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J2第19節 レノファ山口FC戦 プレビュー

前節磐田に敗れ上位との3連戦は1勝もできなかった。
勝ちなしを3試合で止めたい一戦は得意のホームに戻っての山口戦となる。

1.対戦成績

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2018年に初めて対戦して以降、6度の対戦を経てきた。
甲府の3勝2分1敗と通算の対戦成績では優位に立っている。

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だが、ホームでの対戦となると1度も勝てていない。
アウェイでは3戦全勝なのに対して対照的な結果となっている。

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全6度の対戦はいずれも伊藤監督就任後の対戦となっている。

2.前節

甲府

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7戦負けなし同士の一戦はホームの磐田が数的優位を活かし勝ちきった。
試合内容はレビューをご覧ください。

山口

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山口は前節からスタメンを4人変更。
石川、新保、浮田、高井に代えて楠本、佐藤、澤井、梅木を起用した。
立ち上がりから山形が山口ゴールに迫っていく展開となる。
5分には山形がゴールネットを揺らすもオフサイドとなり、ノーゴールの判定となる。
13分には山口が前からのプレスで決定機を作る。
野田から梅木がボールを奪うとGKと一対一となるが、シュートは枠を外れてしまう。
15分にも山形がネットを揺らすが、またもオフサイドとなる。
山形がゴール前に迫る形は変わらず多いが、山口の前からのハイプレスが徐々に機能し始める。
山口は左右非対称の形で守備ブロックを形成し、山形の攻撃に対応していく。
左サイドは澤井が高い位置を取り、直線的にプレスを掛けるのに対し右サイドは川井がDFラインまで下がり中盤の田中が内から出ていく形で守る。
対して山形は山口の右サイドの守備を逆手に取り、山田拓巳がインサイドに入り外に山田康太が流れ入れ替わることで山口のプレスにハマらないような立ち位置を取る。
31分にはその山口の右サイドを両山田で崩して山形が先制する。
インサイドにポジションを取った山田拓巳からのラストパスに外を回った山田康太が背後へ抜け出し、冷静にゴールに流し込む。
このまま山形がリードして試合は折り返す。
後半開始から山口が神垣に代えて小松を投入する。
山形は山田康太を中心にゴールに迫っていくが、得点には繋がらない。
共にビルドアップを丁寧に行い、パスを繋ぎ試合を進めていく。
60分にはGKの藤嶋が後半立ち上がりの負傷により交代となる。
代わってビクトルが投入される。
67分に山口は澤井と梅木に代えて石川と高井を、山形は林と中原に代えて木戸と加藤を投入する。
直後に投入されたばかりの加藤が追加点を挙げる。
山口の前からのプレスを剥がすと背後へ抜け出た加藤がGKとの一対一を制す。
追いかける山口は76分に楠本と田中に代えて浮田と佐藤健太郎を投入する。
84分に山形は國分と南に代えてルリーニャと岡崎を投入する。
ボールを動かしながら攻め手を探る山口だが、山形ゴール前まで迫れない。
試合はこのまま山形が2点リードを守り勝ちきった。

3.今季成績

両チーム比較

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8勝6分4敗で5位の甲府と5勝5分8敗で16位の山口の一戦となる。
甲府はホームを得意としており、8試合で1度しか負けていない。
一方の山口もホームに比べてアウェイの方が得意としてはいるが失点は多くなっている。

甲府
直近5試合成績

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4試合勝ち無しとなっている。
リーグ戦では京都、新潟、磐田と上位3連戦で1勝も挙げることができなかった。

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直近5試合の成績を見てもらってわかる通り、5試合で奪った得点はわずかに4。
得点が取れないことが勝ちきれない要因となっている。
シュート数や枠内シュート数は試合毎に平均値が下がってきており、30mラインやペナルティエリア侵入回数も増えて来ないことでゴールから遠ざかっている。
思いきり良くゴール前に入っていく、コースが空いたらシュートを打っていく積極性を示したい。

山口
直近5試合成績

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ここ5試合は1勝もできていない。
得点も少ないが、それ以上に失点がかさんでいる。
失点が少ないチームだが、3試合で7失点と現状は守備が勝てない要因となっている。

