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葛藤の物語(継続)

これは前回の続きで、”ボク”がこれから進んだ道のお話になります。

ボクは耐えた。生命力を削りながら耐えた。精神安定のために限られた休みの時間をすべて趣味に注いだ。この時だけは仕事のことは忘れよう。そう考えていた。しかし、気づいたら仕事のことばかり考え込んでいた。考えないように!考えないように!と思うと反対に深く考え込んでしまう。ご飯を食べる時、お風呂に入っている時、車で移動中、バスや電車の中、ふと気が緩むと過去の仕事ぶりが蘇ってくる。そして自分を責め立てる。

 「あー。。。何やってるんだろう。。。」

声にならない声で呟いた。いかに自分が劣っていて、向上心がなく、反骨心がない人間なのだろうと自己否定をするようになってきた。このままではダメだ。なんとかしなければ!でもこの辛い経験が将来あってよかったと思えるようになるはず。男性と初めて会った時にもそう言われたじゃないか。頑張れ、自分。

大丈夫、全てうまくいく

また辛い時間を繰り返す。商品の説明をし、クレームに繋がり、損害補償の説明を男性が淡々とする。1週間が経ち、1ヶ月が経ち、3ヶ月が経ち、半年が過ぎ、1年が経とうとしていた。

「そろそろ慣れてきたんじゃない?大丈夫?」
あの男性が珍しく話しかけてきた。まるで生存確認をするかのように。

「はい、だいぶ気兼ねすることなくできるようになってきました。ありがとうございます。」
ボクはそう答えた。本心とは正反対の答えを口にした。しかし、人間は環境に慣れる特徴があるので、ボクはその特徴が周りの人より優れていたようだ。

「実はね。だいたい半年ぐらいで辞めちゃうんだよね。せっかく暗闇から救い出してあげたのに、保証の話も君達が精神的に辛い思いをしているのがわかっているからクレーム対応を減らすための一つの方法なんだよね。その点を理解せずに悪徳だとかブラックだとか言って辞めていくんだよ。従業員を守るのが、私の管理者としての仕事だからね。」
そう言われてボクは「そういうことなんだ。」と妙に納得していた。守ってくれる存在がいる。ならば思いっきりやってボロボロになったとしてもまた救ってくれるに違いない。そう、あの暗闇の世界にまた入ってしまっても救ってくれる。その恩を今返す時なんだ。

二度とあの世界には戻りたくない

1年が経ち、年間の目標が設定された。売上5000万。1年目の売上が700万だった。そのうちクレームに繋がり、補償金を払った件数は5件。単純に今の7倍は動かないといけない。果たしてボクにできるのだろうか?

まだ2年目だし、今までの経験を活かせばたとえ達成できなくても仕方がない。できなかった原因が見つかって翌年にその原因を解決していけばきっと達成できるようになる。そんなことを思いながら仕事に向き合っていた。
 自分たちを守ってくれている存在が気持ちを楽にしてくれる。そしてできなくても支えてくれると信じていた。気持ち次第で自分のパフォーマンスが変わるはず。もっと自信を持っていくべきだ。自分に言い聞かせていた。

大丈夫、守ってくれるさ

今まで男性がクレーム対応時にしていた説明をボクがするようになっていた。捨て台詞を吐かれたことも大声で怒鳴られたことも胸ぐらを掴まれて殴られそうになったこともあった。それでも会社が守ってくれる。そう信じていた。未来はきっと明るくなる。今この瞬間を耐えることさえできれば。

仕事に奮闘するようになり、休日はずっと寝ていることが多くなった。外に出かけず、趣味にも没頭せず、食事も手抜きになり、カーテンで締め切った部屋の中で過ごすことが通常になってきた。それはまるであの暗闇の世界に似たようなものだった。


あれ?ここはあの世界?…と同じ?いつの間に?
ボクはふと自分のいる世界を客観的に捉えることができた。できることをやっていたはずなのに、元の世界に戻っていく。それはなぜなのか?
もしそこにさらに上を目指そうという向上心があったならば、世界は少し変化していたのかもしれない。

ありそうでなさそうな話


本日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回は前回の続きで、もし、このまま続けていたらどうなったのか?という話でした。何の努力もせず、ただ言われた通りにやっただけで成果が出る。と思っていたけれど、実際は出ていなかった。むしろ衰退して以前と同じ状態になってしまったというバッドエンドですね。しかし、そこで終わらせればバッドエンドですが、最後にもあるように、向上心をもって変化を起こそうとすれば、また違う世界に行くことができ、明るい未来になっていた可能性が高くなります。ボクはそれが言いたかったのです。いつもと同じだから辛いと思うのならば小さなことでも変化を付けて流れを変えてみることが重要だと思います。

皆様のご意見、ご感想をコメントしていただければボク自身の成長になります。

心の支えとまではいきませんが、少しでも不安が和らげばいいと思っています。そしてなにより、賛同していただけると、とても感謝します。