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美術オタクのパリ1人旅⑩経験を買うということ

初めての海外旅行でパリに1人旅しました。これまでの記録はこちらから。

今回の旅行、最大の学びは”経験を買う”ことの価値の高さでした。

最初から最後までひとりきり。全てが自己責任だったので、移動と宿泊には結構お金をかけました。円安も相まって総旅費は想定以上だったけど、得られた経験や受けた優しさは一生の思い出。
格安宿やLCCを否定するつもりは全くないし、適材適所で使うことは今でもあるけど、経験として高品質なサービスを受けてみることは自分にとって人生の経験値を大きく上げてくれたと思っています。


行きの飛行機にて

往復ともJALの羽田-パリ直行便を利用。CAさん達の振る舞いの素敵さに改めて感服させられました。背筋がしゃんとしていて、誰かと会話してないときでも口角が自然に上がっている。話しかけたらすぐに明るく応えてくれる。客相手だけではなく、どのスタッフにもにこにこ笑顔で業務連絡をしている。家族やカップルに囲まれて1人で乗る私に、「良い旅を^^」と話しかけてくれたCAさんもいました。

いつでも機嫌よく働くこと。
誰にでも同じ態度で、丁寧に接すること。

接客業として当たり前のことかもしれないけど、どうしようもなく難しいときがあるじゃないですか。自分の不機嫌や不満が態度に出ないように、必死にどうにかやるときがあるじゃないですか。そういったことを全く感じさせない「接客のプロ」に接して、なんて格好良いんだと惚れ惚れした。

日本のエアラインのサービスは世界中でもトップクラスに良いのだそう。国内線でいつも享受できる日本人は恵まれているのだなあ…普段からJAL派で、国内線でも丁寧なおもてなしを受けているけど、国際線は雰囲気がまたひとつ違ったような気がしました。


ホテルにて①

宿泊したのはオペラ座から徒歩10分圏内、1泊3万くらいのホテルでした(こういうとき一人旅のコスパの悪さを思い知る)。

オリンピック期間に予約サイト見てみたら1泊5万くらいになっていた…

朝からルーヴル美術館に行く予定があり、さしあたりスーツケースだけ預けようと前泊したホテルから移動。フロントには可愛いお姉さん。「Bonjour!」と挨拶しスーツケースを預けたい旨を言おうとすると、

「Bonjour♡あっ今日お泊まりになる?スーツケース預かりますよ、お名前教えて!」

と私が言いたかったことを全部先回り。道中「I have a booking this hotel tonight.Could you keep my suitcase?」をぶつぶつ練習していた私は拍子抜け、だけどこの先を読む気遣いがとっても嬉しかった。
お願いを快く実行する、そのもう一歩先、してほしいことを先読みして提案してもらうことの嬉しさたるやを学んだ瞬間。私もこういう気遣いができる人になりたいと思いました。

夕方、観光を終えてホテルへ帰着。カウンターには先ほどの可愛いお姉さん。ドアを開けて目が合うなり「お帰りなさい! Ms.◯◯よね、スーツケースはお部屋に届けてますよ」と迎えてくれた。5泊分の大きなスーツケースを運んでくれたことも嬉しかったけど、さっき少し話しただけなのに覚えてくれた…!?と嬉しくなり思わず「私のこと覚えてくれたの?」と聞いてしまう笑
「Sure♡You are Japanese, right?」と返ってきてほっこり。

他にも、朝からカウンターに「Good morning!」と挨拶したとき黒人男性スタッフさんが両手を広げて「Good morning to you〜!!!」とミュージカルばりの超ハイテンションで返してくれたときの嬉しさも忘れられない。挨拶に"to you"をつけるのは初めて聞いたけど、とても嬉しくなった。

ホテルにて②

チェックアウトの朝。
ちょうど清掃が入る時間帯で、エレベーターが掃除機や清掃具でいっぱいになっており使えず。スーツケースを抱え階段を降りようとすると、それに気づいた清掃員さん。黒人の恰幅のいいマダムでした。
「あらあ!!あなた、私がスーツケース下ろしてあげるから先に階段で下りていて!」と声をかけてくれました。甘えることにし、身軽に5階分の階段を降りる。
清掃員マダムと私のスーツケースがエレベーターに乗って降りてくる。にこにこしてスーツケースを渡してくれる。きっとその場に清掃用具を急いで放り出してきてくれたんだろうな、ああなんて優しいの。最後の最後までほっこりしたホテルステイでした。

フランスにはチップ文化はないので、こういう時のために持ち歩いていた抹茶キットカットをお礼に。「日本のチョコレートです!」と差し出すとそれを胸の前に抱え「Thank you〜♡!!」とすっごく喜んでくれた。


世は資本主義なので、価格に見合ったホスピタリティがある。価格を抑えれば最低限のサービスであることがほとんどだけど、逆にちょっと贅沢してみるとこれまで生きてきた世界では知らなかったホスピタリティを知ることができる。

知らなかったホスピタリティを知れば、「こうしてもらうことは嬉しいんだ」という経験を一つ手に入れたことになる。言うなれば「嬉しくなるための方法」。それは自分の中にちゃんと残っていて、それを然るべきタイミングで、自分なりの方法で相手にやってみようと思える。相手に喜んでもらえれば自分も嬉しいし、それは最終的には自分のレベルアップに繋がるんだと思う。

これは昨年直島のベネッセアートサイト宿泊でも感じたことです。

例えば小さい頃からお金持ちのお家の子として、高価格帯サービスを受けるのが当たり前だったらここまでの感動はないかもしれません。
なので、格安旅が当たり前になっている人こそ、いつか機会や余裕があれば宿泊や移動の単価を上げてみて欲しいなと思います。ただ「泊まる」「移動する」という必要経費だけでなくて、そのものが一つの大切な体験になると思うので。


そしてもう一つ。
パリオリンピックでの開会式の演出問題や誤審疑惑、選手の振る舞いなどでパリにマイナスイメージを持った人もいるかもしれません。もちろん、発信している人の中には現地で本当に傷ついたり被害を被っている人もいると思います。
だけど、私は現地で受けた沢山の優しさを知っている。SNSに溢れる包括的なパリへの非難を目にしても、「みんながこうではない」とか「優しい人も素敵な場所もたくさんあった」と思うことができる。自分が経験したという何よりも確固たる情報を判断材料にして、物事を見ることができるのも、代替手段では得られることのない大きな財産ではないかと思います。


最近読んだ本でいいフレーズがあったので、最後にご紹介。

すべてを節約するというのでは、何も買わない、何も使わない、何も経験しない、の3縛りになって、人生が豊かになっていきません。
人生そのものの経験価値を広げていく。その経験を通じて将来役立つ学びを得るために、お金を使うということは立派な投資であり、有益なことだと私は思います。


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