見出し画像

2024 春の東北をたずねて ④最終日

 星野リゾート奥入瀬渓流ホテルの前身は経営破綻した奥入瀬グランドホテル、一度外資系ファンドに売却された後星野リゾート傘下に入ったようだ。初夏から秋にかけての奥入瀬渓流は観光スポットとして最高と思われるが、冬場は交通の便も悪くこの閑散期をどう凌ぐかが経営の大きな課題だった。星野リゾートも2017年に再開するまでの9年間、冬場の営業は見合わせていたが、今や雪と氷の奥入瀬を売り物に頑張っている。
 館内はとても広く移動に時間がかかるが、綺麗に整備されていて施設も部屋もゆったり気分を満喫できる。食事はバイキングだが混み合わず満足できた。夕飯はシェフがその場で揚げてくれる「帆立とマグロのフライ」そしてアップルパイが美味しかった。朝食は朝からいくら丼をおかわりしてしまった。

星野リゾート奥入瀬渓流ホテル

 奥入瀬は自然が作った博物館、十和田湖畔から焼山までの14㎞をドライブ観光する。時期的に緑は少ないが雪解けの水が豊富で流れを楽しめる。ホテルのある焼山地区を出発し、三乱の流れ、阿修羅の流れ、雲井の滝、銚子大滝、それらの近くに車を停め歩いて散策した。

三乱の流れ
阿修羅の流れ
雲井の滝
銚子大滝

 奥入瀬渓流を子ノ口まで上がると雨が降り出し、十和田湖が霧に包まれ向こう岸が見えない。小雨の中十和田神社を目指す。十和田神社もまたまた坂上田村麻呂創建のようだ。土曜というのに天気が悪いせいか車は少なく観光客がほとんどいない。広々した有料駐車場の隅にポツンと駐車して神社に向かう。店舗はシャッターが下ろされ周辺の施設は所々廃墟となっている。恐山とともに霊場として信仰されてきた十和田湖の神秘的なエネルギーを感じながら、荒れ果てた石段を上がる。ほとんど手をかけられていないと思われる御社殿を参拝し、パワースポットの御朱印いただこうとしたのだが、社務所も閉まったままで人の気配がなく残念。湖畔には乙女の像、そこでようやく観光客に遭遇する。高村光太郎の乙女の像、70年前の除幕式の日も今日のような雨だったようだ。

十和田湖
十和田神社
乙女の像

 十和田湖から再び奥入瀬渓流を下り十和田市内を目指す。昼頃着くと十和田市内の中央公園でも桜祭りが開催されていて屋台が賑やかだ。十和田市役所の屋上に上がり公園の桜を撮影した。
 本来であればこのタイミングで「桜流鏑馬」を見学予定だったが、今年は桜の開花が早まるという想定で1週間前に開催された。それを知った時には宿も新幹線も全て予約済で間に合わなかった。桜流鏑馬については相戸結衣さんの小説「流鏑馬ガール」で知った。また十和田市では乗馬が盛んなことも知った。確かに官庁街通りを歩くと馬の像が所々にあるし、なんと歩道には馬の足跡が本物の蹄鉄を埋め込むことで形作られている。競馬ファンとして感激の至りである。来年こそ桜流鏑馬を観戦したい!

十和田市役所から見た中央公園
桜流鏑馬が開催された会場
官庁街通りの馬の像
蹄鉄で作られた馬の足跡

 朝の雨模様が信じられない晴天の中、満開の桜を見ながら官庁街通りを歩いて十和田市現代美術館に行く。ここも見学者の過半数はインバウンドだ。この美術館では高さ4mの「スタンディング・ウーマン」を一目見たかった。足元から頭までかなりリアルに作られていておもしろい作品だ。しかし他の作品は理解に苦しむアートが多く自分には難しかった。

スタンディング・ウーマン

  昼食は十和田名物「牛のバラ焼き」を予定していたが、桜祭りでどこも混み合っている。先へ進み青い森鉄道の三沢駅まで行って鴨ラーメンを食べた。そして今回の東北旅行最後を飾る寺山修司記念館を目指した。
 昨年暮れに東北旅行を計画していた時、偶然だが島田明宏氏の競馬ミステリー小説ブリダーズロマンが発売された。島田氏のコラムや本はいつも楽しみにしており競馬関連の新作は必ず購入してきた。本作品では三沢における競馬の歴史について興味深く記されており、「これは三沢に呼ばれている」と思った。本当なら1日かけて斗南藩の歴史的施設や廣澤牧場などを見学したかったが、あまり馬ばかりだと妻に怒られる?ので、厳選し寺山修司記念館のみの訪問とした。
 三沢市内からナビ通りに走ると地震の被害で橋が通行止めになっていたり通れない道がいくつもあった。小川原湖を左手に見ながら走っていると、人家の少ない東北のローカル地域に来たことが実感できる。
 寺山修司記念館に着いた。とても静かで人の気配がない。休館日かと思ったが営業していて良かった。寺山修司はテンポイントが好きで自分でも馬を持っていたほどの競馬好きだ。山河ありきや旅路の果てなどを読むと独特の競馬観があるように感じる。記念館には競馬に関する情報がたくさんあることを期待したが、残念ながらごく一部だった。競馬ファンとしては少し物足りなかったが、机一つ分の競馬情報を懐中電灯片手に満喫できた。

寺山修司記念館
引き出しの中

 来た道を戻り七戸十和田駅を目指す。新花巻で借りたレンタカーはここで乗り捨てる。はやぶさ38号到着まで1時間以上あるので駅ビルのカフェに入った。お客さんは我々だけだ。夕飯はここで買う「おにぎり弁当」を新幹線の中で食べる予定だったが、残り一つしかなく、やむなくサンドイッチを追加した。
 カフェで生ビールを注文し、妻と二人で「お疲れ様!乾杯!」花巻、盛岡、田沢湖、青森、弘前、奥入瀬、十和田、そして三沢と、行くところ桜三昧の東北旅行、思い出に残る素敵な旅だった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?