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J2第36節 東京ヴェルディ1969戦 レビュー

長崎に勝利し、昇格圏との差を詰めた中で迎える一戦。
アウェイに乗り込み、東京ヴェルディと相まみえる。

1.スタメン

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甲府
前節から1人変更。
須貝に代わり、関口が起用された。
前節右のWBを務めた荒木が左に回り、関口が右に入った。
有田が4試合ぶりにベンチに入った。

東京V
前節から3人を変更。
深澤、福村、梶川が起用された。
また、堀監督就任以降は一貫して433のシステムであったが442にシステム変更した。

2.耐え凌ぐ

立ち上がりは甲府がボールを保持する展開から入る。
ヴェルディが442でブロックを敷く形に対し、新井が中盤に上がりボールを動かしていく。

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前節よりも強度高くボールにアプローチを掛けていくヴェルディ。
甲府はヴェルディのプレスを逆手に取るように河田から宮崎を背後へ走らせる形を続けて作る。

ボールを失った直後の切り替えが速い甲府に対してヴェルディはボールを保持することが出来ず、甲府がボールを持つ時間が多くなる。

最初の決定機は甲府。

宮崎が右サイドからクロスを入れるとンドカがクリアしきれず、新井の前に溢れる。
冷静にンドカを交わし、枠内を捉えたシュートを放った新井だが若狭が掻き出す。
マテウスの後方でゴールカバーに若狭と山本が入っており、守備に重きを置く姿勢を見せる。

直後のCKからも新井がシュートを放つが、枠を捉えられず。

10分を過ぎた辺りから徐々にヴェルディがボールを保持し、甲府陣内に入っていく回数が増えていく。
ボールを保持した際には梶川がトップ下のような位置に上がり、山本がアンカー気味となりボールを動かしていく。

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甲府が立ち上がりから強度を落としたこともあるが、ヴェルディが甲府の選手に捕まらない立ち位置を取りながらテンポ良くボールを動かしていく。
甲府の前線の選手がボールを奪いに出ていこうとするが前線とDFラインが連動せず、ライン間が空くこととなり前進を許してしまう。

試合後の堀孝史監督のコメントより。

『出てきてくれるということは、逆にできるスペースもあるので、その辺のところを勇気を持って狙っていくところを出せれば良かったとも感じています。逆に、そこを上手く使えていた前半の立ち上がりの方では、相手が前からハメに来たところを上手く空いたところを使えたシーンもあったと思います。』

18分にはヴェルディのビルドアップのミスを突き、シュートチャンスを作る。

マテウスのキックを中盤で引っ掛けると山田からパスを受けた宮崎が思い切って足を振る。
ミドルシュートから今シーズンゴールを重ねているだけに自信を持って足を振れているのがわかる。

20分にヴェルディに決定機。

前からボールへアプローチを掛けた甲府だが、強度は低く全体も連動できずマテウスからライン間にポジションを取った森田へ浮き球のパスが通る。
サポートに入った山本から梶川へ縦パスが入るとダイレクトでDFラインの背後へ浮き球のパスを送る。
背後へ抜け出した小池のシュートはポストに当たり、甲府としては助かる格好に。

試合後の梶川諒太選手のコメントより。

『まずは(森田)晃樹が上手く間で受けて理仁に落としていましたが、逆のフロントボランチがリベロに落とした際に、逆のフロントボランチが空くということは、相手がどこであれ多いことなので、あそこでは理仁が上手く逆を向いてパスを出してくれたという部分が大きかったです。ひとつ目線を外すことで、あそこで(小池)純輝君は裏のスペースに飛び出すのが巧いので、ワンタッチでフリックすることで抜けられるのはトレーニングの中からできていましたし、前節もひとつ横のパスが入ってからの裏抜けは感覚が合うので、上手く良い形が出たと思います。』

この場面のように今節のヴェルディは足元での繋ぎだけでなく、背後も積極的に狙い甲府のDFラインを押し下げることで押し込んでいく流れを作る。
甲府は前からの守備が嵌らず、ライン間か背後かヴェルディの配球の妙もあり狙いが絞れず耐える時間が長くなる。

