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ルーブリックの提示による評価基準・評価目的の教示が学習者に及ぼす影響ーテスト観・動機づけ・学習方略に着目してー

 鈴木雅之(2011).「ルーブリックの提示による評価基準・評価目的の教示が学習者に及ぼす影響ーテスト観・動機づけ・学習方略に着目してー」『教育心理学研究』59 巻2号,131-143

「学びに向かう力・人間性」という資質・能力の育成が求められるようになり、今まで以上に児童の動機づけや児童が主体的に学習に取り組むように指導する流れが強まっています。これはとても好ましい流れではないかと考えています。

 さて、この論文において、著者の鈴木先生はインフォームド・アセスメントの重要性について指摘している。被評価者は評価者がどのような基準で評価しているのかをしっかりと理解してから評価されるほうが納得して評価を受け入れることができるのではないでしょうか。就職試験の面接試験がコネだのなんだのと問題になるのは、評価基準が不明瞭であることが原因の一つだと思われます。学校における評価においても同じことが言えます。不透明な評価では子供も保護者もなっとくしないでしょう。この、評価者と批評家者の間に、評価の手続き等において納得できる状況を作ることがインフォームド・アセスメントです。

 また、この論文において鹿毛(1992)について言及されており、成績を付けるために行うとテストと、生徒自身が到達度を確認する目的で行うテストでは、後者のほうが児童の動機づけに効果が見られると述べられています。同じようなテストを行う場合でも、目的や評価の方法などによって児童・生徒の動機づけに影響を与えることがこの研究からもわかります。

 ルーブリックを利用することで、インフォームド・アセスメントを実現し、児童の内発的な動機づけを促そうというのがこの研究のねらいとなります。

 実験方法は、数学の授業でルーブリックを利用するグループと利用しないグループに分け、事後テストにおいて有意差があるかを検証するものです。ルーブリックを利用することで事後テストにおいて成績がよいという結果が出てています。ルーブリックの有無での実験・検証ですので、インフォームド・アセスメントが成立したのかはわかりませんが、効果がでたことからもインフォームド・アセスメントにも一定の効果があったことがうかがえます。

 この論文から、ルーブリックを事前に提示する効果を実感しました。英語においてもスピーキングテストやライティングのチェックにいきなりルーブリックを提示するのではなく、活動前に提示することが効果的だと考えられます。

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