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J2第29節 ザスパクサツ群馬戦 レビュー

前節首位を叩いた勢いを今節に繋げられるか。
エースが今シーズン絶望となった中で前節は宮崎が躍動したが、新たな救世主が現れるかも注目となる。

1.スタメン

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甲府
前節と同じスタメンとなった。
ベンチには岡西とバイヤに代わって小泉と有田が入った。

群馬
前節からスタメン4人を変更。
清水は5試合ぶり、吉永が4試合ぶり、中山と北川は2試合ぶりのスタメンとなった。
大前と田中は練習には合流したようだが、今節はメンバー外となった。

2.セカンドボール

立ち上がり開始1分も経たない内に群馬が敵陣でFKを獲得する。
このFKは岩上が直接狙うが、枠を捉えられない。

キックオフも含め、立ち上がりの群馬は左サイドを起点とした攻撃を狙う。

試合後の荒木翔選手のコメントより。

『前節、京都相手に良い形で勝てたので群馬にも勝ちたかったし、前節同様のテンションで試合に入れるように声をかけ合いながら試合に入った。』

このように荒木はコメントしているが、試合の入りは群馬が押し込む展開となった。

だが、6分に甲府が試合を動かす。

野津田のCKから浦上が合わせ、甲府が先制する。
ゴールエリアに畑尾、大武、青木を配置する群馬に対し浦上がニアサイドで合わせる。
上手く相手のストロングなポイントを外し、得点に繋げた。
試合後のインタビューを見てもチームとしてニアサイドを狙っていたとも語っており、狙い通りの得点となった。
また、浦上にとってはJリーグ初ゴールともなった。

試合後の浦上仁騎選手のコメントより。

『前日のセットプレーの確認では僕はファーの設定だったが、試合前のミーティングでニアの(ウィリアン)リラ選手と入れ替わり、野津田 岳人選手から良いボールが入って当てるだけで決めることができました。』

試合後の大武峻選手のコメントより。

『1点目のところは前節もセットプレーから失点しているので、甘さが出てしまった、ゲーム全体でコミュニケーションがとれずにポジションが被ったりして、そこは声の部分で解決できるところがあるので、選手たちが解決していかなければいけない。』

先制を許した群馬だが、積極的にボールを保持し甲府ゴールに迫っていく。

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群馬のビルドアップはCBとボランチの4人で行なっていく。
SBを高い位置に出すことでSHが内に入り、ライン間にポジションを取る。
これに対し、甲府はリラ+1でプレスを掛けていく。
+1は状況によってボランチかシャドーの選手が出ていくこととなる。
中盤は出ていった選手を除いた3人で中央を固めるように守る。
そうなると群馬のSBに対してはWGが出ていくことで対応するが、WBを吊り出すことで空いたWBの裏を群馬は狙っていく。

一方の甲府もボールを奪うと群馬のボールへのアプローチが強くないこともあり、安定してポゼッションを行う。

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ビルドアップ時には新井が中盤に上がり433の形でボールを動かしていく。
群馬は3ラインがコンパクトにながらブロックを組み、対応していく。
ボールを奪いに行く際には、2トップが縦関係となり新井を消しながらSHがCBにプレスに行くことで同数で嵌めていく。

押し込んだ状況を作ると宮崎と長谷川がインサイドに入り、荒木と須貝が高い位置で幅を取る。

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泉澤の離脱によってシャドーの選手がリラの近くでポジションを取ることが多くなり、リラが孤立することが減った。
これにより、リラで起点を作る回数が増えボールを失うことが減ることにも繋がっている。
また、野津田がトップ下気味にポジションを取りながら自由にボールを引き出し攻撃にアクセントを加えていく。

15分近くになると甲府が押し込む展開へと変わっていく。
群馬が前線からのプレスを掛けられず、ズルズル下がる中でボランチが食いつくこともあり、甲府にライン間を使われることが多くなる。
甲府はライン間で前向きにボールを受ける形からリラが裏に抜け出す形を続けて作っていく。

立ち上がりこそ甲府の右サイドを突いていた群馬だが、徐々に甲府の左サイドの背後を突く形が増えていく。
岩上からのサイドチェンジを使い、須貝がSBにスライドした背後へ青木を走らせる形で甲府のハイラインを破ることを狙う。
荒木にしても須貝にしても走れる、出ていけることを逆手に取られる形で背後を突かれる。

21分には群馬はCKからチャンスを作る。
事前に準備してきたトリックプレーからゴールに迫る。

飲水タイム明けは群馬が良い形でボールを保持する展開が増えるが、シュートまで繋げられないと先にチャンスを作ったのは甲府。
メンデスが運びながら、クサビを通すとホールで受けた須貝がターンから野津田へ繋ぎ、右サイドでフリーとなった宮崎へ。
駆け上がった勢いそのままに放ったシュートはゴールの上へと外れてしまう。

