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J2第32節 モンテディオ山形戦 レビュー

久しぶりに快晴で迎えるホームゲーム。
負けられない一戦となる。

1.スタメン

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甲府
前節からスタメンを4人変更。
メンデスが2試合ぶり、中村は5試合ぶり、関口は7試合ぶり、三平は13試合ぶりのスタメンとなった。
鳥海が6試合ぶりにベンチ入りした。

山形
前節と同じスタメンとなった。
堀米はベンチ入りせず、今年も小瀬に帰ってくることはできなかった。

2.チェス

コイントスで山形がエンドを入れ換えて始まった一戦。
共にアグレッシブに試合に入るが、入りは山形のペースとなる。

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山形はボール保持の際、433のような形で中盤が立ち位置を変えながらボールを動かしていく。
対して、甲府は三平を先頭に前からプレスを掛け対応していく。
山形のCBに対してはボランチが出ていくことで同数で嵌め込む形を取る。
前は嵌まる形となるが、中盤では山田康太や藤田が浮く形も出てきてしまう。

最初のチャンスは山形。

右サイドでボールを失うと山形がカウンターを仕掛ける。
樺山からヴィニシウスへと繋ぎ、逆サイドの中原へとサイドチェンジのパスを送る。
中原が中央へドリブルし、甲府の選手を引き付けると山田康太へラストパス。
落ち着いてDFを交わし、シュートを放つがポストに阻まれる。
二度切り替えしたことで甲府のDFが戻りきれる時間を与えてしまった。

一方の甲府はいつもと変わらず新井が中盤に上がる形で可変を行う。

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甲府の狙いは山形のSBの裏。
山形の右サイドでは中原を吊り出すことで連鎖する形で半田も吊り出し、背後を突いていく。
一方の左サイドに対しては樺山の戻りが遅れることが多いため、高い位置を取った関口へのサイドチェンジから山田拓巳を吊り出すことを狙う。
対して山形は前線から激しくプレスには出て行かず、442の形でブロックを形成し甲府のビルドアップに対し牽制をかける。

甲府にとって最初のチャンスは16分。

DFラインでビルドアップを行っていた甲府に対し、山形は442のブロックを構え牽制をかける。
それに対し、新井が右サイドの高い位置をとった関口へロングパスを送る。
セカンドボールを拾った中村が三平とのワンツーから逆サイドの宮崎へパスを送るとカットインからミドルシュートでゴールに迫る。
ライン間が空く傾向にある山形の特徴を活かした形でチャンスを作った。

押し込む展開を作ると共に立ち位置は変化する。
山形は左右で違った配置を取ることとなる。

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右サイドでは中原が幅を取り半田がインサイドにポジションを取るのに対し、左サイドでは樺山がインサイドに入るのに合わせ山田拓巳が外を回っていく。

一方の甲府もビルドアップ時とは立ち位置は変化する。

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左サイドでは荒木が高い位置を取ることで宮崎が中央に入っていき、野津田も高い位置を取り攻撃に厚みをもたらす。
共に似たような配置を取り、ゴール前に圧力を掛けていく。

31分に山形に決定機が訪れる。

甲府のクサビのパスが繋がらずボールを奪った山形は南からパスを受けた藤田が山田康太へクサビのパスを通す。
このパスを野津田が触るとコースが変わり、甲府のDFの背後へと渡る。
いち早く反応したヴィニシウスが抜け出し河田と一対一となるが、シュートは枠の外へ。
山形としては決めなくてはいけない場面であった。
また、甲府としては可変を行うデメリットが出た場面でもある。
新井が中盤に上がることで空いたスペースを突かれた形であり、ハイラインを敷く中でメンデスが山田康太を潰しに出ていったこともありできたスペースであった。
事故的な形にも見えるがこのようなリスクも孕んだ戦い方をしている。
一方でボールを失ったが攻撃の形は悪くなかった。
浦上がボールを運ぶことで樺山を吊り出し、関口を使う。
すると山田拓巳が関口に食いつくことで空けたスペースを使うためにダイレクトで中央へパスを送ったが、中村と三平が横並びとなっておりポジションが取れていなかった。
先程の宮崎のシュートシーンのように段差を作れていれば、同じような形は作れていただろう。

ボールを持つ時間は増えだした甲府だが、ゴール前での質を欠き大きなチャンスは作れなかったが、43分になり決定機を作る。

荒木からのクロスに逆サイドの関口が折り返し、中村がシュートを放つがビクトルが防ぐ。
甲府の崩しとビクトルの反応共に見事なプレーであったが、この場面も樺山が戻りきれていなかった。
甲府の繋ぎにプレスは掛けに出ていったが、そのプレーも中途半端であっただけに関口に付いていくかプレスに行ききるかハッキリとしたプレーが必要であった。

