見出し画像

キリンはブラウザー ウシはグレーザー①

キリン

キリンの食べる行動を観察しよう!:早朝と午後遅くが一番食べる行動が多いけど、そのあとの反芻は正午近くがピークだよ!

家畜は肉や乳、卵などを効率よく生産するために研究が盛んに行われており、どの家畜にどんな栄養が必要なのか明らかになっていることも多いです。しかし、動物園では家畜化されていない野生動物も多く飼養されています。

公益社団法人日本動物園水族館協会(JAZA)は動物園や水族館の役割を「種の保存」「教育・環境教育」「調査・研究」「レクリエーション」の4つとしています。

希少な野生動物は研究が家畜ほどされておらず、栄養に関する情報が十分にないこともあります。そうした場合は生物学的に近いと考えられる家畜の研究成果を参考にします。例えばキリンは偶蹄目(ぐうていもく)で反芻をする動物であるため、牛も食べるイネ科の草(チモシー)を与えることもあります。地面に生えているイネ科などの草を食べる食性の動物をグレーザー(Grazer)、キリンのように樹の葉を食べるキリンはブラウザー(Browser)と呼びます。

アカシア、Commiphora、Therminaliaが主な主食で、ハーブや地面に生える草は食べません。
ブラウザーであるキリンの歯はイネ科植物の粉砕には適しておらず、野生のキリンよりも飼育されているキリンはうんちの粒が大きくなります。キリンが主食とする樹の葉には比較的発酵速度の速いペクチンがかなり多く含まれており、イネ科植物には発酵速度の遅いヘミセルロースとセルロースが多く含まれていることも明らかになっています。また牧草にはケイ酸塩silicateも多くより繊維質であるなど、栄養素性上もいくつか違いがあります。

そのため、動物園でもできるだけ自然の状態に近づけようと樹の葉を与える工夫をしていることもあります。大人のキリンは乾燥重量で約19kg、生重量で66kgの植物を食べます。これを全て毎日樹を入手するのは困難なので、牛が食べる牧草を与えることも必要です。

早朝と午後遅くが一番食べる行動が多いですが、そのあとの反芻は正午近くがピークです。反芻はいちど胃に送り込んだ食物を再度口に戻して咀嚼する行動です。

参考:EAZA Giraffe EEPs. EAZA Husbandary and management guidelines for Giraffa camelopardialis(2006)

犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。