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桜の蜜を吸ったのは誰?お花見で野鳥観察

桜も満開となる季節がきました。地域によっては見頃を過ぎ散り始めているところもありますね。では最初にクイズです。桜の花を眺めていると、木下に桜の花が一輪まるごと落ちていることがあります。これをした犯人は次のうち誰でしょう?

①ヒヨドリ
②スズメ
③メジロ

メジロ桜送蜜者

体が大きいヒヨドリが蜜をたくさん吸うために落とした?いいえ、答えは②スズメです。蜜を吸うのに大切なのは体の大きさよりもクチバシの形状が大切になります。

メジロはくちばしが細いため、花の正面から蜜を吸うことができます。その時にクチバシや顔の周りに花粉が付き、次の花に移って蜜を吸おうとした時に授粉することがあります。このように花粉を花から花へと運び植物が増えるのに役立つ生き物を送粉者といいます。

ヒヨドリはメジロよりも大きく市街地でも観察しやすい野鳥ですが、彼らも細長いクチバシを持っているので枝にぶら下がったりして桜の正面から蜜を吸っている様子が観察できます。

こうしたメジロやヒヨドリは桜にとっての送粉者です。ただ、都会で多くみられる桜の種類のソメイヨシノは花粉のやりとりではなく接木(つぎぎ)で殖やされることが多いので、桜の盗蜜がよくみられていても実際に植物の繁殖が妨げられている、というわけではありません。

一方、花粉のやりとりに関与せずに蜜だけを吸うことを盗蜜といいますが、桜にとっての盗蜜者はスズメや外来種のワカケホンセイインコです。図鑑でこうした鳥のクチバシをみてみてください。送粉者のメジロやヒヨドリより太いクチバシをしているのがわかります。

鳥と花の間の関係は花の大きさに対しての鳥のクチバシの長さなどによって変わるので、ある花にとっての送粉者が別の花では盗蜜者になることもあります。

メジロは桜にとっての送粉者ですが、小笠原諸島においてメジロ(小笠原といえば固有種のメグロがいますが、観察されたのはメジロです)がハイビスカスとウナヅキヒメフヨウを盗蜜しているのが観察されています。スズメが桜の盗蜜をする時のように花の根本から切って吸うわけではなく、花の基部に穴をあけて吸うようです。

みなさんもお花見に行かれた時は桜だけでなくそこに集まる種々の野鳥がどんな風に蜜を吸っているのか観察してみてください。


参考

・三上 修, 三上 かつら, スズメの盗蜜によるサクラへの害を定量化する方法, Bird Research, 2010, 6 巻, p. T11-T21, 公開日 2011/01/08, Online ISSN 1880-1595, Print ISSN 1880-1587, https://doi.org/10.11211/birdresearch.6.T11, https://www.jstage.jst.go.jp/article/birdresearch/6/0/6_0_T11/_article/-char/ja


・松井 うみ, 三上 修, スズメの盗蜜行動によってサクラの花はどれくらい落とされるのか?, 日本鳥学会誌, 2019, 68 巻, 2 号, p. 327-333, 公開日 2019/11/13, Online ISSN 1881-9710, Print ISSN 0913-400X, https://doi.org/10.3838/jjo.68.327, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjo/68/2/68_327/_article/-char/ja


・上田恵介•唐木雅徳, 1997. セイロンベンケイ Bryophyllum pinnatum(Lam)Kurzの花から盗蜜する小笠原のメジロ Zosterops japonica.Strix15 : 122-126.

犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。