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心臓に住む寄生虫・フィラリアのなが〜いお話②

自由研究のヒント
気象庁のホームページで住んでいる地域の天気の最高最低気温情報を入手して、HDUを自分で算出してみよう!

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前回の記事ではフィラリアの幼虫(Larvae) が、感染した犬から蚊に吸われてL1からL3まで成長し、新たな犬に吸血した際に体に入ってL5まで成長し、心臓に移動して大人になることをご紹介しました。

フィラリア に気を付ける期間を算出してみよう〜HDU〜
フィラリア 症を予防するにはわんちゃんが生活している地域の、蚊が出ている期間だけフィラリア をやっつけるお薬を与えればよいということです。
日本は南北に縦長な形をしているので、北海道と沖縄では平均気温もだいぶ異なってきます。
どのように各地の獣医さんは予防する期間を決めているのでしょうか?
このときに用いるのがHDUという単位です。これは英語のHeartwarm Development Unitの頭文字を取ったものです。
HDUは、蚊の体内に取り込まれたフィラリア の赤ちゃん(ミクロフィラリア)が新しい犬に感染できるくらいまで成長するのに必要な温度の単位です。L1からL3になることができる温度、という意味です。HDUを計算することで、その地域でフィラリア 感染する期間を予測することができます。

小学校高学年向け:HDUの算出方法について
1日HDU=1日の平均気温-14
平均気温=最高気温+最低気温÷2

たとえば2020年6月5日の東京の最高気温予報は20度、最低気温予報は29度です。
(20+29)/2=24.5(6月5日の平均気温) 
24.5-14=10.5
となり6月5日の1日HDUは10.5となります。

蚊が活動し始めるのは気温が11度付近と言われているのでお住まいの地域の平均気温が11度を越えた時点から毎日HDUを開始していき、130を越えた日がフィラリア が感染可能になる日と推定します。

感染開始の目安:1日HDUを足して130を越えた日
感染終了の目安:直近30日の合計HDUが130を下回った日
※HDUがマイナスになった際はゼロとします。

注意が必要ですが、HDUでわかる感染開始日と終了日は蚊の体内でミクロフィラリア が成長できる期間なので、蚊が実際に飛び始めたり姿がみえなくなるタイミングとは別のものです。

また、フィラリア を予防するお薬はL1~L5までの全てのミクロフィラリア と成虫全てに効果があるものではなく、特定の成長段階にいるものをやっつけるお薬なので飲ませる期間には注意が必要です。

どのくらいの期間予防が必要なのか、フィラリア 症の症状については次回ご説明したいと思います。

参考資料
DSファーマアニマルヘルス 疾病解説シリーズ: (https://filaria.jp/html/hdu/kanto/index.html#tokyo)

気象庁 週間天気予報:https://www.jma.go.jp/jp/week/

感染症媒介蚊対策に関する実技検討会:https://www.niid.go.jp/niid/images/ent/PDF/dengue2014.pdf

犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。