【すわってみた #1】青春18きっぷで琵琶湖一周(前編)

職場が滋賀になって10年。
年々滋賀を好きになり、琵琶湖を好きになり、
今では「琵琶湖は愛だ」と思ったりする。

琵琶湖を見ると安心する。
計り知れなく大きくて、見ていると心が静かになる。
その大きな大きな水面に空を映して
琵琶湖はいつも、ただ、ある。

「いま ここにある意識」って、琵琶湖のことなのでは…。

琵琶湖を見て心の奥底がじーんとする。
好きだー。という微熱。
畏敬と恋慕の念。
日常抱えている荷物を運ぶことに持っていかれてるから、その小さい愛の花を片隅に追いやっている。
自分の中に愛の花が咲いている、そのことが奇蹟なのに。

「キャパ極小でごめん。処理能力貧しくてごめん。生活の糧が優先でごめん。休みになったら気絶して錆びてザラザラで動けなくなってごめん。わたしが振り返ることができるようになるまで、小さい愛の花、消えないで待っていて。」

そんなん、言い訳や。
言い訳はゴミ。言い訳はたんなるエゴ。
そういうものは風呂敷に包んでいったん脇へ置いて。
ストレートに琵琶湖を愛でる。
わが愛の琵琶湖を眺めまくる。

そういう訳で、青春18切符をゲットし、8月真夏日、JR新快速に乗り込みました。

琵琶湖線は、以前通勤していた草津までの駅それぞれに馴染んでおり、栗東、守山も度々訪れていて、近江八幡、彦根、長浜観光もしたことがありました。どの駅で降りても町には歴史と新しさ両方の味わいがあり、大らかな空気に気持ちがゆっくりします。去年は滋賀県最古の私設図書館江北図書館のイベント目当てに木ノ本まで行ってみたところ、戦前に建てられた木造建築は内部も当時の趣きそのままで、維持を続ける困難がありありと分かるだけに関わりの人々の只ならない真心に度肝を抜かれてしまった上、風情を湛えた町並み歩きが楽しく造り酒屋の日本酒をお土産にしてほくほくした思い出が。

必要な乗り継ぎだけして駅を出なければ約3時間ほどかと思われる電車で琵琶湖一周だけれど、滋賀の町の魅力を知ってしまったら降りずに過ごすことなどできない。どの駅も宝石のようにキラキラと魅力的に思える。乗り降り自由の青春18きっぷの可能性無限。

なんだけど、欲張らずに無理はしない。灼熱の8月だからね。
テーマは「琵琶湖を一周しながら涼しい電車の中で本を読む」。
サブテーマは「愛する琵琶湖の姿を平面360度のいろんな地点から眺める」。
この2つが達成できたらOK。

草津止まり新快速に乗り、草津から普通に乗って守山下車。
次の新快速まで20分。
改札を出て階段を下りたところにコンビニやパン屋さんと並んで「本のがんこ堂守山駅前店」がある。滋賀県に根付いた書店チェーン。守山駅前店はこじんまりした町の書店の佇まい。だが「普通」ではない。書店としての高い意識が隅々に行きわたっていて、棚を眺めるそれだけで快感にひたれるお店です。わたしが勤務し30代の時間を注いだ京都の閉店してしまった小さな書店と似ている。働く人がどんなふうに手を動かしてこのお店を整えているか、何を思い、何に気を付けているか、自分の身体にしみこんだ記憶と重なって自動的に感覚が再生される。書店のいのち、本のいのちは危機と隣り合わせと言われているけれど、今ここにあるいのちの精彩そのものはそれで陰ってはいないのである。がんこ堂さんに10分間居て「わあああ~これ読みたい、ていうか欲しい~」と目に飛び込んできた本が無数に瞬いたものの、今回は前から買おうと思っていた3冊にしました。

・「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈(新潮社)
※本屋大賞受賞、滋賀県が舞台の話題作。これは滋賀県の本屋さんで買おうと決めていたので

・「家族だから会いしたんじゃなくて、愛したのが家族だった」岸田奈美(小学館文庫)
※ドラマ化した話題作。ずっと読みたいなあ。と思っていたらすでに文庫化していました

・「増補版 九十八歳。戦いやまず日は暮れず 」佐藤愛子(小学館文庫) 
※実母に差し入れ用。シリーズ最新作とのこと。お年寄り向きに字が大きめ

守山から長浜までの新快速で琵琶湖を肌で感じつつ佐藤愛子のエッセイを読んだ。 

と、ここで電車的に注意があります。
米原駅で先頭4車両が切り離されます。わたしは後ろの方の車両に乗っていて、読みふけっていたら誰もいなくなってて廻ってきた駅員さんに言われて、ハッ!となってホームを走って前の方の車両に移動して汗をかきました。空いてた電車は乗客が凝縮されて混んだ状態に。でも、4人席が一個空いてて座れた。そんな感じでした。 

さて、佐藤愛子。
むかし実家の本棚に佐藤愛子の文庫本が並んでいた。「娘と私の時間」シリーズとか。小6くらいの私は面白いのでゲラゲラ笑って繰り返し読んでいた。その姿を母は見ていたのであろう。と思う。
母はじゃりん子チエちゃんを好きだと言っていた。「バイタリティーがある。」と。
チエちゃんと愛子先生の共通点。
バイタリティー。
それと理不尽な境遇に対する冷静な態度と強強な精神。それとペーソス。滑稽。慈悲。侘び寂びみたいな。
ペーソスという言葉は愛子先生のエッセイで覚えた。自分で使ったことはないけど。

母はわたしにバイタリティーが育つことを期待して愛子先生の本を手の届くところに置いていたフシが無きにしも非ず。さて、結果どうだろうか。

愛子先生は五十年前からの「怒りの愛子」健在で今も開き直りとかヤケクソとか言っていて面白い。そこは影響を受けているかもしれない。ヤケクソ。。。ちょっと思い当たるフシがある。。。でも大事なところはチエちゃんも愛子先生も冷静なリアリストだというところ。感情的に見えて実は自分のエゴとのクールな距離感。見習いたいと思う。

文章が長くなったので続きにします。











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