見出し画像

J2第13節 東京ヴェルディ戦 レビュー

前節最後の最後で追いつかれ、勝ち点2を失ったが改めて仕切り直しとしたい一戦。
上を追いかけていくためには勝ち続けるしかない中、迎える相手は東京ヴェルディ。
伊藤監督にとって国士舘大学の先輩であるヴェルディの永井監督に初めて勝利をしたい。

1.スタメン

画像1

甲府
前節から1人変更。
中村に代わり野津田がボランチに入った。
ベンチ入りメンバー含めた18人は前節と同じであり、いよいよメンバーが固まってきたか。

東京V
前節から3人変更。
福村、山本、パライバに代わって山口、梶川、山下を起用。
前節スタメンであった3人はいずれもベンチからも外れており、アクシデントか?
ベンチには昨年甲府相手に2得点決めた井出、高校1年生の橋本が入った。

2. ポゼッション

共に可変を持ち味とするチームであり、攻守で立ち位置が変わる。

画像2

甲府のボール保持時には433気味に構える形となり、ヴェルディは442で構えて守る形を取る。
甲府はヴェルディのプレスの強度が高くないことから中盤のエリアまでは容易にボールを運ぶことができた。

画像3

ヴェルディのボール保持時には山下と山口で幅を取り、後方は3人でビルドアップするか若狭がサイドに張った時には逆サイドに梶川が降りてきて4人でビルドアップしていく。
甲府も前からプレスが掛からないため、加藤に自由を許し前線へ裏を狙うロングボールやサイドを変えるボールを蹴られてしまう。

画像6

試合後の加藤弘堅選手のコメントより。

『個人的に相手をサイドに揺さぶると、どうしても中盤がスライドしなければいけなかったり、ディフェンスラインがスライドしなければいけないというところで、大体5~10メートルいかないぐらいの範囲でラインが下がるので、その中で押し込んでよりテンポ良く、自分たちの形でプレーできればという感覚でプレーしています。』

狙いとしてやっていたことだが、サッカーは難しいもので背後を狙い過ぎてしまうと本来の武器である中盤でのパスワークが影を潜めてしまう。

試合後の永井秀樹監督のコメントより。

『前半は我々のプランにあった、特に背後を狙うという部分に関してまずまずはやれたかなとは思います。ただ、非常に難しいところではありますが、少し背後への意識を強く要求し過ぎてしまうと、中盤で我々が本来支配したいところが、なくなってしまうという反省は感じています。』

甲府のプレス強度が高くはないため、甲府と同じように中盤まではボールを運べただろうが中長距離のパスで前線に入れていく形が増える。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前半の入りから連戦の疲れで、前線へのプレッシャーが少し弱かったと思います。その中でも「ボールを繋ぐところ」「相手のプレッシャーの背中を取りながら攻撃に出れたところ」「ホールでしっかり前向きが作れたこと」、これらはすごく良かったなと思います。』

逆に甲府は前線の足が重く、DFラインの背後への飛び出しは少ない変わりにライン間やFW、中盤のラインの背後でボールを受けられる形が多くなる。

前半を通して見ると、前線からのプレスが弱かった甲府だが最初のチャンスは連動したプレスから作る。

ヴェルディのバックパスに対し、長谷川が前線にプレスに出ていくことで捕まえる人が明確となり連動しボールを奪いきる。
野津田のミドルはDFに、泉澤のシュートは柴崎に防がれたが前線からのプレスが機能してチャンスを作る。

20分前後からヴェルディの左サイドバック山口が存在感を示していく。

試合後の山口竜弥選手のコメントより。

『待ちに待ったチャンスが巡ってきて、自分の中ではこのチャンスを掴めなければ、少なくとも今年はチャンスがないというぐらいの気持ちで、これが自分のサッカー人生の分岐点になると思って臨みました。』

関口に対し、フィジカルで勝り強引な突破からボールを運んでいく。
37分にはその山口からヴェルディに決定機。

佐藤優平からロングボールを受けた左サイド山口が関口を交わし、カットイン。
石浦へ横パスを入れ、シュートを放つもDFに当たる。
決定的な場面だったが、山口の力強い突破からチャンスを作った。

試合後の山口達弥選手のコメントより。

『その前に縦へ一本突破してクロスを上げるシーンがあったので、そこで相手が完全に縦を切ってくるという感覚があったので、そこで中にワンタッチ入れてグイっと入れるところは自分の長所だと思っているので、突破に関してはそういうことを意識していました。クロスの部分ではどうしても相手に高さがあり、クロスに対して強い選手が揃っているので、そこは2列目のところから飛び出してくる選手への対応の方が、相手は苦手としているという自分の中での考えがあったので、あそこは自分の狙いとタイガ(石浦)の狙いが共通認識として表われた良いシーンだったと思います。』
『前半は相手に全く分析されていなかったというところもあって、自分の得意な突破などの部分で違いを見せられたと思っています。』

