣(山本)からワイドの正(関口)へのパスは狙いでした。ただ5-3-2や5-4-1で守るときもあったので、5-3-2の時は後ろの翔(荒木)や史(北谷)のところにチェンジサイドしていけば、そこがフリーになるというプランでした。』
序盤は442でセットする山口に対し、サイドの高い位置を突いていく。
ビルドアップ時には山本が中盤には上がらず、DFラインが右にスライドする形を取る。
試合後の渡邉晋監督のコメントより。
『ここ数試合甲府さんの試合を見ているのと違った形でビルドアップをしてきたので、そこに対しては準備しているものとフィットはしなかったのですが、それをしっかりと選手も判断して頭で理解したところから、行くのか行かないのかメリハリがでていたと思います。』
山口としてはここ数節とは甲府がやり方を変えたことで準備してきたこととは違ったようだが、前線からのプレスは積極的に掛けていく。
19分には山口にチャンス。
切り替え速く、渡部がボールを奪うと澤井へと繋ぎクロスから高井がシュートを放つが岡西がセーブする。
飲水タイムを経て山口は守り方を変更する。
541でブロックを敷く形へと変わる。
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『途中で5-4-1になったことで、サイドハーフの背中に元希(長谷川)と亮太朗(中村)を立たせながら、そこに起点を作りセンターバックが食ってきた時にその裏へさんぺー(三平)を走らせることや、ウイングバックの裏を取りに行くこと、サイドのポイントからセンターバックの裏の深いエリアを取りに行くところなど、チームプランとして持っており、臣(山本)が逆サイドに展開していることはプランとしては良かったなと思います。』
37分に山口の右サイドからのクロスでアクシデントが起こる。
山本と岡西が接触したことで山本が膝を痛めてしまう。
アディショナルタイムには交代を要求するが、交代は行わず前半を終える。
前半はお互いに探り合う形で普段とは違う形や相手の出方を見てやり方を変える駆け引きが詰まった前半となった。
3.二転三転
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『前半の内に史(北谷)と臣(山本)が膝や足首を打撲するなどイレギュラーがありました。ただハーフタイムでいきなり2枚を代えるにはリスクがあります。またこのままゲームをやらせて良いものか、前半を失点0で抑えている中でゲームを崩して勝負して良いものかなど葛藤しました。その中で、怪我の部分にテープをすればもう少し出来るということであったので、そこに少し懸けた部分もあります。そこからはセンターバック2枚が抜ける状況のプランも立てました。』
山本だけでなく、北谷も負傷していたようだが交代は行わず後半へと突入する。
立ち上がりから山口がサイドの高い位置からクロスを入れていくことで、CKを続けて獲得していく。
すると51分に先制に成功する。
CKが連続する展開となったが、我慢できず失点を許す。
本来であればメンデスとリラが構えているエリアであるが、高さのある選手が今節は少なくなっていたところを突かれてしまう。
失点を機に甲府がギアを上げていく。
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『取られた後はどこのチームもそこからパワーを掛けることが多いと思うので、先制点を取る為のパワーの掛け方はすごく重要になってくると思います。お互いにやられたくないところと、どこで仕留めるかというのを見ながら、相手の背中を見ながらやっている中で、失点したことでパワーが出てくるというのはどこのチームでもあること。先制点を取る為のパワーの掛け方、前半から取りに行く為のパワーがあっても良いかなと思います。』
ボールを積極的に動かしていくことができるようになると55分に同点に追いつく。
山田の縦パスを長谷川がボランチの脇で引き出す。
長谷川から今度は中村がボランチの背後でボールを受け、泉澤を使うとDFが引き付けられ大外の荒木がフリーとなる。
クロスに対し、人数を掛けられたことが得点に繋がった。
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『右から中央へ入れ、左サイドを余らせてクロスに入ってこれたこと、ここは素晴らしい得点でした。』
伊藤監督のコメントにあったように失点したことで今度は山口が積極性を見せていく。
飲水タイムで共に選手交代を行う。
甲府が長谷川に代えて鳥海を、山口が澤井に代えて石川を投入する。
同点に追いついた辺りから甲府は可変の形を変えてボール保持を行っていく。
中盤に上がった山本を中心にボールを動かし、投入された鳥海がボールを引き出すことで山口を押し込んでいく。
74分には山口が2人を交代する。
島屋と田中に代えて草野と神垣を投入する。
試合後の神垣陸選手のコメントより。
『ボールを落ち着かせるというところと、守備の部分は言われていました。同点の状態だったので、何か決定的な仕事をできたらという気持ちで試合に入りました。』