ヨーロッパではサッカーはチェスに例えられることもある。
日本では将棋に例えた方がわかりやすいかもしれない。
相手を引き出し、動かすことで空けたスペースを攻略していく。
甲府はサイドで食いつかせ空けたSB裏、山形は前からプレスに出てくるなら空いた中盤のスペースから前進と共に配置や立ち位置の妙で相手との駆け引きが多く見られた。
共にスコアは動かなかったが攻守の切り替えが速く、チェスや将棋のように盤面を動かし、崩すことを狙った見応えのある前半となった。

3.若手の躍動

見応えのある前半ではあったが、オープンな展開が多くあったことは山形のペースで進んだ試合であったと言える。
そのこともあり、ハーフタイムには多くの指示が伊藤監督から出されたようだ。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『4-3-3のウィングにボールをつけてくることに対して強く行くこと、あとはセカンドボールを拾うこと、プレッシャーに行った背中やサイドを突破された時のクロスで逆サイドのボランチが中央に入れていなかったところがあったので、そこを修正しました。山田康太選手や藤田選手、南選手など途中で浮き始めた選手にセンターバックがどこまで行くのか、センターバックが行ける範囲内でボランチの前まで行くのであれば流してもいいし、背中に行くのであれば掴み方をしっかりすること、これらを指示しました。ボールを奪った瞬間の逆の空いているホールに一発でロングボールを入れるのでは無くて、我々のゾーンでしっかり繋ぎながら逆サイドにしっかりチェンジサイドする。チェンジサイドもボランチを使って早くしっかりと展開すること。あとはライン間でのプレーで、前半に頂点のさんペー(三平)、(中村)亮太朗、(宮崎)純真が4バックの間に立ち過ぎており1列に並んでいることが多かったので、亮太朗や(野津田)岳人を浮かせるポジションに立たせて、2列目からサイドバックの裏を取っていこうという話もしました。』

しかし、最初にチャンスを作ったのは山形。
左サイドから樺山がクロスを入れるとヴィニシウスが合わせるがゴールの上に外れる。

すると直後に甲府が試合を動かす。

河田のゴールキックから始まった場面。
野田が跳ね返し、山田康太がセカンドボールを拾う。
浮いた山田康太や藤田、南に誰が行くのかという指示を出していたがこの場面は山田陸が戻り、ボールを奪い切る。
そこから左サイドの荒木へ展開し、前半から狙っていたSB裏へ走り出した宮崎を使う。
カットインから放ったシュートは相手にも当たり、ゴールに吸い込まれた。

試合後の宮崎純真選手のコメントより。

『形はイメージどおり。相手に当たりましたが、先制点を良い時間帯に取れたと思います。』
『山田 陸選手がボールを奪って速攻のイメージ。荒木 翔選手に入って、空いているところが見えた。カットインからのイメージどおりでした。』

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『もともと力がある選手で今年は怪我でチャンスが無かったわけですが、こ こに来てフィットしてきました。京都戦で1点取れたことも成長のスピードを加速させていると思います。サイド突破や逆サイドから入ってくる動きなど、積極性やシュートへの意欲、ゴールに向かう姿勢が京都戦から出てきたなと感じます。トレーニングでも落ち着いてプレー出来ています。(長谷川)元希や(鳥海)芳樹などライバルもいるので、切磋琢磨してその中で勝ち取っていくことがさらに成長のスピードを上げていくのかなと思います。』

覚醒一歩手前といった成長を見せている宮崎とチームとしての狙いが嵌った見事な得点となった。

先制をしたこともあり、甲府はプレスを掛ける位置を下げ541でブロックを築き守りを固める戦いへと移行していく。
顕著だったのはハッキリとしたプレーが増えたこと。
前節、押し込まれる中でクリアが短く二次攻撃、三次攻撃と受けていくことで最後耐えられずに失点してしまったが割り切るところは割り切ってクリアすることで連続攻撃を受ける回数が減り、押し込まれる時間を減らすこととなった。

試合後の半田陸選手のコメントより。

『今日甲府さんが、いつもですが5バックだったのもありますし、前半からだいぶカウンターをお互いやりあう時間帯もあったので、そこは少し上手く時間を使いながらという考えでした。』

甲府がブロックを下げたこと、前半からオープンな展開で疲労度も溜まりやすい状況であったこともあり山形は時間を掛けた攻撃が増えていく。

60分に甲府が最初の交代を行う。
三平に代えて鳥海を投入する。
宮崎を頂点に鳥海が左のシャドーに入った。

64分に個人技で山形がチャンスを作る。

前半は関口の対応に苦労し、樺山のウィークポイントが多く出ていたがこの場面はストロングポイントが出た。
一対一での仕掛けはJ1でも通用するレベルにあるだけにこのような場面を多く作っていきたい。

