J2第5節 FC町田ゼルビア戦 プレビュー
前節アウェイで愛媛に勝ち、開幕から4戦負けなしで3連勝とした甲府。
今節迎える相手はFC町田ゼルビア。
2019年にサイバーエージェントが経営に加わり、町田を取り巻く状況は一変した。
今年中には練習場とクラブハウスが完成する予定となっており、スタジアムの改修も終わる。
本格的にJ1を見据えるクラブとなった。
金銭面、環境面と追い抜かれてしまった状況だが、ピッチでの戦いでは負けられない。
1.対戦成績
初対戦は2011年の天皇杯。
当時の町田はJFLに所属しており、監督は現在と同じポポビッチ監督であった。
これまで9度対戦してきたが、一度しか負けていない。
ホームでは甲府が圧倒している。
だが、唯一喫した黒星はホームでの一戦であった。
いつもは直近10試合の成績を載せているが、9度の対戦しかないため9試合の成績とした。
これまでの町田との全試合となるが、2試合ごとに引き分けとなっているが今節はどうなるか。
2.前節
甲府
アウェイでの愛媛戦は完封勝利で、開幕から4戦無敗の3連勝とした。
試合内容についてはレビューをご覧ください。
町田
アウェイ水戸での一戦は強風の中での試合となる。
立ち上がりからコイントスで風上を取った水戸が押し込んでいく。
2分にいきなり水戸に決定機。
山根のシュートのこぼれ球に中山が反応するも福井がセーブ。
7分には驚きの得点が生まれる。
左サイドから温井が上げたクロスは風に流され、目測を見誤った福井の逆を突きゴール方向へと流れそのままゴールに入ってしまう。
ピッチを広く使いながら、木村と平野を中心にボールを動かしていく水戸。
442でブロックを作り守る町田に対し、間を上手く取り相手に捕まらないポジションを取る水戸。
風に流され、思うようにボールを運べない町田は一方的に耐える展開を強いられる。
飲水タイム前後から高江がビルドアップ時にDFラインに下がることでボールを動かせるようになる。
だが、ロングボールを前線に入れようとしても風に戻されてしまう。
そのため、攻撃は後方からビルドアップして前進する形に限られる。
中島、岡田、太田とカウンターで力を発揮できる選手がいながらも活かすことができない。
前半終了間際にまたも風によって得点が生まれる。
福井からのFKは風に押し戻され、セカンドボールを水戸が拾い松崎がドリブルからミドルシュートを放ち追加点を挙げる。
後半に入り、風上に立った町田に決定機。
奥山のシュートが平戸に当たり、タビナスにも当たりゴール方向へと軌道が変わるが、惜しくも枠の外。
前半とは違い、連動した攻撃でゴールに迫る町田。
55分には岡田、太田に代えて長谷川、鄭大世を投入する。
しかし、直後に水戸に追加点。
中盤で縦パスを引っ掛け、縦パス一本で中山が抜け出し落ち着いて水本を交わし3点目。
流れが良くなり、攻撃的なカードを投入し勝負に出たが痛い失点となった。
61分には水本に代え、吉尾を投入し攻撃的に出る。
これに伴い、佐野がCBに平戸がボランチにポジションを下げる。
67分には水戸が3人を交代する。
木村、安藤、山根に代えて平塚、ブラウンノア賢信、森を投入。
立ち上がりこそ後半の巻き返しを期待させたが、徐々に時間だけが過ぎていく展開となる町田。
75分には前線でボールを奪い、ショートカウンターを仕掛けるも吉尾のシュートは阻まれる。
76分に水戸は松崎に代えて深堀を投入する。
88分に水戸は中山に代えて細川を投入し、守備を堅める。
終始風に苦しみ、水戸のリズムで試合を終えた。
3.今季成績
両チーム比較
3勝1分の勝ち点10で3位の甲府。
対して町田は1勝2分1敗で10位の町田。
得点数は同じながらも失点に大きな差がある両チーム。
得点数は先程触れたように同じであるが、シュート数に大きな違いがみられる。
甲府はシュート数も枠内シュート数も多く、それに見合う得点を挙げていることがわかる。
一方で、町田はシュート数自体は多くはない。
すなわち、決定力が高いチームということがわかる。
甲府
