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動物の血液量

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もの言わぬ動物の健康状態を把握するのに、血液検査はとっても大切です。血液には、全身の細胞に必要な酸素を運ぶ赤血球の他にも血小板や白血球など、体にとって重要なものがたくさん含まれています。どの動物も、体重の約6〜10%が血液です。
猫では体重の約5.6%、犬だと8.6%が血液量とされています。例えば3kgの猫だと168ml、10kgの犬だと860mlの血液が存在しています。だいたい通常の血液検査では体重の1%程度までの範囲で採血することが多いです。院内で計測する項目以外に、外部の検査機関で測ってもらう項目もある際はそれよりも多くなることもありますが、健康には支障のない量にとどまります。


輸血について
人間では、全血液量の12%を献血しても医学的には問題ないとされています。実際の動物病院の現場では、輸血をする場合は協力してくれる動物の体重の10%(猫)から20%(犬)を採血しています。
体重3kgの猫なら30ml、10kgの犬なら200mlくらいまで最大で採血することができます。全血液量の14〜22%程度までは一度に採血できるということです。人より多いですね。人間の医療では「血液バンク」が存在し、血液を一括で集めて保管・管理する機関がありますが、動物にはありません。そのため、血液の確保がとても大変です。動物病院でドナーとなってくれる動物を飼っているところもありますし、輸血が必要なペットの同居動物やボランティアなどを募っているところもあります。

輸血に協力してもらうドナーの動物の健康状態や体重にも規定があり、安全に輸血ができるように様々な指針が設けられています。


参考:
・小林 輔,藤野 泰人,長島 友美,荻野 直孝,中野 優子,周藤 行則,入江 充洋, 成田 正斗,下田 哲也,中村 遊香,遠藤 泰之,久末 正晴,内田 恵子,日本における犬と猫の献血指針の提案,動物臨床医学 22(3)115-118, 2013

・実験動物の被験物質の投与(投与経路、投与容量)
及び採血に関する手引き,http://www.ilas.med.tohoku.ac.jp/committee/rule_hiken.html,EFPIA(欧州連邦製薬工業協会)、 ECVAM(欧州代替法バリデーションセンター)2000年2月作成

・平成23年4月1日から献血の可能年齢等(採血基準)が代わります, https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/kijun/, 厚生労働省(2021,06確認)

・R.Flindt , 浜本哲郎 (2007) , 数値でみる生物学, シュプリンガー・ジャパン

・輸血用血液製剤ガイドライン解説書(Q&A)(案),http://www.riasbt.or.jp/about/contribution/blood-products-gl, 一般財団法人生物科学安全研究所(2021, 06確認)


犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。