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3月の読了

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限りある時間の使い方 | オリバー・バークマン

人生は4000週間しかない。

ただし順調に歳をとり、人生を全うした場合である。いつ自分が死ぬかは予測できるものではない。
なのに現代人は未来のために生きている。いつか訪れる未来が安寧で穏やかで、やるべきことは全て片付いた素晴らしいものとなるために「今」を犠牲にしすぎだ、と警鐘をならす本書。
「時間術」「タスク管理術」ハックな人達(私自身もそうである)にはぜひおすすめしたい1冊だった。

僕たちは時間をあるがままに体験することをやめて、「今」という時間を未来のゴールにたどり着くための手段に変えてしまった。 今はまだ楽しむときじゃない。いつかタスクがすっかり片付いたら、そのときこそリラックスして楽しもう、というわけだ。

時間を有効に使う手立てとして誰しもが試みるマルチタスク。例えば「洗濯機を回しつつ洗い物をする」とか、「電車移動の中でAudible聴く」とかであれば、時間の有効活用として理にかなっているかもしれない。

だけど私自身の例として、ランニング時に音楽ではなくAudibleを聴くことが増えてからは「音楽を聴くことは生産的ではない」と感じるようになってしまい、音楽を楽しむタイミングがめっぽう減ってしまった。
ランニングしている時点で目的は達成しているはずなのに、時間をそれひとつだけのために使うにはもったいないという気になっている。
これは危ないぞ、と自分でも気づき始めた頃だったので、グサグサ刺さりまくった。

ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェは、1887年の時点で早くもマルチタスクに警告を発している。
昼食をとりながら新聞で株式市場の動向を読んでいるとは何事か」とニーチェは嘆いた。(中略)そうやって時間の有効活用ばかり考えていると、人生は想像上の未来に描き込まれた設計図となり、ものごとが思い通りに進まないと強い不安を 感じるようになる。そして時間をうまく使えるかどうかが、自分という人間の価値に直結してくる。

時間を使うとは?時間とはそもそも使うものなのか?といった、哲学じみたスケールの広い話もあるけど、この手の話が好きな人にとっては面白いと思う。

「時間の概念」と言えば、ずっと積読リストに入っている「ピダハン」:現代人が使う時間や数、色、左右あらゆる概念を持たない少数民族の話。なおさら読みたさが湧き上がってきたので近々買うぞ。


一番心に残っているのは、”この短い人生で、週末を心待ちにし月曜日が来ることが苦痛なんて状態はおかしい”といった記述。
よく考えたら確かにそうである。1週間のうち5日もしんどいなんて、何をしているんだろうと思ってしまう。

あなたの日々は、完全無欠の未来のための準備期間ではない。そんな仮定で生きていたら、人生の4000週間を充分に生きることはできない。


余談だけど、ドラマ「ブラッシュアップ・ライフ」を観て現実は本当に1回きりで、一つひとつの選択が大切なんだと痛感できた。ドラマ本当良かったよね・・・。

ロスト・ケア | 葉真中顕

映画公開中の「ロスト・ケア」。その原作がAudibleにあったので聴きました。
彼はなぜ、42人を殺したのか。
狙うのは要介護度の高い高齢者で、大まかな動機は少しずつ掴めてはくるものの、「彼」が誰なのかはギリギリまで予想を裏切るもので「いやお前かよ・・・」と結構ショックだった。

羽田洋子の「母さんが死んだ、地獄が終わった…」というセリフは、自分の母にこんな感情を抱くことがあり得るのだという怖さに目を逸らしたくなる。だけどこういった感情を抱くまでに個々が追い詰められなければならない社会の体制や現実があるのだと痛感した。

「これでもう、母さんの世話をしなくていいんだね。母さんになじられることもないんだね。もう、母さんをベッドに縛りつけなくてもいいんだね。もう、母さんのお尻を拭かなくていいんだね。・・・これでもう、拭いてあげられないんだね。」

こういった現代の社会問題への提起って、ニュースで知るよりも小説の方がセリフや登場人物の感情が刺さって個人的には勉強になる。
ロストケアは介護が主なテーマだけど、生活保護がテーマの「護られなかった者たちへ」も印象深い。


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