この直後に甲府は宮崎と鳥海のポジションを入れ替える。

66分に山形が最初の交代。
中原に代えてマルティノスを投入する。

飲水タイム明けの71分に両チーム交代を行う。
甲府は山田に代えて野澤、山形はヴィニシウスに代えて林を投入する。
今節はヴィニシウスの日では無かった。

76分には甲府がスーパーゴールで山形を突き放す。

自陣から放ったシュートにビクトルの手が届かずゴールに吸い込まれた。
シュートがすごいことは誰の目にも明らかだが、その直前のターンも見逃せない。
ボールを受けた後のターンで相手を2人置き去りにしている。
ターンが上手くできたことで冷静にGKの位置を見極める時間とスペースができた。
また、この場面以外でもターンしてファールを貰う場面がいくつかあった。

試合後の鳥海芳樹選手のコメントより。

『途中出場で入ったばかりで、前を向いたときにはシュートを打とうと思っていました。力まずに打てました。ルックアップしたときにGKが出ているのが分かって、味方の上がりもなくて、ボールを失うくらいならシュートを打とうと思いました。』

追いかけたい山形は78分に途中出場の選手で決定機を作る。

ボールを奪った山田康太から甲府のDFラインの背後へパスが出る。
抜け出した林が切り返し、逆サイドを上がってきたマルティノスへとパスを送ると冷静に切り返し河田を倒しシュートを放つが荒木とメンデスが身体を張り、シュートをブロックする。

直後に山形が2人の交代を行う。
樺山と山田拓巳に代えて木戸と吉田を投入する。

ボールを握りながら攻め手を探る山形だが、ミスも増え始め効果的な攻撃が増えていかない。
一方の甲府はカウンターから追加点を狙っていく。

82分には甲府が最後の交代を行う。
荒木と宮崎に代えて須貝と山本を投入する。

甲府はボールを動かし、時間を使っていく。
体力的な問題もあり、山形は連動してボールを奪いに行けず甲府が試合をコントロールする展開となる。

アディショナルタイムには甲府も途中出場の選手がチャンスを作る。

野津田のパスに抜け出した須貝がカットインからシュートを放つが、惜しくも枠を捉えられず。

後半は先手を取れたこともあったが、甲府が試合をコントロールし勝ちきった試合となった。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『現在昇格圏内と勝ち点差10、残り10試合でこの差は本当にギリギリだと思います。1戦1戦勝ち点3を積み重ねていかなければいけませんし、選手たちは昇格を信じて毎日良いトレーニングをしているので、そのためにも毎試合勝ち点3を積み上げて、1つになって戦っていかなければならないと思います。大事なゲームだったので、ここで勝ち点3を取れたことは良かったと思います。』

できることは一戦一戦勝ちを重ねていくことだけである。
可能性は限りなく少ないが、ゼロではない。

試合後のピーター クラモフスキー監督のコメントより。

『難しい結果だと思っています。自分たちのやろうとしている戦い方、自分たちのやろうとしている要素、パフォーマンスの部分は、良く出せていた部分があったと思います。』

試合後の半田陸選手のコメントより。

『前半は僕たちにチャンスが何本かあって、それを一本でも決めていればもっと僕らのゲームにすることが出来たと思います。しかし、それを決められなかったらこういうゲームになります。僕らがボールを持っている時でも、カウンターから何回も相手にチャンスを作られているシーンが、今日だけでなくずっと多いので、そこをファウルでも止めなきゃいけないし、そういう少しずる賢いプレーもしなければ、難しいサッカーをしていると思うので、そういうところを一人一人がやっていければと思いました。』

試合後の南秀仁選手のコメントより。

『前半に決定機が何本かあって、それを決めきれずに失点してしまって、試合をひっくり返せないという負け方を改善できていなかったのが、今日の試合も出てしまったのかなと思います。』

山田、ヴィニシウスどちらかの決定機が決まっていれば山形の試合となっていたかもしれない。
山形のパフォーマンスは悪くなかっただけに決めるべきところを決めていればという試合となってしまった。

宮崎と鳥海が得点を挙げ、関口がサイドで中村と山田が中央で豊富な運動量でチームに活力を与えた。
若手の活躍が勝ち点3をもたらした。

4.MOM

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新井涼平
若手の躍動が見られた試合であったが、新井の存在無くして今節の勝利は無かっただろう。
前半は強気なライン設定でDFラインを押し上げ、多くのオフサイドを取り山形の攻撃陣を寸断した。
後半は先制したこともあり、ブロックを下げ守る時間を増やしゴール前でクリアやシュートブロックでゴールを守りきった。

5.あとがき

前半は危ない場面は作られたものの終わってみれば完勝と言って良いだろう。
前節の悔しさを晴らす勝利となった。
見応えのある試合内容に結果が伴う勝利。
京都戦以降の戦い方でやっとチームのベースができたように感じる。
あとは毎試合結果にこだわり、全て出しきった先に勝ち点3を重ねていくしかない。

山形にとっては納得できない結果であっただろう。
決定機が決まっていれば結果は逆だった可能性は高い。
昇格に関して言えば厳しい結果といえるが、シーズン当初の状況を考えるとここまでの巻き返しは見事である。
サッカーの内容も面白く、残り試合も楽しみなチームである。

前回は長々と書いてしまったため、今回は短めにしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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