J2第29節 ザスパクサツ群馬戦 プレビュー
前節首位京都相手に完勝。
中断明け初勝利を挙げ、迎える今節はアウェイでの群馬戦となる。
1.前回対戦
4連勝で中断期間に入ったが、そのスタートとなった一戦。
今シーズン最多の6得点を挙げ、快勝を収めた。
試合内容は以下のレビューをご覧ください。
2.対戦成績
過去17度の対戦で甲府が11勝と優位に進めている。
アウェイで見ても甲府の5勝1分2敗と勝ち越している。
7勝3敗と甲府が大きく勝ち越している。
だが、アウェイでは3勝2敗と勝ち越してはいるものの五分五分の成績と言える。
3.前節
甲府
中断明け勝利の無かった甲府はホームに首位京都を迎えての一戦となった。
初先発となった宮崎の活躍もあり、快勝を収めた。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
群馬
中断明け負けなしと好調の群馬はホームに秋田を迎えての一戦となった。
前節からスタメン3人を変更。
金城、中山、北川に代えて光永、内田、青木を起用した。
共に前線へのロングボールが多い立ち上がりとなる。
最初のチャンスは群馬。
CKから大武が合わせるが、秋田のGK田中が反応し防ぐ。
セカンドボールを回収し、セットプレーを獲得することで群馬が押し込んでいく展開となる。
押し込まれていた秋田だが、13分に群馬のビルドアップに対し得意のハイプレスでボールを奪うとシュートまで持っていく。
ビルドアップのミスを突かれた群馬だが、今節の狙いは秋田にハイプレスを掛けさせないようにシンプルに前線へのロングボールを増やす。
前線にボールを運ぶとコンビネーションから中央を崩すことも狙っていく。
一方の秋田も従来通りロングボールを前線に蹴り込み、セカンドボールの回収を狙うためボールが行ったり来たりする慌ただしい展開が続く。
徐々に秋田はブロックの位置を下げ出したことで群馬がボール保持する時間が増え、ライン間が空いてきたことで前線にいい形でボールが入るようになった群馬だがシュートにまでは繋がらない。
群馬ペースで進んだ前半だが、スコアは動かず前半を終える。
後半も立ち上がりから群馬が秋田陣内でプレーする時間が多くなる。
55分に秋田は武と吉田に代えて中村と齋藤を投入する。
2トップを入れ替え、前線からの強度を高めていくことを狙う。
選手交代を経ても群馬が押し込んでいく展開は変わらない。
押し込むが決定的な形を作れない群馬が63分に高木に代えて北川を投入する。
直後に秋田は2人を交代する。
茂と沖野に代えて三上と井上を投入。
群馬が押し込む形から徐々にボールが行ったり来たりの展開へと戻っていく。
飲水タイムを挟み、群馬は光永に代えて金城を投入する。
共に交代で投入された選手が推進力をもたらすことでゲームのテンポが上がっていく。
特に秋田は前線4人を総入れ替えしたこともあり、プレスのスピードが上がり群馬が押し込んでいた展開から秋田がリズムを取り戻す。
だが、秋田の高まった強度にも慣れてくるとまた群馬が押し込んでいく展開となる。
共に決め手を欠く中、83分に秋田は藤山に代えて普光院、群馬は進に代えて白石を投入する。
90分を超えてもお互いに運動量が落ちない試合は最後にドラマが待っていた。
普光院からのCKがファーサイドに流れると混戦から泥臭く飯尾が押し込み、秋田が先制する。
最後の最後に秋田が執念のゴールで勝ち切った一戦となった。
4.今季成績
両チーム成績
13勝9分6敗の勝ち点48で暫定6位の甲府と7勝8分13敗の勝ち点29で暫定16位群馬の一戦。
甲府はアウェイで、群馬はホームで共に五分五分の成績となっている。
甲府
前節中断明け初白星を挙げ、1勝2分2敗とした。
4試合連続で喫していた失点も止まり、這い上がるきっかけとなる試合とできるか。
データ上甲府はクロスとCKが多くなっている。
では、数が多いだけで得点に繋がっているのか見ていきたい。
セットプレーからの得点が最多でクロスからが3番目に多くなっている。
セットプレーやクロスの獲得数が多いだけでなく、得点に繋げていることがリーグ6位の得点数の要因となっている。
チームトップの10得点を挙げている泉澤は離脱したものの中断明けはリラが得点を伸ばしていることもあり、セットプレーやクロスからの得点は今後も多くなるのではないか。
群馬
中断明け好調を維持していたが、前節7試合ぶりに黒星を喫した。
2勝2分1敗と白星は先行しており、失点も2と安定した戦いを見せている。
甲府の得点のパターンを先程見たが、群馬の失点パターンはどうなのか?