耐えた甲府はボールを持つとペースを落とし、流れを引き戻していく。
すると27分に宮崎が遠目から思い切ってシュートを放つ。

浦上が上手く小池を吊り出し、自分の前にスペースを作り前進を行う。
これによりヴェルディの選手の意識が前に掛かり、関口に対し杉本がプレスバックできず引き出したSBの裏に宮崎が流れる。
この動きに合わせ、宮崎が空けたスペースに長谷川が飛び出すことでンドカの背後を突く形を作る。
結果的に若狭に防がれるが、クリアが宮崎の前に溢れるとまたも思い切りよく足を振り抜く。
このシュートはマテウスが反応し、防ぐ。
連動してスペースを作り、攻略していく良い形を作った。

飲水タイム明けに甲府は長谷川と宮崎のポジションを入れ替える。
これにより、ボール保持時の陣形にも変化が生じる。

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中央にシャドーが立ち位置を取っていたが、立ち位置を変えたことで宮崎がサイドに出る形でゴールに迫る。
ポジションは入れ替えたが、前線からの守備が嵌らないことは変わらず強引にボランチが出ることで背後を突かれる場面も見られる。
統一感を持って戦えていた守備ブロックだが、ヴェルディのパス回しの上手さに機能不全に陥ってしまう。

ボールを持っても前進できない甲府は38分にビルドアップのミスからヴェルディにシュートチャンスを与える。

森田と小池が規制を掛けながら中盤が連動することでボールが前進できないでいるとミスからカウンターを浴びてしまう。
今節はこの場面のようにヴェルディの守備陣は連続性を持って守備を行えていた。
組織としての連動感は高まり、個人個人でも球際激しく戦うことを厭わず甲府に自由を与えない。
前節の大敗が良い方向に働く格好となった。

41分に甲府に決定機。

山田がヴェルディの激しい守備を回避すると背後へ抜け出た長谷川へパスを送る。
クロスは合わないがヴェルディのクリアは中央にいた野津田の足元へ。
冷静にコントロールし、左足を振り抜くもライン上でまたも若狭がクリアする。
決定的な形だが、ヴェルディの身体を張った守備に今節に懸ける意気込みが伺えた。

この決定機を境に甲府が押し込んでいく流れに変わる。
だが、共に決めきれずスコアレスで折り返すこととなった。
ヴェルディに押し込まれる時間が長くなったが、甲府は耐え抜きスコアレスでハーフタイムを迎える。

3.決定力

後半の開始からは選手交代は無く試合に入る。

後半の立ち上がりは甲府のミスが目立つこととなる。
パスの出し手と受け手の意思が合わない場面が続く。
だが、ヴェルディも前半の疲れが残っているのか甲府が与えてくれた隙も手放してしまう。

徐々に甲府がサイドからの攻めでヴェルディゴールに近づいていく流れとなる。
守備の強度も高まり、セカンドボールも拾い出したことでヴェルディ陣内でプレーする時間が多くなる。

試合後の梶川諒太選手のコメントより。

『後半もそうですが、自信を持ってボールを受けないとダメです。相手が来ているからと蹴ってしまうと、相手の思う壺というか、セカンドボールの拾い合いになってしまうので、多少来ていても自信を持って受けにいかないといけないですし、逆にあそこで受けることで、相手も前からプレスをかけている分、ディフェンスとボランチの間が空いていたので、そこで(山本)理仁が上手く受けるシーンもありましたし、そういう部分をもっと自信を持ってやっていく必要があります。相手が来ているからすべて蹴ってしまうと、相手の思い通りになってしまうと思います。』

甲府の強度が上がり始めたこともあり、ヴェルディは前半のように思うようにボールを繋げる場面が少なくなっていく。

長谷川を中心にゴールに近づいていく甲府に対し、流れを変えたいヴェルディは60分に最初の交代を行う。
森田に代えて石浦を投入する。

62分に甲府は山田と宮崎に代えて野澤と鳥海を投入する。
この交代により再び、幅を取るのがWBとなり長谷川と鳥海が積極的に縦パスを引き出し中央からの前進する形を増やしていく。

68分にはリラのミドルシュートからゴールに迫る。

見逃せないのが鳥海のプレー。
荒木から横パスを受けるとトラップ一つでヴェルディの選手を2人置き去りにする。
このプレーで一気に前進した甲府は最終的にリラのミドルシュートへと繋げた。

前半とは状況が一変し、甲府が押し込みヴェルディが耐える流れとなる。
スローインでプレーが切れてもすぐに始め、ヴェルディに息する時間を与えない甲府だが、ヴェルディは耐え抜き飲水タイムに突入する。