続けて34分にも宮崎のシュートからゴールに迫る。

河田からのフィードを野津田が中盤で拾うと左サイドを上がってきた須貝を使い、再び野津田へ戻すとエリア内の長谷川へ浮き球のパスを送る。
長谷川の落としに宮崎がミドルを放つが、これも枠には飛ばない。
チャンスは作るが、枠にシュートが飛ばないことが続く。

すると群馬にビッグチャンスが訪れる。

甲府が執念を見せて守ったが、群馬の崩しは見事であった。
きっかけは畑尾からのクサビのパス。
宮崎と山田の間は空いていたわけではないが、群馬の選手がポジションを取っていたこともあり速いパスに反応できず。
ボールを受けた久保田が強烈なミドルを放ち、こぼれたところへ青木が詰め進、北川と絡むが甲府が守りきる。

徐々に群馬のペースへと移っていくが、群馬は5バックの攻略をチームとして落とし込めていることが窺える戦いを見せる。

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立ち上がりはサイドを意識させるボールの動かし方を見せ、内を締める甲府のシャドーに外を意識させることでライン間にポジションを取った前線の選手へクサビのパスを通していく。
的を絞らせないボールの動き方を見せ、チャンスを作っていく。

久藤清一監督のコメントより。

『甲府は背後をイヤがっていましたし、間を突くことをやっていきました。』

試合後の北川柊斗選手のコメントより。

『甲府の3バックに対して、背後は狙えるというスカウティングがあって、そこは狙っていったのですが、背後をケアしてきて、逆に1.5列目が空いてきていたので、そこを使って攻撃を展開していきました。』

群馬としては背後を狙い、意識させることでライン間を突く攻めを見せる。

前半の最後には甲府が決定機を作る。

セカンドボールを拾ったところから左サイドへ展開し、須貝からのクロスを清水が弾ききれず、ファーサイドに流れると荒木が2度シュートを放つが決めきれない。

立ち上がりの先制点もあり、落ち着いて試合を進めた甲府だが徐々に群馬が意図した崩しを見せ甲府ゴールに迫った前半。
甲府がリードした要因はセカンドボールの争いで優位に立ったことだろう。

3.切り替え

共に選手交代は無く、後半に入る。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『一番大きいのはゼロで抑えて次の点が大事になるということ。プレッシャーの掛け方を変えたが、もう1回ベースに戻した方がやり易いということになった。ゾーンに分けて、行くところ、行かないところをハッキリさせた。』

すると立ち上がりいきなり試合が動く。

前半決めきれず、途中から耐える展開となっていた甲府だったが後半最初のチャンスで決めきり追加点を挙げる。

試合後の荒木翔選手のコメントより。

『ウィリアン リラ選手が「決めてください」というボールをくれたのでリラに感謝です』
『そこまで狙ってはいないが、あそこしかないかなと思って蹴って、良いところに飛んでくれた。』

決めた荒木も見事であったが、あの局面で荒木を冷静に使ったリラの判断は見事であった。

直後には群馬に決定機。

外、内と甲府守備陣を揺さぶりながらクサビのパスからスピードアップを図る。
前線で起点ができると後方から複数人が連動して絡んでいき、チャンスを作る。
崩しは見事であり、迫力もあったがシュートの精度を欠いた。

すると決定機を凌いだ甲府が押し込んでいく展開へと変わっていく。
ボールを保持する時間が増えていくが、ボール保持が増えた要因は守備への切り替えが速くなったため。
特にシャドーの長谷川と宮崎のプレスバックが速く、ボールを失った直後に奪い返せることが増えたことで群馬がボールを持てる時間が減ることとなった。

リードを許している群馬は56分に北川に代えて高木を投入する。

群馬はゴール前にハイボールを入れていき、攻め手を探るがメンデスが立ちはだかりシュートまで繋げていけない。
一方の甲府はリードしていることもあり、無理をせず相手を見てボールを動かしていく。
前半同様にセカンドボールの争いでも優位に立てていることもあり、バタバタせず大人な試合展開を見せていく。

甲府の切り替えの速さやセカンドボールの争いで勝てない群馬は65分に2人の交代を行う。
吉永と青木に代えて内田と高橋を投入する。
この交代で内田がボランチ、高橋が左SBに入り、岩上が右サイド、小島が右のSBにポジションを移した。

直後に甲府に3点目が入る。

リラのポストプレーを起点に長谷川のスルーパスから荒木がグラウンダーのクロス。
最後はファーサイドに詰めたリラが押し込んで甲府がリードを3点に広げた。
リラは2試合連続、中断明けは6試合で4得点と好調を維持している。
この場面、リラへパスを入れるだけでなく長谷川は再度近づきパスを受けに行っているが、前半戦はこのようにリラの近くで絡む選手が多くは無かった。
また、長谷川に落とした後のリラは足を止めずクロスに飛び込んでいる。
このようなプレーも前半戦のリラには少なかったように思える。
コンディションが上がったことで危険な位置に飛び込めるようになり、味方との距離感が近くなったことで孤立することも無くなったことが好調の要因と言えそうだ。