セットプレーとショートパスからの形が最多で、次いでクロスからが多くなっている。
一方で甲府はセットプレーからの失点が多いが、群馬の得点パターンはセットプレーからが多くなっている。
データ上はどちらが力を発揮するかで試合の行方は変わりそうである。
群馬はクロス数とクリア数がリーグの中で上位となっている。
一方でパス数、支配率は中位とデータ上はボールを保持して攻めていくよりもシンプルに前線に入れていく形が多いことが伺える。
こちらはボール支配率が高かった試合の結果となるが、10試合で1勝とほとんど勝てていない。
奥野監督時代からボール保持の割合を高めていたが、結果に結びつかなかった。
今シーズン最も支配率が高かったのが前節となるが、完封負けとなっている。
残りの試合は奥野監督の時であり、久藤監督就任後は他にこの表には載っていない。
久藤監督になり、パス数と支配率共に上回ったのは金沢戦のみとなっており、その試合は引き分けに終わっている。
群馬としてはボールを相手に持たせた展開の方が得意と言えそうだ。
5.予想スタメン
甲府
スタメンの変更は無いと予想した。
前節快勝しただけにその勢いを今節にも繋げたい。
群馬
前節から一人の変更を予想した。
左SBの光永に代えて金城ジャスティン俊樹を右SBに起用するのではないか。
また、秋田戦で右SBを務めた小島を左SBと予想した。
大前と田中が復帰するかも注目となる。
6.注目選手
甲府
宮崎純真
前節泉澤に代わって今シーズン初スタメンを勝ち取ると全得点に絡む活躍を見せ、勝利に貢献した。
泉澤が今シーズン絶望となったが、宮崎にとってはチャンスでもある。
攻守に豊富な運動量と自慢のドリブルでチームに推進力をもたらし、エース離脱の危機を救う救世主となりたい。
群馬
大武峻
中断期間中にジュビロ磐田から期限付きで加入した。
中断明け初戦は途中出場となったが、山口戦からスタメンで起用されるとチームは2勝1分1敗と調子を上げてきた。
4試合で喫した失点も1と大武が加入したことにより、守備は強固となってきた。
残留を争うチームの救世主となっている。
7.展望
前回対戦時には大勝を収めた相手なだけに今節も勝てるだろうと思っている甲府サポーターは少なくないはず。
だが、前回対戦時の群馬とは違ったチームであると考えた方が良い。
奥野遼右監督が退任し、久藤清一コーチが監督に就任して以降、3勝3分1敗と勝ち点を伸ばしている。
特に中断明けは先程も触れたように大武が加入し、畑尾とCBを組んでからは前節終了間際に失点を喫するまで3試合連続で完封していた。
4試合でわずか1失点と前回対戦で6得点奪った相手とは思えない堅守を誇っている。
堅守だからといって5バックで引きこもってひたすら耐える戦い方をしているわけではない。
442でコンパクトなブロックを形成しブロック内に入って来たボールへアプローチを掛けていく。
中央を割らせないことを第一に、サイドへ出たボールに対しては全体でスライドしボールサイドで密集を作る。
甲府は中断明け、3バックのチームとの対戦が続き、前節の京都は433とオーソドックスに442で構えるチームとの対戦は中断明け初めてとなる。
4バックの相手に対しては幅を使って攻めていきたいところだが、頼みの泉澤が不在となる。
そのため、WBの選手が高い位置を取れるかがポイントとなる。
ビルドアップで押し込むことでWBに高い位置を取らせる時間を作りたい。
甲府はビルドアップ時に可変を行うチームではあるが、常に同じ形でボールを運ぶわけではない。
甲府の基本布陣である3バックに対して群馬は2トップ+ボールサイドのSHが出てくる形で同数で嵌めてくる。
新井が中盤に上がることで4バックへと可変する場合には2トップが縦関係となり、ボールサイドのSHが出てくることで同数で嵌る形となる。
甲府は同数で捕まえに来る守備を苦手としているが、いずれのパターンもいかに同数にしないかがポイントとなる。
この場面は3バックでのボール回しに対し、全体が下がって構えている場面。
SHがCBを捕まえに出ようとしたが、止めたことでWBが空いた。
SHとSBが中途半端な対応となったことでCBとSBの間を使われた。
結果的に群馬の対応が中途半端となったことがきっかけではあるが、ビルドアップの際は数的優位を作れたことで前進ができている。
甲府としてもこのような形を作りたい。
前節の京都も同数で捕まえに来るかつ強度の高さは群馬よりも高いチームであったが、プレスを逆手にDFラインの背後へ長いボールを入れることで回避した。
今節は前節のように雨天でない限りは同じ策は取らないだろう。
京都戦では河田のキックから得点の起点を作り、他にも決定機を演出しただけにGKをビルドアップに組み込む形で前進を図りたいところだが、甲府はほとんどGKが攻撃に関与することがないことから別の方法での同数回避を考えなくてはいけない。
前から同数で捕まえに来るということは同じシステムによるミラーゲームではないため、必ずズレが生まれるポイントが出てくる。
いずれのパターンでも空いてくるのがサイドとなる。
ボールサイドのSHがCBに出ていくことでWBへはSBがスライドしてくるが、他のポジションと比べ距離が長い分捕まえに来るのに時間は掛かる。
また、スライドが速く捕まるようであればSBの裏は空いてくることになるため、リラが流れる形や宮崎の裏抜けで起点を作れるだろう。
