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犬とキスしない方がいいのはどうして?
※本来細菌の名前はイタリック字体で示すべきなのですが、変更の仕方がわからずそのまま表記しています。変更の仕方が分かり次第、修正します。お見苦しく申し訳ありません。
犬の胃袋には主にLactobacillus属菌(ラクトバシルス、乳酸菌のひとつ)とHelicobacter属菌がいます。
ラクトバシルスは乳酸菌として有益であり、胃から肛門まで腸管のいたるところに存在しています。
Helicobacterヘリコバクター属菌は人でも胃炎や消化器潰瘍の原因になったり、胃がんに関与することも知られています。
ブラジルで行われた研究では、96頭の犬を調べたところ、組織学的な検査では全ての犬からヘリコバクター属の細菌が検出されたと報告しています(持病があったかは記載なし)。
ヘリコバクターがいるかどうかは(有病率)、その地域の衛生的・経済的水準に反比例しているといわれているため、国によって結果は大きく違います。
日本で144頭の消化器疾患のある犬の胃を調べると、34.7%の犬にヘリコバクター属菌が感染していたことがわかりました。
健康な犬ではもっと低いかもしれませんが、キスなどは避けたほうがよいでしょう。
小児の胃に感染したヘリコバクター・ピロリ菌の撲滅に抗菌薬と胃酸分泌抑制剤の投与を行った群(オメプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシンのOAC療法)と、これらに加えてLactobacillus casei DN-114 001という乳酸菌を加えた群の除菌成功率を比べると、OACだけよりもOACと乳酸菌を投与した群の方が除菌成功率が高いという報告もあります。
治療企図解析(ITT解析。治療群と対照群を変えずに解析する):OAC-LC除菌率84.6%, OAC群:57.5%
per protocol 解析(PP解析、プロトコールから逸脱した患者を除外したもの。)OAC-LC除菌率91.6%、OAC群61.3%。
こうした乳酸菌を含むプロバイオティクス は犬や猫のヘリコバクターの除菌にも有効かもしれませんが、まだ研究途上です。
まずは可愛くても犬や猫とはキスしたりするのは避けましょう。
参考:
Effects of a specially designed fermented milk product containing probiotic Lactobacillus casei DN-114 001 and the eradication of H. pylori in children: a prospective randomized double-blind study, Josef Sýkora , Gastroenterol actions , 2005 Sep;39(8):692-8. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16082279/
PREVALENCE OF Helicobacter spp. IN DOGS FROM CAMPO GRANDE-M, Brunna Mary Okubo, https://www.scielo.br/scielo.php?pid=S1809-68912017000100304&script=sci_arttext&tlng=en
Epidemiological study of gastric Helicobacter spp. in dogs with gastrointestinal disease in Japan and diversity of Helicobacter heilmannii sensu stricto, Sanae Kubota-Aizawa etal, 2017 Jul;225:56-62. doi: 10.1016/j.tvjl.2017.04.004. Epub 2017 May 3
犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。