J2第20節 ザスパクサツ群馬戦 レビュー
6月最後の一戦となるが、1勝も出来ずに迎えることとなった。
5月は最多勝ち点を獲得しながらも勢いが止まってしまった6月。
中断期間まで勝ち続けるしかないが、試合前日には選手に新型コロナウイルスの陽性者が出てしまう。
怪我人も多く苦しいチーム状況だが、残された選手たちの奮起に期待したい。
1.スタメン
甲府
前節から7人を変更。
河田と小柳は14試合ぶり、鳥海は10試合ぶり、野澤英は9試合ぶり、新井と野津田、リラは2試合ぶりのスタメンとなった。
中山陸が今シーズン初めてベンチに入った。
群馬
前節から1人変更。
加藤に代わって奥村をスタメンに起用した。
ベンチには岩上が4試合ぶりに入った。
2.アグレッシブ
今節は試合の入りから違いを見せる。
前線から激しいプレスを掛け、群馬の自由を奪っていく。
前節山口相手に様子見で試合に入ったことでペースを握られた反省点を活かす立ち上がりとなる。
試合後の野津田岳人選手のコメントより。
『ここ最近勝ててなくて、前から攻撃的にいかないといけないと感じていた。監督からは「前半で(試合を)決めるくらいでやろう」という話があった。』
プレー強度だけでなく、可変の仕方にも変化を見せる。
新井が中盤に上がる形はこれまでも見せたが、今節はアンカーではなく野澤英と横並びの形を取る。
そして両サイドではシャドーの2人が幅を取り、野津田がリラに近い位置にポジションを取る。
勢いそのままに左サイドを崩し、甲府が先制する。
泉澤がDF2人を引きつけ、空いたスペースに荒木が走り込みシュートを決め切る。
泉澤という圧倒的な個を囮にする形での得点となったが、この形は増やしていきたいところ。
試合後の荒木翔選手のコメントより。
『試合前のスカウティングでSBとCBの間が空くということだったので、狙いどおり取れた。ファーストタッチがうまく決まって、あとは振り抜くだけでした。』
スカウティングで狙っていたスペースだったようだが、立ち上がりに一発で仕留めることが出来た。
この1点が試合の行く末を決めていく。
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『今日は先制点が取れたこと、これが大事だったと思います。今後、毎試合先制点を奪う為のパワーの使い方を、全員が意識してやることが大事になってくると思います。特に夏場になると先に点を取らないと体力面で削られることがあるので、交代枠5枚を上手く活用しながら、最初から前へ行くことを選手全員とチームに意識付けしていくことが大事になると思います。』
落ち着いて試合に入っていくことが多い甲府だが、今節は立ち上がりからパワーを持って入ったことがプラスとなった。
早い時間に先制すると後ろに引きリスクを取らない戦いをこれまでは見せていたが、今節はアグレッシブな姿勢を止めない。
両サイドからの推進力を活かし、次々にゴールに迫っていく。
すると12分に甲府に追加点が入る。
野澤がプレスを仕掛け、再度プレスバックを仕掛けボールを奪うと野津田、泉澤、リラと繋ぎシュートを放つ。
相手DFのシュートブロックにより、ポストに当たるがこぼれ球に野津田が詰め右足で流し込む。
得意の左足から再三決定的なシュートが決まらなかったが、甲府移籍後初ゴールはまさかの右足から生まれた。
試合後の野津田岳人選手のコメントより。
『ふかさないようにしっかり当てる意識で打ちました。気持ちで振り抜きました。』
『今季初ゴールでもあり、2年以上ゴールがなくて喜び方を忘れていました(笑)。ゴールがこんなに気持ちが良いモノかと思ったし、今までのモヤモヤが晴れた。ゴールがエネルギーになると感じました。』
甲府移籍後初ゴールだけでなく、自身に取っても3年ぶりとなるゴール。
このゴールをきっかけに多くのゴールに絡んで欲しい。
今節は泉澤と鳥海が初めてシャドーに並ぶ形となったが、速い段階でドリブル突破できる2人がサイドに張ることで両サイドから積極的に仕掛けていく展開を作っていく。
これまでは右サイドは関口に攻め上がり待ちと相手を押し下げてからでないと幅を使えなかったが、サイドから仕掛けていける鳥海を起用したことで右サイドが活性化した。
押せ押せの甲府は17分に3点目を挙げる。
起点はまたも野澤のプレスから。
野澤のプレスにより相手のパスのズレを生み、野津田がボールを奪うと泉澤にボールがこぼれDFが寄せてこないところをゴールに流し込んだ。
立ち上がりから群馬陣内で幅を使いながら押し込んでいく展開を作るが、今節は最前線のリラの動きも大きかった。
これまではコンディションが上がりきらず、プレスにも出ていけず背後への飛び出しが少なく、局面での強さは見せるが周りとの連動に欠けていたが積極的に背後への飛び出しを見せ、群馬DFを押し下げる動きを見せる。
3点を取っても攻め手を止めない甲府。
