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魚の色

 ある時、幼稚園のイベントで図画工作展があった。市内の幼稚園や小学校に通う生徒の作品を、市民センターとかに飾って眺めるイベントだ。私が通っていた幼稚園のその時の出展のお題は、幼稚園が、どっかからもらってきたスポンジの端材を好きに使って、お魚の形を作るものだった。私は、せっせとグレーのスポンジを集めて、お魚を作った。スポンジなので、魚の光沢感がでないのは残念だが、全面グレーの魚らしい魚ができあがった。それなのに、本当にこれでいいのかと幼稚園の先生に何度も何度も確認された。私の家で夕飯に出てくる焼き魚の色はグレーだったので、先生はなぜそんなことを聞くのだろうと思った。

周りの子たちは、ピンクや黄色のカラフルなお魚だった。

 この時の図画工作展の出展作品の写真が今でも実家にあるのだが、その写真を見るたびに、少し苦しい気持ちになる。カラフルなお魚が並ぶ中で、私が造った一際クールな魚をみて母親はどう思っただろう。どんな気分で写真を撮ったのだろう。私は母親を悲しませてしまったかもしれない。もしかしたら、夕飯のメニューに鯛を出していたら・・・なんて母は思ったかもしれない。私みたいな平凡な人間は、子供らしく、女の子らしく、カラフルなお魚を造るべきだった。

そういう配慮ができなかった幼少の頃の自分に今でも腹が立つ。

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