飲水タイム明けにヴェルディは一気に3人の交代を行う。
小池、福村、杉本に代えて佐藤凌我、安在、新井を投入する。

試合後の安在和樹選手のコメントより。

『展開的にはスコアレスだったので、まずはしっかりと守備をしてから、そこからの攻撃参加というところを意識していました。入りはミスが多くて試合に入れていない感覚がありましたが、ちょっと経ってから立て直して最低限の仕事はできたのかなと思います。』

甲府も73分に野津田に代えて中村を投入する。

75分にリラのプレスから甲府に決定機。

一度ボールを失った甲府だが、リラがプレーを止めずプレスを掛けたことで安在のクリアがリラの前にこぼれる。
こぼれ球を拾ったリラがエリア内に侵入すると追いかけてきた安在を冷静に交わし、長谷川にラストパス。
だが、長谷川のシュートは枠の上へと外れてしまう。

81分にも甲府に決定機。
関口のクロスにファーサイドから鳥海が飛び込むもシュートはまたも枠の外へ。

直後に甲府は交代枠を使い切る。
リラと長谷川に代えて有田と須貝を投入する。
この交代で須貝が左のWBに入り、荒木がシャドーにポジションを移した。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『ボランチ2人が疲弊してパワーがある選手を入れた。推進力では(鳥海)芳樹を入れた。サイドでクロスで仕留めるために(荒木)翔を右に持って行き、(関口)正大にはオーバーラップで入ってほしいということでやっていた。左には(須貝)英大を入れてクロスに入っていくことを含めて交代カードを切った。クロスの回数を増やさないといけない。最後、パワープレーで行き当たりばったりになる前に決めないといけない。』

だが、決めきれずにいると終盤にはメンデスを上げてパワープレーを行う。

対してヴェルディは88分に山本に代えて、戸島を投入し得点を取りにいく。

アディショナルタイムには共にビッグチャンスを迎える。
まずはヴェルディ。

ゴールキックを深澤が跳ね返すとセカンドボールを拾った戸島から右サイドの新井へ。
縦に仕掛けた新井からのクロスは触れば1点というボールが入るが、ゴール前にいた山下に惜しくも合わず。

続いて甲府。

右サイドから関口がクロスを入れるとエリア内でフリーとなっていた中村の元へ。
狙いすましてヘディングを放つが、枠を外れてしまう。
フリーでいたからこそ慎重に狙い過ぎてしまい、外れてしまった。

試合後の新井涼平選手のコメントより。

『最後、ゴール前でフリーでシュートを打っていたシーンは何回もあった。こじ開けるという感じではないが、フリーの選手がゴールに流し込むことは世界中で課題になっていること。そこでどれだけ余裕を持ってプレーができるかだと思う。』
『勝たなければいけない、点を取らないといけないと思っていたが、ボールを運ぶ過程や準備してきたものが表現できた中でゴール前までボールを運べていた。いずれ入るという考えは良くないが、最後落ち着いてプレーできればいいのになと思っていました。』

共にゴールネットは揺らせず、このままスコアレスドローとなった。

あとはシュートさえ決まればという試合であった。
ヴェルディも同様のことが言えるかもしれない。
そう考えると引き分けは妥当のように思える。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『勝ち切らないといけないというのはあった。何回かチャンスがあった。今後この先の成長にしていかないといけない。勝ち切らないといけない。メンタルなどいろいろな焦り落ち着かせながら仕留めないといけない。我々はひとランクチーム力を上げていかないといけない。あと6試合あるので若い選手があとひと伸びできるチームにしたい。』
『一戦ごとに勝点3を積み上げていくしかない。数字上は厳しい数字になってきたが上位の直接対決もあるので我々は勝ち続けないといけない。まずは次のホーム岡山戦を勝ち切ることを共有したい。』

一戦ごとに勝点を積み上げ、成長していかなくては昇格は掴み取れない。
まずは次節岡山戦で勝ち切る試合を期待したい。

試合後の新井涼平選手のコメントより。

『数試合前からずっと勝点3を取っていくしか昇格への道がない意識の中で、勝点1で終わったことがもったいないということと、まだ終わっていないということ。6試合残っている中で、どれだけ勝点を積み上げられるか。』