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ボールを大事に繋ぎ、クロスから得点に迫っていくチームであることがデータからわかる。
また、間接フリーキックが多いということはオフサイドを取っている回数が多い。
間接フリーキックとなる反則は主にオフサイドであり、数が多いということはDFラインの高さが高いことが伺える。

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得点はセットプレーからとクロスからが多くなっている。
特にセットプレーは池上から精度の高いボールが供給されている。
失点はクロスからの失点とそのこぼれ球から多くなっている。

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前半は得点が少なく、失点が多いことがわかる。
守備の堅い甲府との一戦のため、試合の入りを間違えると苦しい試合となってしまう。

4.予想スタメン

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甲府
新井とメンデスが出場停止のため、6試合続いていたスタメンは確実に変更がある。
その2人に加え、野津田、リラも変更を予想。
代わりに山本、小柳、中村、三平の起用を予想した。
経験と落ち着きに加え、チームに新たなパワーを注入してもらいたい。

山口
システムも人選も相手によって変えてくるだけに予想は難しいが、前節から2人の変更と予想。
神垣と楠本に代えて高井と石川を起用すると予想した。
関と渡部の教え子2人はアクシデントがない限り起用するだろう。

5.注目選手

甲府

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山本英臣
新井、メンデスと負けなしを支えた2人が出場停止の今節。
チームの危機に頼りになるのはやはりこの男だろう。
金沢戦で負傷交代して以来9試合ぶりのスタメンと予想したが、守備だけでなく攻撃の舵取り役としての活躍も期待したい。

山口

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渡部博文
渡邉晋監督の目指すサッカーを最も理解している選手だろう。
元々対人守備に特徴があった選手だが、渡邉監督の教えを受けビルドアップの能力が向上した。
状況を的確に見極め、両足から的確なパスを供給し起点となる。
甲府の山本とどちらが効果的な配球ができるのか注目となる。

6.展望

山口の渡邉監督が目指すサッカーは甲府の伊藤監督に近い形である。
「ポジショナルプレー」と呼ばれる原則を元に「位置的」、「数的」、「質的」と3つの優位性を活かし相手を攻略することを狙う。
特に「位置的な優位」へのこだわりは強く、1人で複数人を困らせる立ち位置を取ることを狙う。
その中でキーワードとなるのが「箱」である。

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ライン間に作られる四角形や五角形を渡邉監督は「箱」と呼んでいる。
「箱」にポジションを取り味方と立ち位置が被らないように、適切な立ち位置を全員が探していく。
立ち位置が決まると「箱」からの裏抜けを狙っていく。

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甲府はレーンの移動も頻繁に行うが、山口は基本的には斜めに裏抜けしていくことはあまり狙わない。
レーンの中での裏抜けがメインとなる。
個の能力には依存せず、適切な立ち位置を取りチームの狙いを遂行していく。
得点が増えてこない要因には、先程触れた3つの優位性の「質的」な部分が劣っていると言える。

立ち位置と共にボール支配率がリーグ4位であることが示すようにボール保持にもこだわりを持つ。
立ち位置を整理することは必然的にボールを取られにくくなり、ボール支配率が向上する。
ビルドアップ時にはGKの関も積極的に参加し、前進を図る。

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3バック+GKで後方は4人でスタートする。
甲府の前線3人に対しDFとGKの4人を含めてボールを運ぶ。
中盤も山口の数的優位となっており、ボール保持には優位な状況となっているだけに甲府としてはどのように嵌め込んでプレスを掛けていくのかは注目となる。
山口としては渡邉監督は「切るパス」と呼んでいるが、パスで相手のDFを何人置き去りにできるかがビルドアップに求められている。

後方の「数的優位」を活かし、「切るパス」やボールを運ぶことで前進し、敵陣に侵入することで先程述べた「箱」からの攻略へと繋げていく。
「箱」から深さを取り、甲府のDFラインを押し下げていくが同時にWBが高い位置を取ることで幅を取り相手DFラインを横にも広げることで「箱」を空けるていく。

