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論文紹介:犬のうんちは午後の方が水分多め

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名は体を表すという言葉があります。同じように、うんちは体(の状態)を表すと思います。

ペットの臨床でもうんちの形から消化の状態を把握することができますし、寄生虫や細菌など病原性微生物の存在も調べることができます。ある種の消化液の分泌不全などもうんちから診断していきます。

犬のうんちはお散歩の時にしか排便をしない子や、トレーニングによって排便のタイミングが人間によって管理されている場合もあります。

もちろんフードや時間の影響も強く受けます。
今回は植物性タンパク質と肉由来タンパク質と、午前と午後でうんちの硬さはどの程度変化するのかという論文を読んだのでご紹介します。

この研究はフロリダの大学で行われました。
論文:Water content of faeces is higher in the afternoon than in the morning in morning-fed dogs fed diets containing texturised vegetable protein from soya


 調査期間と対象:8頭の未去勢オスを4グループに分けて各フードを1週間ずつ与えました。与えるのは朝8時から9時の間で統一しました。すべてのフードは77%が水分の缶詰フードでした。カロリーや栄養素の比率も揃え、変わるのはタンパク質の種類(植物由来か肉由来か)。

 フードに含まれるタンパク質の由来を、ダイズ由来植物性タンパク質と肉由来タンパク質の比率で変えたものを与えました。比率については下記の通りです。

 0:100,(牛肉100%) 14:86(動物性タンパク質が多い)、29:71(2動物性タンパク質が多い) 、57:43(最も植物性タンパク質が多い)。

結果:8頭の犬のうち6頭は午前と午後に排便をしました。午前と午後に排便されたうんちを比較すると、午後に排便されたうんちの方が水分が含まれる量が多かったのです。
また、各フード別の水分量を調べてみると、水分量は植物性タンパク質(TVP)が含まれていたものが午前のうんちも午後のうんちでも水分が最も多かったのです。
 逆にうんちの水分量がもっとも少ないのはフードに含まれるタンパク質が牛肉100%のものでした。

著者らはその原因として、ダイズタンパク質は牛肉タンパク質よりもわずかに小腸での消化性が弱いこととと小腸で消化されにくいNフリーの抽出物が原因だとしています。
午後に水分量が増えたことに関しては、犬では草食動物と比べて大腸が短いため、水分を吸収するのに時間が短かったからだと予想しています。

朝出るうんちは、前日のフードの影響を受けるため、大腸にとどまる時間は12〜17時間ほどとされますが、午後にでるうんちは朝のご飯が大腸にとどまる時間は7~10時間と短いためとも予想しています。

ふーのコメント:草食動物ではなが〜い腸や胃で微生物に代謝してもらって長い腸でしっかり水分を吸収できるけれど、犬のうんちは消化管が短いぶんフードや時間による影響を受けやすいのかもしれませんね。
今回の論文では植物性タンパク質が多すぎるものでは水分が緩めになってしまうとありますが、うんちの滞留時間の問題と著者らも指摘していますし、療法食の材料として植物性タンパク質がとてもよい場合もある(慢性腎臓病の管理など)ので、状況に応じて使い分けるのが一番ですね。


個人的な経験としても、犬や猫の下痢はよくあるのですがウサギが下痢をしていて…という主訴で、実際に盲腸便という生理的にでる緩めのうんちではなく本当に下痢だったときはぎくっとします。

もっとうんちについて真剣に向き合わないといけないと思っています。しばらく動物のうんち に関する投稿が増えるかと思います。


文献:Water content of faeces is higher in the afternoon than in the morning in morning-fed dogs fed diets containing texturised vegetable protein from soya
Richard C. Hill etc, British Journal of Nutrition (2011), 106, S202–S205

犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。