新井の言うようにまだ終わっていない。
できることは勝ち続けることのみだ。

試合後の堀孝史監督のコメントより。

『前節、自分たちが不甲斐ない戦いをしてしまった中、今日はそういった試合にならないように戦う姿勢だけはしっかりと見せようということを話して臨み、そういう部分では選手たちがしっかりと出してくれたと思います。後半は多少押し込まれる時間が増えましたが、その中でも粘り強く戦えたことは、今後に繋がると思っています。』

試合後の梶川諒太選手のコメントより。

『勝ち点3を取ることができなくて残念な気持ちです。前節は不甲斐ない試合というか、応援してくださっている方々に対して見せるような試合、内容ではなかったので、まずは当たり前な戦うところや走るところなど、ベースの部分を強くやらなければいけないと思っていましたし、そこは練習の段階から要求していました。監督からも要求されていましたし、まずそこの部分を出すというところではみんなよく戦っていたと思います。ただ、結果的に勝ち点3には繋がっていないので、ここからより厳しく、これをベースにやっていかなければならないと感じています。』

試合後の安在和樹選手のコメントより。

『前節、ホームで不甲斐ない試合をしてしまったので、今週はチーム全体でそういう試合なくそうということ。戦術云々ではなくまずは戦う姿勢や球際、サッカーで一番大事な部分を全員が意識して練習から取り組んできたので、その部分は表現できたのではないかと思います。無失点で終われたことは良かったですが、逆に最後の点を取るところまではいかなかったので、そこは少し残念かなと思います。』

試合後の山本理仁選手のコメントより。

『前節は1-5という不甲斐ない、内容含めファン・サポーターの方々に申し訳ない試合をしてしまいました。チームとして今節は、もちろん良いサッカーをすることも大事ですが、それ以上に戦う姿勢や見ている人を楽しませられるようなゲームを見せるという気持ちを全員が持って戦えたと思います。試合後にロッカーに戻った時に、全員が勝ちたかったという言葉を発していましたし、良いゲームはできましたが、結果には満足していません。それはチーム全員が思っていることだと思います。』

戦う姿勢は充分に伝わったのではないだろうか。
粘り強く戦うことも含め、ヴェルディの印象とは違う戦いぶりであった。
いずれも似たようなコメントを出しているように同じ方向を見て戦えていたということだろう。
前節大敗していなければと思ってしまう。

4.MOM

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梶川諒太
攻守に運動量豊富に動き回った。
特に攻撃時には甲府のライン間で浮きながら、縦パスを引き出し起点となる働きを見せた。
前半の小池に出したパスはライン感で浮くポジショニングの良さと高いテクニックが凝縮されたプレーであった。
毎度甲府戦で活躍するイメージもあり、甲府サポーターとしては嫌な選手だ。

5.あとがき

11連勝は現実的に不可能だと思っていたため、どこかで連勝は止まるとは思っていたので負けなくて良かったと思っている。
6試合で勝ち点差8は大きい差であるが、全勝すれば京都が2勝3分1敗でも逆転できると考えると不可能な差では無い。
厳しさが増したことは事実だが、諦めた瞬間に全て終わってしまう。
リーグ戦も残り6試合。
全部勝て!!とプレッシャーを掛けてしまいがちだが、2021年シーズンもあと6試合しか見れないし、選手もプレーできない。
今年のチームは特にまとまりも感じ好きなチームなだけにプレッシャーで押し潰されるのではなく、残り試合楽しんで欲しい。
全力で楽しんだ先に良い結果が待っていると信じて。

前節の大敗からチームが変わった姿を見せたヴェルディ。
見事なリバウンドメンタリティーであった。
ヴェルディらしいサッカーでは無かったかもしれない。
それでも勝利に貪欲な姿を見せたことはヴェルディサポーターにも伝わったはずである。
昇格の可能性も潰え、残留争いに巻き込まれるリスクの少ないためモチベーションの維持が難しいのではないかと考えたがそうでは無かった。
エネルギーは取り戻しただけに残り試合でヴェルディらしさが戻ることを期待したい。

毎週サッカーに一喜一憂できるだけで満足であり、その結果が昇格となれば最高だが最終盤まで昇格を狙える位置にいるだけでも私は幸せである。
ましてやこのような物を書き、たくさんの方に読んでいただけて嬉しくもある。
昇格できなければ失敗ってことは無い。
サッカーが見られることが当たり前ではないことを知り、毎試合楽しみたいという思いを昨年から感じ始めました。
このヒリヒリ、ワクワクする状況を全力で楽しみたい!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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