得点を取るためにはいかに畑尾か大武をゴール前から遠ざけるかが必要となる。
甲府のメンデスのようにわかりやすく強い選手ではないが、共に高さがあり読みも鋭く、経験豊富なCBコンビはゴールを守ることに関してはJ2でも高いレベルにある。
ホールで起点を作ることで吊りだした背後へリラが流れる形やSB裏をシンプルなランニングで突くことでCBを吊りだしてのクロスと形は作れるだろう。
あとは前節の一点目の山田のようにブロックの中にも積極的にクサビを打ち込むこと、二点目の宮崎のように積極的に足を振ること、三点目の得点のようにチャンスとみるやゴール前に人数を掛けること。
特別なことはしなくとも積み上げてきたサッカーの中に、積極性や勇気を持つことで得点は生まれるはずだ。
一方で得点面において群馬は苦しんでいる。
中断明けは山口戦こそ3得点挙げたものの残りの4試合で2得点と安定して点が取れているわけではない。
一番の要因は大前や田中、加藤を欠いていることだろう。
攻撃の中心選手である3人が不在の影響は間違いなく大きいがマイナスばかりではない。
代わりに起用されている高木や北川、進、青木といった選手はボールが無いところでの献身性が高い。
特に大前は足元でボールを受けることが多かったが、代わりにいずれも背後への飛び出しを積極的に狙うことで相手DFラインを下げさせる動きを見せる。
DFラインを下げさせることで空いたライン間にはSHの選手が入りこみ、前向きな状況を作りコンビネーションでの崩しを狙う。
SHが空けたサイドのスペースにはSBが高い位置を取り、攻撃に厚みをもたらしていく。
前節の甲府を見てもわかると思うが、絶対的な選手を欠くことで全体の流動性が生まれたように群馬も同じような状況にある。
SHが内に入り、SBが高い位置を取ったことでピッチを広く使えた場面。
この際も前線で背後を狙う動きを見せており、深さと幅を取ることで攻め手を探っている。
積極的に相手の背後を狙っていく群馬だが、先程も触れたが奥野監督時代からボール保持にもチャレンジしている。
ビルドアップ時にはCBとボランチの4人で前進を図る。
これに対し、甲府は前節同様リラ+ボールサイドのシャドーで相手CBにプレスを掛け、前線から積極的にボールを奪いに行きたい。
ビルドアップの際の群馬はピッチを広く使うように、選手間の距離を広く取るためボールを奪えるとオープンな展開でカウンターを仕掛けられる。
選手間の距離が遠いことからプレッシャーを掛け、蹴らせることでセカンドボールの回収でも優位に立てる。
だが、ハイプレスを掛けてくる相手に対してはハイプレスを回避する目的で意図的にロングボールを増やすことも厭わない。
ハイプレスに合わせ、甲府のDFラインは高い位置を取るようにラインを上げるため裏返されると一気にピンチになる可能性があるだけにリスク管理を怠ってはいけない。
そして、こちらも先程データとして見てもらったが甲府はセットプレーからの失点が多くなっており、現状の群馬はセットプレーに活路を見いだしている。
流れの中で違いを作れる選手の不在もあり、セットプレーへの依存度が高くなっている。
大前はセットプレーのキッカーも努めていたことからセットプレーにおいても不在の影響はあるが、代わってキッカーを努めている岩上も精度の高いボールを蹴る。
ターゲットとなるのは主に大武となる。
190㎝近い長身を活かしたヘディングは迫力がある。
また、群馬は敵陣深くではロングスローを駆使する。
スローワーは主に岩上と小島が務めることとなる。
セットプレーが増えると事故的な失点が増える可能性が高まるため、クリアを遠くへ持っていくことで隙を与えないようにしたい。
群馬はオーソドックスなチームであるが、忠実に愚直に戦うチームである。
隙を与えれば勝ち点を失うこととなるだろう。
前節見せた勝ちへの執念を今節も見せたい。
8.あとがき
首位に勝ったからこそ大事な試合。
得てしてヴァンフォーレというクラブはこういう試合を落としがちな印象がある。
山本が100%やれば勝てると言った言葉は間違っていなかったことを京都戦で示した。
相手の順位が下だからと油断すれば勝ち点を落とすだろう。
後が無い状況は変わらないが、やることをやれば山本が言ったように勝てるとわかっただけに今節も100%出しきり勝ちきりたい。
群馬は久藤監督の元、残留に向けて調子を上げてきた。
安定した守備を築けているだけに得点力の向上が必要となるが、大前や田中、加藤が不在であることを考えると致し方ない面もある。
加藤こそシーズン終盤にならないと復帰できないが、大前と田中が復帰すれば攻撃陣の層は厚くなる。
復帰後も守備の安定度を保てれば残留争いからは抜け出せる力を持っている。
今節から選手名の表記を黒文字に変更しました。
見やすさ等ご意見頂ければ嬉しく思います。
また、ありがたいことに読者の方も増えてきており感謝しています。
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今後もよろしくお願いします。
ヴァンフォーレ甲府はまだ死んでない。
この言葉を信じ、今節も応援していきたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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