飲水タイムを経て甲府が2人の交代を行う。
長谷川と野津田に代えて三平と中村を投入する。

ボールを保持し、点を取りに出ていく群馬と引いて構えカウンターで仕留めることを狙う甲府という構図で試合が進んでいく。

77分に甲府は2人の交代を行う。
リラと宮崎に代えて山本と野澤を投入する。
これにより三平がワントップ、中村と野澤がシャドー、山本がボランチに入った。

81分には群馬が最後の交代を行う。
進と小島に代えて白石と金城を投入する。

甲府は長谷川と宮崎を交代したことで中盤のラインが下がり、群馬からボールを奪えなくなっていく。
ボールを奪いマイボールにしても、その後のボールの失い方が悪く簡単にボールを渡してしまう。
すると88分に群馬に決定機。

サイドを揺さぶり、最後はファーサイドへのクロスからゴールに迫った。
この場面のように群馬は幅を取り、相手を揺さぶりながらチャンスを作るところまではできているだけに後は決めきれるかが今後の課題となる。

90分に甲府は5人目の交代を行う。
山田に代えて有田を投入する。

最後まで守備への切り替えのスピードが落ちなかった甲府が2試合続けての完封勝利を挙げた。
切り替えの速さで群馬を上回ったことが後半突き放す要因となった。
終盤の逃げ切り策には課題を残したが、2戦続けて3−0とスコア上は快勝。
リラと宮崎を代えた中で守り切ることを選択したが、2試合結果が出た最大の要因であるアグレッシブさを失うこととなった。
試合の締め方として引いてブロックを作ることで無失点でゲーム終わらせることを選択するのか4点目、5点目を取りにいく姿勢を残すのか。
77分の交代以前は守りに比重を置きながら4点目を決めにいく姿勢は残していたが、交代以降は中途半端となってしまった。
試合の終わらせ方を失敗し、勝ち点を失った試合もあっただけに全体で統一感を持ちたい。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『早い時間帯にセットプレーから点を取れたことがよかった。守備は前節同様にアグレッシブさが出て後半はいい時間帯に2点目が取れた。危ないところもあったが、相手のコンビネーションを突けた。前節に続いて3-0ということで次もしっかり勝ち切って上位を追いかけたい。』

今節は得点を取れた時間帯が良かったといえる。
前節同様にアグレッシブな姿勢も見られ、この2試合のアグレッシブさを今後の基準としていきたい。

試合後の浦上仁騎選手のコメントより。

『勝てずにどこかで自信をなくしているようなところもあったが、町田戦で0-3の完敗を喫して、「もう1回やろうよ」となって、京都戦につながった。チームは良い状態にあると思います。』

町田相手に喫した完敗、泉澤の今季絶望。
最悪なチーム状態となったからこそ吹っ切れて今に繋がっている。
勝ち始めたことでこのアグレッシブさが無くならないことを願いたい。

試合後の久藤清一監督のコメントより。

『甲府ゴールを脅かしたシーンはあったのですが、そこで決められればですが、そこで決めないといけない。準備だったり、狙いだったりが、まだ足りませんでした。』

試合後の北川柊斗選手のコメントより。

『チャンスがあったのですが、得点につなげられなかったのでトレーニングから精度を追求していかなければいけないと思います。』

久藤監督と北川のコメントにあるように決められていれば、違った展開となっていただろう。
今後は決めきるところにフォーカスして次節以降に向かっていきたい。

試合後の大武峻選手のコメントより。

『連敗してしまった結果は変えられないので次に向かって、今日の試合に限らずに、これまでの課題を修正して、勝利に向かって準備していきたいと思います。』

終わった結果は取り戻せないが、終わったことから学び次に繋げていくことはできる。
これは勝った時も同様で、甲府にも課題は残った。
共に次節以降課題を修正し、より良い試合を期待したいところ。

4.MOM

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ウィリアン リラ
1ゴール1アシストとストライカーとしてチームを勝利に導く結果を出した。
中断明けはコンディションも良く、得点以外の貢献度も高く今節は前線で起点となり、プレスの先導役ともなりチームを牽引した。
攻守両面でリラの活躍がチームに勝ち点3をもたらした。

5.あとがき

2戦続けて3対0と快勝を収めた。
泉澤を欠いた中で、2試合続けて3得点を挙げたことはチームとしての成長も感じさせた。
だが、結果こそ同じだが今節の戦いは前節と比べるとスコアに見合った試合とは言い難かった。
快勝の中に課題が出たことは今後に繋がっていくだろう。
チャレンジャー精神を忘れず、一戦一戦戦っていくことで勝ち点を積み上げていきたい。

結果こそ厳しいものとなったが、群馬は久藤監督就任後勝ち点を積んでいたことが偶然ではないことを感じさせた。
前半の決定機が決まっていたら試合の流れは違ったものとなっていただろう。
決定力不足という課題は依然残ったものの大前や田中が復帰間近ということでその問題も解決に向かっていくだろう。
残留争いからは抜け出る力は間違いなくあるだけに今後の群馬の戦いも注目となる。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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