試合後の永井秀樹監督のコメントより。

『彼は日ごろの取り組みのところからよくやってくれていて、我々がさらにバージョンアップしていく中で、彼の推進力やストロングを今日は生かしたいという意図で起用しました。』

共に連戦の影響もあり、プレスの強度は高くは無かった。
その中で足元でのボール回し中心に攻撃を仕掛けていく甲府に対し、加藤からの大きな展開でゴールに迫ろうとするヴェルディ。
ボール保持に特徴があるヴェルディに対し、可変スタイルのきっかけとなった昨年の最初の対戦では56%のボール支配と130本近いパス数をつけられたが前半は五分五分の支配率とパス数では上回る結果となった。
だが、サッカーはパスを繋いだ方が勝つ競技ではない。
成長を感じさせる展開となったが、ゴールに迫る迫力は欠けていた。

3.活性化

その欠けていた迫力を推進力で補う交代に出る。
後半開始から甲府は長谷川とリラに代えて鳥海と三平を投入する。
動きの少なかった前線を活性化させる交代なる。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『後半から特徴が違う2人の選手を入れるというのはプランの中にありました。まずはリラでしっかりと起点を作り、強さとクロスに対してのプレーで前半入る。その為にはホールで受けられる元希(長谷川)が「右サイドで起点を作りながらクロス」というプレーだったり、マサ(関口)とコンビネーションを作ってというところも考えていました。後半のパワーが入るところは前線の3人の選手の中で疲れている選手、そういうところを考え、後半のプランをさんペー(三平)の「運動量」と「裏への抜け出し」。プラスして「今までホールで受けていた選手から、抜け出す選手で相手に戸惑いを与える」こと。』
『試合前には「後半から行くぞ」という話もしていましたし、「試合を2人で決めてきてほしい」という話もしました。あとはプレーの戦術的なところだったり、「連動性を持って2度追い3度追いのプレッシャーのスイッチになってもらいたい。」あとは「ボールを引き出すことと、ライン間でボールを受けたりしてしっかり起点になること。」そして「裏への抜け出し」。これらをさんぺー(三平)に託したところです。芳樹(鳥海)には、このゲームの中で1つやってもらいたいこととして「サイドバック裏のスペースに必ずランニングしてほしい。」ということをあげ、ここで起点を作ってほしいということを彼に託しました。』

いきなり交代が成功する。

荒木からのロングスローをメンデスが後ろに反らし、鳥海がシュートを放つ。
このシュートを三平がコースを変え、甲府が先制する。
スローインとなったきっかけは鳥海の背後への飛び出しから。
クロスを相手が触り、逆サイドからのスローインとなった。
前半欠けていた飛び出しや推進力を示したことが得点に繋がった。

試合後の三平和司選手のコメントより。

『適当にあそこにいたら決められて良かった(笑)。』
『母親にささげたいです。こういうときってけっこう点を取ったりするんですよ。母親も僕の奥さんも母親ですが、母親はすごいと思います。全国のお母さんに「ありがとう」と伝えたいです。』

試合後の鳥海芳樹選手のコメントより。

『シュートがうまく当たらなかったですが、三平さんが良いところにいてくれてアシストをつけてくれて良かった。』

49分には背後へ抜け出した三平がGKと一対一を迎えるも決めきれない。
前半とは違い前線に動きが出てきたことで甲府がチャンスを作っていく。

先制し、勢いに乗り押し込んでいく甲府は53分にも大きなチャンスを作る。

スローインを受けた野津田の左足が炸裂。
この後も野津田の左足からセットプレーを中心にゴールに迫っていく。

59分に甲府にまたも途中交代の選手から追加点が生まれる。

ドリブラー二人のコンビネーションからの鮮やかな得点だが、この場面も背後への飛び出しがきっかけ。
三平がサイドでメンデスからの縦パスを引き出したことから始まった攻撃。
三平と鳥海を起用した意図をピッチ上の選手も共有できていることが2得点を生んだ。

試合後の鳥海芳樹選手のコメントより。

『仁くんからパスをもらってシュートを打とうとしたけれど、仁くんがフリーだったのが見えてワンツーができると思ってやりました。ファーストタッチが思ったよりも足元に入ったので、アウトサイドで押し込みました。』

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『長いプレー時間を彼に託せば、ある程度出来るとは思っていました。スタートから出場して点を決め切れなかった試合もありましたが、やっとここできれいに決めることが出来て自信にもなると思います。いつも落ち着いて全力でプレーしてくれている選手なので、得点シーンでも緊張せずに決めることが出来て良かったなと思います。これからもっともっと期待したいと思います。』

嬉しいプロ初ゴールだが、まだまだできる選手であり得点を自信に今後の活躍も期待したい。

試合後の山口達弥選手のコメントより。

『特に2失点目のシーンに関しては、あそこで相手の右ウイングバックの選手が気になってしまい、中への絞りが遅れた結果、そのスペースを使われてしまった感は否めないので、先ほど映像を振り返った際にも自分の絞り、ポジショニングの甘さが顕著に出たシーンだったと思います。』