先程も触れたようにシュートに関するスタッツはリーグでもトップクラスだが、順位に対してほとんどのスタッツが見合わない数字となっている。
数字に現れる大きな特徴があるチームではないが、反対にどのような手も打てるとも言える。
では、3位にいるのはどうしてなのか。
守備の堅さにある。
これは前節も触れていたため、割愛させていただくが以前までの引いて守って失点を減らす甲府といえばという戦い方はしていない中でのこの数値である。
得点に関しては、セットプレーからの得点が甲府を支えている。
2節から3試合連続でCKから得点を奪っている。
町田
目につく数値はオフサイドか。
マイナスのイメージが付きがちだが、多いということはそれだけ相手の背後を狙っていることの証明でもある。
出し手と受け手のタイミングが合えば、DFラインの背後を突けることを考えると一概にマイナスとは言えない数値である。
シュート数は多くはないが、得点が多くなっている。
シュート成功率がリーグ5位とリーグトップクラスの数値となっている。
シュートの上手さもさることながら、得点の確率を高められる攻撃ができていることがわかる。
4.予想スタメン
甲府
前節から有田に代えて三平を予想した。
対人に強い町田のCBコンビに対し、位置取りや駆け引きが巧みな三平を最前線に起用するのではないか。
DFラインは前節の愛媛戦では山本が別メニューと中継では語られていたことから、3試合続けてのトリオを予想。
中盤、サイドは前節途中から良い時間帯を多く作れたことから同じメンバーを起用するのではない。
町田
福井、深津、水本、奥山、佐野、高江、平戸は全試合スタメン、三鬼は開幕戦出場は無かったが対戦相手の山形からの期限付き移籍ということで契約の関係上出場できなかった。
中島も開幕戦は途中出場であったが、その後3試合連続スタメンでチームトップの2得点とこの9人の先発は固いだろう。
残りの2人は長谷川、吉尾を予想したが太田か岡田の起用も考えられる。
この13人からスタメンを決めると思われる。
5.注目選手
甲府
荒木翔
甲府に加入して4年目のシーズン。
太田、今津、入間川と山梨に縁がある同期は全員シーズンオフに退団した。
荒木自身もオファーがありながらも、甲府に残留することを決意してくれた。
ここまで全試合でフル出場しており、2アシストと完全にチームの中心となっている。
移籍していった同期の太田との一戦となるが、残留したことが正しい選択であったことを示したい。
町田
佐野海舟
米子北高校から加入して3年目。
ルーキーイヤーに21試合、昨シーズンは超過密日程ながら41試合とほぼ全ての試合に出場。
高江と組むボランチはJ2屈指のコンビであり、J1でもプレーできるだけのプレーを昨シーズン見せたが今シーズンも町田でプレーすることを選択した。
「かいしゅう」の名の通り、セカンドボールの回収が強みの選手。
今節もセカンドボールの回収、ボール奪取で中盤の争いで優位に立ちたい。
太田修介
今節はもう一人挙げたい。
この人に触れないわけにはいかない。
青赤の漢の小瀬帰還。
敵としては向かい合いたくなかった。
一方で、小瀬で得点をする姿も見たい悩ましさ。
甲府に強い思いを持っていた選手を残せなかったことは、クラブにとっては大きな損失である。
今後、このようなことが起こらないようにサポーターも考えなくてはいけないかと思う。
悲しいが、小瀬で元気な姿が見たい。
6.展望
今節の町田も愛媛と似た傾向のチームとなる。
今シーズンはここまで442でプレスを積極的に掛けるチームとの対戦が続いているが、町田戦後も長崎、北九州と同様のチームが並ぶ。
J2のトレンドの戦い方と言える。
町田の守備の特徴は積極的なプレスから相手選手を捕まえに行くこと。
まずはコンパクトに442のブロックを形成し、CBの横パスやブロック内に入ってきたボールを合図にプレスを掛けていく。
ジュビロ磐田戦では、失った瞬間にプレスを仕掛けていたが回避され前進を許すことがあったため変更したと思われる。
ボールを中心にプレスに行くためスペースのケアが疎かになる場面が度々見られる。