これまでの鬱憤を晴らすかのように躍動していく。
群馬としてはボールを奪っても甲府の切り替えが速く、すぐにボールを失ってしまい自陣から出るのにも苦労する展開となる。
何もできない群馬は飲水タイムで早くも選手交代を行う。
金城と奥村に代えて吉永と岩上を投入する。
上手くいかない展開を打破しに掛かる。
飲水タイムを経ても甲府のアグレッシブな姿勢は変わらず、群馬は後手を踏んでいく。
ボールを失った後の姿勢が試合展開を象徴する。
甲府は失った直後にボールを奪い返しに連動してプレスを掛けていくのに対し、群馬はリトリートし構えることを選択するがこの姿勢の違いが勢いの差として現れ、甲府が押せ押せの流れとなる。
失ったボールを奪い返しにいく姿勢が甲府に4点目をもたらす。
オフサイドで得たFKからリラが後ろに逸らすとセカンドボールを久保田が身体を入れゴールキックにしようと試みるが、鳥海がボールを奪いドリブルでペナルティエリアに侵入し自ら決め切る。
4点奪っても今節の甲府は攻め続ける。
34分にはFKからゴールに迫る。
野津田の放ったシュートは上から縦回転のボールで急激に落とし、ゴールを陥れる。
悪魔の左足からの得点が待ち遠しいところ。
群馬のファーストシュートは36分。
CKから北川が合わせゴールを狙う。
この直前のプレーでシンプルに駆け上がった吉永へのロングボールからCKを獲得したが、甲府のハイプレスの前に前進できなかった中で一つきっかけを作る。
このシュートを機に群馬がボールを持てる時間が増していく。
徐々に甲府陣内に入っていく時間も増えてはいくが、決定的な形は作れない。
アディショナルタイムにも甲府に決定機。
泉澤と野津田で左サイドを崩しクロスを入れるが、リラが決めきれず。
得点を取れるポジションにまで入ってくることが出来てきただけに、得点まであと少しのところまで来ているのではないか。
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『全体的に前から行くというのはチームとして共有したことです。群馬もボールを動かすのも上手く、何回か外されたところもありましたけど、我々が前から行くことが連動したことによって、相手に嫌なプレッシャーを与えることが前半出来たと思います。』
前半は甲府が圧倒する展開となった。
チームで狙いを共有し、誰もサボることなくプレスを掛け続けたことが大きな点差をつけることに繋がった。
試合の入りからアグレッシブに入り、前半の内に試合を決め切るだけの差をつけた。
3.テスト
試合後の奥野僚右監督のコメントより。
『前半に4失点してしまったことは仕方のないことなので、たらればを考えるのではなく、後半にどう戦っていくのかを考えようということで後半へ送り出しました。』
後半に入り、群馬も勢いを持って入る。
一方的に甲府に押し込まれた展開とは違い、群馬も攻めに出ていける展開となる。
両SBが高い位置で幅を取ることでピッチを広く使い攻めに出ていく。
特に右サイドで内田が中間ポジションを取り、浮く形を取り空けたスペースに吉永が勢いを持って走り込んでいく。
群馬がボールを保持する時間が前半よりも増すが、63分には甲府に5点目が入る。
甲府陣内で大前がパスを受けたところへ鳥海がプレスバック。
ファールのようにも見えたがボールを奪うと新井から泉澤へ展開し、カウンターを泉澤1人で完結させた。
守る側の渡辺は泉澤に対し、体の向きを作る余裕がなく下がるしか手は無かった。
前半から一度プレスを剥がされてもプレスバックしてもう一度チャレンジしていく姿勢はこれまでの甲府にはあまり見られなかったが、続けていく姿勢が得点にも繋がった。
一矢報いたい群馬は68分に内田と北川に代えて白石と高木を投入する。
試合後の白石智之選手のコメントより。
『僕が入ったときは5失点して0-5の状況だったので、失うものはなかった。とにかくチームにため、サポーターの皆さんのために、全力で戦う姿を見せて、1点でも追いつきたいと思いました。』
高木が投入直後に河田と一対一の場面を迎えるが、河田が防ぐと直後に今度は白石にチャンスが訪れる。
ニアで高木が逸らしたボールに対し、河田が反応するがこぼれたところに白石が詰める。
ボールは外に逸れていたように見えるだけに、もったいない失点にも見えるがキッカーの大前が質の高さを見せた。
試合後の白石智之選手のコメントより。
『ゴールシーンは、CKのセカンドでした。最初に高さのある選手に叩いてもらって、自分はファーでセカンドを狙っていきした。ファーに良い形で流れてきたので、自分は押し込むだけでした。1点を奪うことはできましたが、相手のパワーがなくなった状態だったので失点を減らして、もっと早い時間にゴールを奪わなければいけなかったと思います。』
失点の直後には甲府が2人を交代する。