78分に山口がまたもCKからチャンスを作る。
池上のキックから渡部が合わせ、最後は高井が合わせる。
決定的なチャンスを作るも決めきれず。
直後に甲府にもチャンス。
右サイドから三平のクロスに中村がシュートを放つが枠外へと外れてしまう。
すると今度は山口にチャンスが来ると勝ち越しに成功する。
岡西のミスにも見えるが、濡れたピッチを活かし直前でバウンドさせるシュートを放った石川のシュートを褒めるべきである。
また、こぼれ球にきちんと詰めていた神垣の判断も見事であった。
試合後の神垣陸選手のコメントより。
『良い形で前線に入ることができて、石川選手がボールを持った時にシュートを打つだろうというイメージがあったので、ゴール前に入っていったらボールがこぼれてきたので押し込めて良かったなと思います。』
『やっとチームに少し貢献できたという実感があったので、嬉しかったです。』
失点前から交代を用意していたが、このタイミングで2人投入する。
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『2失点目の前のところであと一歩早く交代することが出来ていれば。そこが悔やまれます。あと5分早くアタックの選手を入れれば、流れを変えられたかなと。私の責任です。』
先制点直後と同じようにまたもすぐに甲府が追いつく。
リラが規制を掛けボールを奪うと鳥海がドリブルで相手陣に侵入していく。
山口DFを引きつけると泉澤へラストパスを送ると泉澤は左足を振り抜き、甲府が同点に追いつく。
試合後の泉澤仁選手のコメントより。
『(鳥海)芳樹から良いボールが来て、相手の股が開いていることが見えてそこに思い切り打ったら入りました。』
試合後の神垣陸選手のコメントより。
『2失点目の原因は自分にあり、あそこでは絶対にミスをしてはいけない場面でした。自分の経験のなさ、軽さが出てしまって、チームに迷惑をかけてしまったという思いです。』
追いつかれた山口は88分に佐藤に代えて小松を投入する。
追いついた甲府は勢いを持ち、逆転を目指していく。
94分には野津田のパスに抜け出したリラがGKが飛び出して空いていたゴールを狙うも枠を捉えられず。
前回のホームゲーム新潟戦のように終盤に追いつき、パワーを持って逆転を目指すが得点は取れず引き分けに終わった。
試合後の中村亮太朗選手のコメントより。
『感じたことを受け止めて、修正しないといけない。反省して次に課さないといけない。』
試合後の泉澤仁選手のコメントより。
『最後の質、クロスやシュートの質を上げていかないといけない。』
ゴール前の質を高めていかないと勝ち切ることはできない。
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『今日を含めた5試合で勝ち点15、最低勝ち点13ということは、選手にも話しています。5試合終わったときにどうなっているか、次からの残り4試合を勝つとすれば目標とした最低限の勝ち点は取れますので、1試合目を引き分けたからと言って下を向くこと無く、勝ち点を重ねていくことが大事だと思います。悲観せずに5試合終わったところで話しましょうというのが私の意見です。』
勝ち続けなくては上位には離される一方となる。
前半の探り合いとは一転して点の取り合いとなった。
流れも行ったり来たりする展開となり、面白みのある試合となったが欲しかった勝ち点は得られなかった。
中村のコメントにあるように反省点を次に活かし、伊藤監督のコメントにあるように中断までの試合を勝ち続けたい。
4.MOM
佐藤謙介
目立った活躍は見せなかったかもしれないが、ほぼミスなくプレーし攻守の繋ぎ役として機能した。
甲府の前からのプレスをいなすように縦パスを通し、攻撃の起点となり続けた。
5.あとがき
雨中での観戦は特に勝ちたいものである。
そうでなくても勝たなくてはいけない一戦であった。
ピッチ内からも勝たないと意味がないという声も出ていた。
2度リードを許しながら追いついたことは評価すべきであるが、勝ち点1では足りない。
これにより順位は6位に転落し、昇格圏との差も10に開いてしまった。
まだ半分あると言いながらも昨年も似たような状況にあった。
伊藤監督のコメントにあるように5試合で勝ち点13を積み上げると言っているように勝ち続けるしかない。
山口は渡邉監督1年目ながら完成度が増してきた。
最後の質はまだ改善の余地はあるが、ここから勝ち点を積んでいく可能性があるチームであろう。
今後楽しみなチームである。
J2はどこのチームも強い。
中断までの4試合全勝といきたいが、簡単ではない。
前節や今節のようなアクシデントも起こるかもしれないが、乗り越えて勝ち点3を掴んでいくことが成長のためには必要となる。
一戦一戦積み上げていきたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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