前節の水戸はピッチコンディションが悪い中でも、町田のプレスを逆手に取るポジションを取り、捕まらない立ち位置から前進を図っていた。
前々節の東京ヴェルディもライン間や町田の選手の背後にポジションを取り、プレス回避を試みていた。
中でも町田のSHの背後を起点にする攻撃は甲府としても狙い目にできそうである。
後方3人で行うビルドアップに対し、町田は2トップとサイドのどちらかがプレスに行く。
この際、SH裏のスペースを空けることとなり起点を作られる場面が見られた。
右サイドには野津田が降りてくることで、関口を高い位置に押し出し、奥山をロックし起点を作る形は甲府としては狙い目。
ここから、関口をSB裏に走らせる形や三平への楔のパス、泉澤へのサイドチェンジと攻め手はいくらでも作れる。
左サイドでは荒木を起点に中村、泉澤のコンビネーションで崩し三平や野津田がゴール前で顔を出す形がイメージできる。
ヴェルディ戦の後半からは2トップが縦関係となり、両サイドの選手がビルドアップを牽制しながらサイドをケアしようとするがこれによりサイドでは一対一の状況が生まれヴェルディにサイドから攻め手を許した。
甲府として狙いとするなら以下のような形か。
左サイドでは荒木が内に入ってくることで高江と深津をロックし、泉澤と三鬼に1対1の局面を作る。
右サイドであれば野津田が佐野と水本をロックし、関口と奥山に1対1の局面を作る。
この状況を作り出し、サイドへと展開したい。
だが、これはどちらも町田のファーストプレスを回避できる前提である。
回避できなければ、ショートカウンターを浴びたり前線に蹴り出すだけの愛媛戦の前半のような展開になってしまう。
そこで大事なのが数的優位を作ることとパスの距離を変えることで、プレスに捕まらないようにすること。
愛媛戦ではビルドアップ時に数的同数で相手に捕まる状態の中、近くの選手に預ける場面が多く、サイドへ誘導され、そこを狙い目にショートカウンターに持ち込まれる展開が見られた。
途中で野津田と野澤のポジションを変え、野澤のアンカー+中村が降りてくることで数的優位を確保し相手に捕まりにくくなった。
数的優位に関しては以下の2パターンが見られるだろう。
可変をせず、基本布陣でボールを保持する場合は片方のSHが上がる形で町田はプレスを掛けてくるだろう。
中盤では3人で横へのスライドあるいはSBが縦にスライドすることで対応できるため、この形でのビルドアップではこのようにプレスを掛けてくるのではないか。
甲府としては数的優位を活かし、前線3人に良い形で繋げていきたい。
泉澤をサイドに張らせる形へ可変した場合には荒木を内に入れることで中盤の佐野や高江を牽制し、数的優位を確保するのではないか。
この形を取る場合には町田としては、上の図のプレスの掛け方ではSHの片方の選手が浮くことになってしまうためこの形でプレスに来るかと思う。
ここでも数的優位は確保できており、プレスを剥がしサイドで1対1の状況を作れている2人に配給していきたい。
パスの距離を変えることについては、愛媛戦の前半30分過ぎ頃から、小柳が逆サイドへのサイドチェンジを多用し始め流れを掴んだ。
前節勝手に命名した「たつビーム」は、甲府最大の武器である逆サイドで孤立する泉澤のドリブル突破を活かすだけでなく、プレス回避にも有効となる。
近い距離の選手に預けることは、パスを繋げやすいことと同様に相手としても狙いやすいパスとなる。
大きな展開を見せることで相手の的を絞らせないようにできる。
甲府として嫌な展開は試合開始から町田に442のブロックを崩さず、自陣にコンパクトに構える戦い方を選択されると手を焼くことになる。
DFライン、ボランチには対人守備に強みを持つ選手が多く、構えて守るのに向いている選手は多い。
特に両CBは自陣で構えて守ることに関してはJ2でも屈指のコンビと言えるが、ポポビッチ監督の志向する戦い方にはあまり向いているようには見えない。
ポポビッチ監督は相手に合わせる戦い方を選択するよりは、自分達の目指すことやゲームプランを押し出していく傾向にある監督かと思うのでおそらくハイプレスベースの守り方は変えないだろう。
