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葛藤の物語(序章)

無職です。仕事探しは厳しい状況。我慢して一つのことに集中して働いてきたけど、道を外れると真っ暗な部屋から抜け出すことに必死。

出口はどこ?出口はどこだ?


誰も答えてくれない。なぜなら誰もいないからだ。

助けてくれ!助けてくれ!

叫んでも虚しく声が響き渡る。
耳を澄ましてみると上の方から笑い声や楽しそうな声が聞こえてくる。しかし人の姿は見えない。

手の届かない世界。ここから二度と出られないのだろうか。そこに差し伸べられた手。どんな手かはわからなかったけど必死で掴んだ。
全身が引き上げられる感覚。明るい光が目を眩ます。反射的に目を閉じる。

目を開けるとそこは明るい部屋。手は泥だらけになっているのを見ることができた。周りを見渡しても人の気配はない。

「やぁ!」

突然後ろから声がした。
振り向くとモニター越しに若い男性、その隣に一歩引いて若い女性が立っていた。
「私のいうことを聞いてその通りに実行してくれれば元通りの世界に戻してあげるよ。私はそういう人を100人以上見てきた。そして99%以上の人を元いた世界よりも素晴らしい世界に連れて行った実績がある。さぁあなたも私を頼ってみるかね?」

もう一度自分の汚れた手を見た。汚れた手。暗闇の部屋。誰もいない部屋。助けてくれない。このチャンスを逃すと助からないかもしれない。

「お願いします。」

そう答えると、男性はニッコリ微笑んだ。

月日は流れ、ボクは何故か苦しい思いを抱いていた。男性の言う通りにやってきて元通りの世界に戻ったはずなのに。
ボクは隣にいた女性に相談した。

「楽しいと思えないのは何故でしょうか?」
気軽に声をかけたつもりだった。けれど女性には思い悩んでいる風に見えたのだろう。

「辛いなら辞めれば?また暗い世界に戻ればいい。それが嫌なら我慢して楽しくなることを待つだけよ。」

女性の言葉は冷たかった。ボクは自分の頑張りが足りないと思い、やること以上の成果を求めるようになった。そして事件が起きた。

「あなたから買ったコレだけど、全然言われた効果が得られないじゃない。もしかして騙したの?」
そんなはずでは…と頭で思いながら詳細を聞く。人体への影響は体質など個人差があることは伝えた。しかしそれでも納得できないようで代金の返金を求められた。こうなってしまったら何を言っても聞く耳を持たない。返金します。という回答をもらわない限り引き下がらない様子だ。

どうしよう…

不安になってきたボクを横目にあの男性が客の方へと向かって話し始めた。
「お客様のおっしゃる通りです。しかし効果には個人差がありますのでそれをご購入時にご説明させていただいておりますしこちらにもその証拠として契約書の控えがございます。注意事項までしっかりとお読みになられましたよね?」
「さて、今担当のものはお客様のクレームに対して精神的ダメージを負っております。つきましては慰謝料として100万円、さらに彼の正常なポテンシャルで稼げたであろう売上金100万円の補償をしていただきます。よろしいでしょうか?」

「なんでそこまで補償しなきゃいけないのよ!」
と叫び出した。
ボクはほぼ毎日外回りだったのでクレーム対応の現場を見るのは初めてだった。しかし注意事項を読んでみると真ん中あたりに少し小さなフォントで書いてある。

クレーム対応はさせていただきますが、それによる担当者の精神的ダメージに付随した売上金の補償を請求します。

なんてめちゃくちゃな…

売上目標のカラクリを知った瞬間だった。
そう、彼らはクレームを受けることを商売としていた。そのタネを撒くためにボクは使われたのだ。
お客様は渋々帰っていった。しかしクレーム対応をした事実はあり記録もしている。こんなビジネスが成り立っていいのか?

その後ボクは深く落ち込んだ。この事実を知った上でまだ続けるべきなのか?それとも辞めてまたあの暗闇の世界に戻るのか?

ちょっと変わったお話



お読みいただきありがとうございます😊
クレームは発生してしまうことは仕方のないことですが、それをビジネスネタにするのは現実味がありませんよね?でももしこれが現実に存在するとしたら、あなたはどう対応しますか?
効果が得られないモノを買いクレームを付ければさらに代金を請求される。我慢すれば何も失わない。けれど何も得られない。しかし声を上げなければどんどん無意味なものが広まっていく。そしてそこで働く人間もまた疲弊していく。いったい誰が幸せなんでしょうか?そして‘ボク’はこれからどうすればいいのでしょうか?次回はその解決策を物語にしていきます。

ありがとうございました😊

心の支えとまではいきませんが、少しでも不安が和らげばいいと思っています。そしてなにより、賛同していただけると、とても感謝します。