こちらの場面を見ていただくとわかるが、山口の選手は横並びにならず隣の選手の斜めに立ち菱形を形成している。
最初にボールを受けた選手は相手のブロックの前でボールを受けているが、前方には「箱」が空いていることがわかる。
幅も取れており、前線では動き出しから背後を狙う動きも見られる。
このように立ち位置、動き出しを駆使し相手のライン間や背後を突いてくることが山口の攻撃の特徴となる。

一方でボールを繋いでいくため、ビルドアップのミスから一気にゴール前に迫られるリスクも持っている。

このようにミスからDFラインが晒される形となり、後ろ向きに守る形は得意としていない。

相手がボールを保持する際にも立ち位置を大事にする。
532でブロックを構え、陣形を崩さずプレスを掛けていく。
プレスは相手の中盤のラインを起点にDFラインにボールを下げた際にはハイプレスを仕掛けていく。

こちらの場面は梅木一人の頑張りのように見えるが、周りの選手が連動しパスコースを塞いだことでボールを奪うことに繋がった。
一方でハイプレスを回避されると後方には大きなスペースを与えることとなる。

DFラインも高く設定されているため、連動が遅れると甲府としては一気にチャンスとなる。
秋田、水戸、京都、新潟、磐田との対戦が続いてきたがいずれの相手よりもプレスの強度は劣るだけに山口に負けず、正しい立ち位置を取り、相手を食いつかせるパス回しからプレスを回避したい。

ボールを保持され、自陣に押し込まれると池上が下がり3センターのような形も取る。

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532という形となるとシステムの構造上、アンカー脇のスペースは空く傾向にある。
池上が下がらなければ池上の両脇が空くことからこのエリアを起点にしたい。

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前節山形戦では守備時には左肩上がりの442で構え、山形とミラーゲームのような形を取ったが甲府は前線に5人並ぶ形にもなることから押し込まれた際には5バック気味になると予想している。
「ホール」で前を向きWBの背後を突き、サイドからゴールに迫りたい。
WBの背後を取ることでCBの選手はカバーに出てくるためゴール前は手薄となる。
特に右のCBに予想した石川は本職のCBではないため、石川がクロス対応する展開に持ち込みたい。
そのためには甲府が得意とする泉澤からのクロスではなく、逆サイドからのクロスの本数を増やしたい。

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長谷川が「ホール」に立ち、起点を作り関口が澤井の背後を取ることでヘナンを吊り出したい。
これにより、渡部はニアサイドに意識が向くので渡部の頭を超えるクロスで石川を狙いたい。
甲府の攻撃陣としてはニアサイドに飛び込むことで渡部を引き出したい。
特に三平はニアサイドに飛び込むことも、ニアサイドで合わせることも上手な選手でありヘディングが強い中村がファーサイドに飛び込む形もチャンスとなる。

山口は戦いやすいチームではあるかと思う。
渡邉晋監督になり1年目のシーズンでもあり、まだ完成度は高くはない。
また、一人で戦況を変えられる特別な個性を持った選手もいないため丁寧に試合を進めていけば勝利に近づくのではないか。
だが、前節のような安易なミスを犯してしまったり、天皇杯のような雰囲気では勝つことはできない、
今一度アラート感を高め、試合に臨み勝ちきる一戦としたい。

7.あとがき

上位3連戦で1勝もできず差を縮めることができなかった。
上位陣も勝ち点を落とすことが多くなってきており、差は大きくは変わっていないが一気に縮めるチャンスを逃したことは痛かった。
だが、終わってしまったことは取り戻せない。
できることは今節からもう一度リスタートすることしかない。
まだリーグ戦も折り返してはいないだけに巻き返す時間はある。
一戦一戦大事に戦い勝って勝ち点を積み上げていきたい。

山口の渡邊晋監督は甲府OBとなる。
1997年から4シーズン甲府でプレーした。
JFLからJ2への参入も経験している。
紹介の際には温かく迎えたい。
また、渡邉晋監督のサッカーを知るには以下の書籍がオススメです。

サッカーの勉強にもなるため、読んで見て損はないかと思います。

こちらは紹介した書籍の概要になりますが、参考になるのでよければお読みください。

甲府にとっては再スタートの一戦。
ここから勝ちを積み上げていきましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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