甲府としては攻撃面でいかにプレス回避をし、町田の空けたスペースを見極め突いていけるか。
その結果、両CBをゴール前から引きずり出すことで得点の可能性を高めたい。
一方、町田の攻撃の特徴はボランチの高江がDFラインに降りCBと3人でビルドアップを開始する。
ビルドアップに取り組んでいるが、両CBは得意としているわけではない。
水本は左足を使えるようになり、徐々に成長は見られるが高江が助けに来ないと手詰まってしまう。
相手のやり方に関わらず、この形が基本であるためビルドアップの本来の目的である前線に時間とスペースを与えることができない場合が多い。
ボールを失わないために行っているように見える。
また、高江を後方に下げ両SBを高い位置へ押し出すことで中盤で不用意にボールを失うと中盤と両サイドには広大なスペースを相手に与えることとなる。
甲府としては深津をプレスのターゲットとしたい。
水本はボールを運びながら相手選手を引き出すことにもチャレンジしているが、深津はシンプルに近くの選手に出すことが多い。
サイドへのパスや縦パスを消し福井に下げさせるか深津自身に蹴らせる形を作りたい。
先程述べたように、高江が中盤にはいないためセカンドボールの争いでは甲府が数的には優位となっているためセカンドボールを回収し、攻撃に繋げていきたい。
両CBだけではビルドアップできないのであれば、高江を下ろすのではなく三鬼を加え右サイドの選手を張らせ中盤の底に佐野と高江を残しておいた方がカウンターを浴びるリスクは減るように思う。
町田としては意欲的にビルドアップに取り組んではいるが、シンプルに2列目の選手を活かしていく形が最も効果的だろう。
最前線には裏抜けが得意な中島がおり、背後へ飛び出すことでDFラインを下げさせ空けたライン間で浮いた2列目の選手が浮く。
あるいは中島に楔のパスを入れ、2列目の選手が前向きにサポートする形を増やしていく。
先程述べた、高江を中盤に残し1列高い位置で相手を引き出し、中島のアクションによって攻め手を変えるやり方の方が相手としては嫌である。
また、J2屈指のキッカー平戸を擁しているだけに、町田のセットプレーにも警戒しなくてはいけない。
得点パターンを見ても、セットプレーで得点を取れていることがわかる。
これは開幕戦での深津の得点であるが、キッカーの平戸の質の高さがわかるかと思う。
こちらは昨シーズンの金沢戦での得点。
直接も味方に合わせるのも上手いキッカーである。
甲府としてはゴール前でのファールはしたくないところ。
前節愛媛戦では12ものファールを犯しており、自陣でゴールに繋がりかねない位置でのFKも何本か与えていた。
チームとしての修正を期待したい。
得点が欲しい状況になると鄭大世を起用してくるだろう。
中島とはタイプの異なるストライカーで、フィジカルの強さを武器にゴールに迫る選手。
鄭大世の強さ、決定力は脅威となる。
攻守共にポポビッチ監督のチームはポポビッチ監督のチームである。
「カメレオンサッカー」とでも呼べば良いのかわからないが、相手に合わせ戦い方を変えることができる甲府とは対局のチームとも言える。
ポポビッチ町田を研究でき、対策をどう立てるかが試合のポイントとなる。
見てきたようにわかりやすいチームなだけに戦いやすいチームではあると思う。
だが、前節の愛媛のようにプレー強度を高めてきて面食らうような可能性も否めないだけに油断はできない。
また、個々の選手の質は高いチームなだけに試合終了まで気が抜けない試合となるだろう。
7.あとがき
昨シーズン無かった4連勝への挑戦となる一戦。
「青赤の漢」の帰還となる一戦。
注目度も思い入れも甲府サポーターにとっては大きな一戦となる。
ポポビッチ監督が良いプレーが出た時に発する「ブラボー!」を聞く回数が、試合の主導権をどちらが握っているかがわかる指標となるかもしれない。
今節も勝って連勝を続けていこう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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