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その失敗、UXデザイナーがいれば回避できたかも…

UXデザインワークショップの受講生から「UXデザイナーが居るプロジェクトと居ないプロジェクトでは何が変わるのか」という質問を受けました。今日はこの質問に答えた内容をまとめていきたいと思います。

UXデザイナーはユーザー視点を持つことで Risk を抑えることができる存在です。具体的な事例や、そのフレームワークを確認していきましょう。


UXデザイナーが居ないと顧客を持てないリスクがある

UXデザインの工程ではコンセプトやユーザビリティ、ビジュアルデザインなど様々な要素をテストしながら開発を進め、顧客の体験を計画していきます。プロジェクトの各段階で、進行や予算に応じて適切にユーザーの声を聞き、プロジェクトに落とし込んでいきます。

UXデザインに対してよく比較として出されるのが、ウォーターフォール形式と呼ばれる開発環境です。ウォータフォール形式では最初に要件定義をガッチリと決め、要件定義が決まったらその後は基本的に工程を戻すことはなく、エンジニアとデザイナーが協力してプロジェクトを進めていきます。

ウォーターフォール形式ではプロジェクトが完成して初めて顧客に公開することになり、フタを開けてはじめて「使いにくい」「わかりにくい」といった低評価のレビューに気づくこともあれば、そもそもユーザーが求めていなかったため使われない。などの致命的なミスを見落としてしまうのです。

つまり、プロジェクトの開始から何度もユーザーのチェックを受けてRiskを最小限に抑えられるのがUXデザイナーがいる開発環境の特徴だといえます。

続けて、具体的な事例からUXデザイナーの存在によって開発のリスクが変わるシーンをご紹介します。

既存ユーザーの視点を忘れたUIリニューアルの事例

数年前、ある大手家計簿アプリのサービスがUIをリニューアルしたものの、既存ユーザーからのクレームが殺到してしまい、リニューアルからわずか2日でもとのUIに戻すという異例のニュースがありました。内部の事情はわかりませんが、おそらくUXデザイナーがいないか、もしくは既存ユーザーの声を適切にもらえていなかったのでしょう。

この件で注目していただきたいのは、元々のUIの評価もあまり高くはなかった点です。使い勝手が良いUIが悪くなったからクレームになったのではなく、使い勝手が悪いなりにだんだんと自分の使用スタイルができてきたところ、まったく違ったUIになってしまったことへのクレームが多数寄せられたようです。

たとえ従来よりよいUIだったとしても大きく変わってしまうことはユーザーにストレスを与える原因になることは、UXデザイナーが日常から気をつけているポイントのひとつでもあります。システムを印新したい場合でも、ユーザーにストレスを与えない範囲で少しづつ慣れさせていくイテレーティブな開発が大切なのです。

よい事例で言えば、Amazon や Google検索などの大手Webサービスは非常に参考になります。Amazon での買い物体験や Google検索など毎日の体験のなかで変化を感じることはほとんどありませんが、数年前と比べるとUIがまるで違うものになっています。これらのサービスはユーザーに負担をあたえず、テストを繰り返しながらよりよりUIへと改善していく非常に良い例といえるでしょう。

車のモデルなどコストの大きすぎる事業

車の新しいモデルなど、開発のコストが数億円〜数十億円ともなるプロジェクトでは、UXデザインの工程を踏まえない開発など考えられません。ユーザーの評価を受けないまま開発を進めて、まったく売れないようでは損失が大きすぎるのです。

コストが大きすぎる事業では、各工程のユーザーテストに時間も予算もかける傾向があります。スクリーニングリサーチやユーザーインタビューと呼ばれる工程で何ヶ月もかけてユーザーの声を集めます。具体的には、新モデルのイメージをユーザーに見てもらい、その印象をヒアリングするなどです。

このとき、ブランド名を明かすとユーザーの元々の好みがインタビュー結果に影響を与えるため、ブランド名を伏せて行う「ブラインドテスト」など、いくつかの工夫を凝らすのもポイントとなります。こうしたユーザーテストを各工程で行い、数ヶ月かけてリスクを最小限にとどめながらユーザーからも求められる新モデルを作り上げていきます。

いつでもどの工程にも戻れる状態を作る

UXデザインの工程では、ダブルダイヤモンドモデルというフレームワークを活用し、プロジェクトのどの段階でもユーザーからのフィードバックを得ることができ、さらにどの段階にでも立ち戻れるように開発を進めていきます。

製品やサービスを完成させてから公開させるのではなく、MVPとよばれる最低限の機能を持った状態でユーザーに使ってもらい、そのフィードバックを受けて必要に応じて必要な工程に立ち戻れるのです。ウォーターフォール形式での開発の場合、ユーザーからフィードバックを得て改善ポイントが見つかったとしても、どの工程からやり直すべきかすらわからない状況が見られます。

Riskを抑え、立ち戻れるポイントを作りながら最低限の機能でユーザーからのフィードバックを受ける。そうしたユーザーを中心とした開発によって仮説と検証を繰り返していきます。

▼ダブルダイヤモンドモデルの解説はコチラ

まとめ

UXデザイナーは「ユーザー体験を設計する」という認知は広まってきたように思えますが、実際にUXデザイナーが居るのと居ないのとではプロジェクトの進め方にどのような違いがあるのか、まだ知られていない方も多いようです。

本記事で説明した通り、UXデザイナーはユーザーのフィードバックを得ることで Risk を最小限に抑えることができます。それにより開発したサービスがユーザーに受け入れられないなどの損失を回避できるのです。

弊社ではUXデザインコンサルのご相談をお請けしております。お気軽にお問い合わせください。

株式会社VERSAROC
代表取締役 江渕大樹
hiroki_ebuchi@versaroc.co.jp

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