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チーターの爪はなぜ出しっぱなし?

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チーターは単独で狩りをするネコ科動物です。同じく単独で狩りをするイエネコやヒョウなどは、木などが生茂る場所で獲物の近くまで忍び寄り、飛びかかってとらえます。近く際の物音を最小限にし、狩りの時の重要な武器となる爪が削れてしまうのを防ぐために爪は出し入れできるようになっています。

チーターはこうしたネコ科の動物の仲間でありながら、爪は常に出しっぱなしでしまうことができません。

動き方には足や体の動き方によってさまざまな種類(常歩(walk),速足(trot),襲歩(gallop) )があります。この中で最も高速な動き方が襲歩(しゅうほ)と呼ばれるものです。動いている途中に宙に浮かぶ瞬間がある走り方です。
この時背骨はある程度曲がります。この曲がりの程度が少なく安定した走り方ができるのが交差襲歩というもので、着地する足の順番は右後→左後→右前→左前で前後の足は左右交互に接地します。
ウマはこちらで走ります。

チーターは回転襲歩といって、着地する足の順番が右後→左後→左前→右前でぐるりと回転するように接地します。

背骨の揺れでいうと、回転襲歩の動物はかなりガタガタするので人はとても乗れないでしょう。


さて、チーターの速さは歩幅にあります。1歩幅(完歩)は8mもあると言われます。チーターは体を伸ばして宙に浮くことで歩幅を伸ばしています。そして前がわに振り出した足を引き戻す過程で地面に接地することで地面から受ける衝撃をやわらげ、スピードを鈍らせないようにしています(キックバック走法)。この時に常に出た爪がスパイクのように作用して、しっかり地面を捉えてまた次の足を動かすのに役立っていると思われます。

余談ですがわたくし、ふーは学生時代馬術部でした。安定しているはずの交叉襲歩の馬からですら、何回も落馬していました。骨を折ってドクターヘリで運ばれたのも良い思い出です。おそらくチーターに乗ったら一歩目で落チーターしてしまうでしょう。

参考:走る」―チーター(Acinonyx jubatus)の 高速走行―
和 田 直 己 , 哺乳類科学 52(1):95-101,2012


犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。