CKの直前に足を攣っていた野澤と開幕から出続けている荒木を下げ、長谷川と金井を投入する。
野澤は怪我明けながら高いパフォーマンスを見せ、疲れが見えていた荒木を温存できる展開となった。
これにより長谷川が初めてボランチに入り、金井はリーグ戦で初めてWBに入った。
77分には再び悪魔の左足が火を噴く。
ヴェルディ戦でも見せたが右サイドからカットインしての野津田の一振がゴールを襲うが、松原が防ぐ。
野津田の次の得点は自慢の左足から見たい。
79分に群馬は久保田に代えて高橋を投入する。
80分近くになっても甲府は足を止めずプレスを掛けていくが、得点が欲しい群馬が81分に決定機を作る。
中山からダイレクトのクロスをDFの背後に抜け出た田中が合わせるがポストに救われる。
84分には甲府が2人を交代する。
鳥海と泉澤に代えてバイヤと野澤陸を投入する。
鳥海、泉澤のドリブラーを2列目に並べる布陣が機能しただけに今後も楽しみとなる。
投入されたバイヤは初めてリラとの共存となり、野澤陸はJリーグデビュー戦となった。
これによりルーキー5人のうち4人が今シーズン出場となり、残された須貝は怪我からの復帰待ちだが須貝の活躍にも期待したい。
これにより野澤陸が3バックの真ん中に、バイヤが右のシャドーに、長谷川が左のシャドーに入り、新井がボランチに上がる。
そのルーキーの1人が甲府に6点目をもたらす。
右サイドをパスワークで崩すと背後へ抜け出たリラからシュート性のクロスが入る。
逆サイドから金井が詰め、こぼれたところに長谷川が合わせ追加点となる。
点差がついても得点を狙う群馬は90分に一点を返す。
素早いパスワークから右サイドを田中が抜け出し、クロスを上げるとファーサイドに大前が飛び込み2点目を挙げる。
直後に甲府は野津田に代えて中山を投入する。
野津田にとっては待望の得点が取れただけでなく、攻守に躍動した。
代わって投入された中山は今シーズン初出場。
昨シーズン3得点を挙げ飛躍のきっかけを掴んだかに見えたが、ここまではベンチ入りも叶わず。
今節の出場をきっかけにしたい。
お互いに最後まで得点を取りに行く姿勢は崩さず、最後まで見応えのある試合となった一戦は甲府が今シーズン最大得点差をつけての勝利となった。
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『昨日、選手にコロナウイルス感染者が出ましたが、昨日から選手たちはすごく集中しており、今日も集中してプレーしてくれました。昨日の時点で、選手たちは迅速に対応してくれた。今日のゲームに向けて、集中してチームが1つになって戦ってくれたこと、本当にギリギリのメンバーで戦ったこと、あと1人外すとなると17名で戦わなければならない状況で選手たちが最後まで戦ってくれたこと、これらはすごく良かったと思います。』
苦しい状況の中で一丸となり勝利を掴んだ見事な試合となった。
アクシデントがきっかけとはいえ、Jリーグの試合の中でこれまで使わなかった選手やポジションでの起用を試すことができた。
今後に向けても明るい一戦となり、伊藤監督の目指してきたサッカーの答えが出た試合でもあったのではないか。
これをベースにできるかが今後は大切となる。
4.MOM
野津田岳人
甲府移籍後初ゴールが生まれた。
開幕戦でのPK失敗に始まり、チャンスは幾度もありながらも決めきれていなかったが待望の得点となった。
自身にとっても3年ぶりとなる得点となった。
得点以外でも野澤英とのボランチコンビはハイプレスのスイッチ役ともなり、チームに活力を与えた。
呪縛から解放された野津田の活躍に今後も期待したい。
5.あとがき
試合前日に選手1名に新型コロナウイルス陽性反応が出た中で迎えた一戦。
怪我人も合わせ、フィールドプレイヤーがベンチ入り人数ギリギリと厳しい中での試合となったがチーム一丸で勝利を掴み取った。
試合開始からハードワークし続けた姿は希望を照らすような試合であったが、これを続けていくことが大事となる。
群馬にとっては厳しい試合となった。
2点は取ったものの、残留争いに巻き込まれている中で甲府にアクシデントがあったことも考えると勝ち点を持ち帰りたかったが叶わず。
最大5点差をつけられても最後まで得点を取りにいった姿勢は今後にも活きてくるはずである。
4チームが降格する厳しいシーズンだが、残留を達成したい。
チームにも陽性者が出てしまったが、山梨全体でも増えてきている中で試合が無事開催されたことに感謝しかありません。
どれだけ対策をしていても感染してしまう可能性はあるが、お読みいただいた皆様もお身体に気をつけてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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