山口のコメントの通り、中へ絞れていればここまで綺麗にやられることは無かったのではないか。
だが、前半から関口が高い位置を取り山口に意識させるプレーを見せていたからこそ絞りが甘くなった。
高い位置で幅を取ることの大切さがこの場面に現れた。

65分にも甲府に決定機。

泉澤、野津田と繋ぐ中で山田が後方からペナルティエリア内に飛び出していきチャンスを作る。
前線に動きが出たことが全体に前への勢いを加えた。
関口のシュートは当たりが弱く、ゴールまでは届かなかったがこの場面でもゴール前に顔を出している。

2点を追うヴェルディは石浦と梶川に代えて端戸と馬場を投入する。
これにより3バックとなり、端戸は佐藤凌我と2トップを組み、馬場はCBに入り加藤がボランチに上がった。

画像5

試合後の加藤弘堅選手のコメントより。

『チーム全体という部分では僕が中盤に入るシステムは準備していますし、それが勝っていた状況でディフェンスラインに人を入れるのか、負けていて前の選手が疲労しているから自分が一列前に上がるのか、そういうところは永井さんの判断だと思いますが、中盤で自分がプレーする意図やプランは、僕自身トレーニングの中からやっていました。』

直後に飲水タイムに入るが、このタイミングで甲府も動く。
泉澤に代えてバイヤを投入する。
この交代からヴェルディに流れが傾きだす。
守備での立ち位置や攻撃での周りとの連携はまだまだであり、時間はかかりそうな印象はある。
特に守備面は野津田がしきりに指示を出す姿が見られた。

81分にヴェルディは若狭と佐藤優平に代えて安在と井出を投入。

試合後の永井秀樹監督のコメントより。

『アンカズ(安在)に関しては我々の1レーンをアップダウンして完全に支配すること。そして、ハーフラインを越えた後には彼のクロスやシュートというものを期待しました。あとはセットプレーの場面で彼の左足での一発やアシストを期待しての起用でした。よくやってくれたと思います。 イデハル(井出)に関しては多少の時間制限がまだある中での起用になりましたが、やはり中盤のスペースを見つける彼の能力、そこからスクエアゾーンを支配していく力、そして自分で運んでいけるハルの力、攻撃力を期待しての起用でした。』

88分にはヴェルディは小池に代えて松橋を投入する。

90分にヴェルディがFKからゴールに迫る。

キッカーは途中出場の安在。
壁を超えたキックはゴールを捉えるも岡西が防ぐ。
空中戦や判断に迷いを見せる岡西だが、シュートストップの能力の高さを見せた。

アディショナルタイムにはCKをヴェルディに与える。
前節、3節前の琉球戦と失点を重ねていたが今節は難を逃れた。
続けて終盤にセットプレーを与えていることは改善しなくてはならないが、防げたことは成功体験となり自信にも繋がるだろう。

試合はこのまま終わり、2-0で甲府の完勝となった。
交代選手でパワーが落ちてしまう傾向にあった甲府だが、今節は交代で入った2人が試合を決めた。
選手交代は難しいものであり、交代で入る選手もいきなり試合に入るのは大変である。
今節はハーフタイムでの交代が見事に当たったが、同じ交代でも別のタイミングでは上手くいかなかったかもしれない。
伊藤監督の決断や思いきりがチームを活性化させ、勝利を引き寄せた。

4.MOM

画像6

鳥海芳樹
1ゴール1アシストの結果もだが、チームにエネルギーをもたらした働きは見事であった。
背後への飛び出しや前からのプレスでチームを活性化し、勝ち点3をもたらした。
得意のドリブルでも見せ場を作り、結果が出たことで次節以降にも期待が持てる。
関口、長谷川に続きポジションを奪いたい。

5.あとがき

一歩進んで、一歩下がるような展開となっているが今節の勝利を次に繋げたい。
可変、ポゼッションと似た傾向のチームであるヴェルディ相手に四つに組み完勝を収めた。
同じ土俵に立ってくれる相手に強さは発揮できることを証明した。
連戦でメンバーを固定した影響もあり、前半は動きが重かったが、交代選手が機能しない試合が続いていた中で、伊藤監督の早い決断が功を奏した。

ヴェルディは主力の欠場もあり、本来のサッカーはできなかった印象があった。
開幕戦で完封して以降、12試合連続で失点が続くこととなった。
ここから巻き返すためにも守備の改善は急務である。

5月に入り、良い試合が続いている。
山形戦では最後に追いつかれたものの、巻き返しの下地はできたのではないか。
あとは大きな連勝に繋げていく爆発力が欲しいところ。
次節は難敵秋田だが、好調のホームで久しぶりの連勝としたい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?