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いよわ『無辜のあなた』を褒めちぎるnote

こんばんは🌝
突然ですが、私の過去のnote『マーシーキリングを褒めちぎるnote』に以下の文章がありました。

まとめの部分


この『マーシーキリング』を別のサイドから語ったのが、『無辜のあなた』という曲です。
したがって、まだ聴いていないという方は、このnoteを読む前に『マーシーキリング』も聴いておくことをおすすめします。
そして時間のあるときに私のnoteも読んでいただけると嬉しいです🙇‍♀️


『無辜のあなた』を聴きたいという方はこちらから↓


今回もnoteのサムネイルを描きました。いちばんのこだわりは4%の■■です。

ムコちゃんかわいい

⚠️個人の考察が含まれます。あくまでひとつの解釈として楽しんでいただければ幸いです。


おさらい

最初に『マーシーキリング』と『無辜のあなた』の関係性を簡単にまとめておきたいと思います。

『マーシーキリング』と『無辜のあなた』は「浮気」がテーマの曲だとされています。
そして、彼女が『マーシーキリング』の女の子(マキリちゃん)、浮気相手が『無辜のあなた』の女の子(ムコちゃん)です。
『無辜のあなた』は浮気相手のムコちゃんへの想いを主人公・俺の視点から描いた曲になります。

このことを踏まえて、歌詞を見ていきましょう。

1.想う

簡単に追い抜かれてった
私達が大丈夫なら良いじゃない
想う 騙す心で真に
君に願う幸せならもう ここには生まれない
そんな事 知っていたけど
嗚呼 止まれやしないよ

『無辜のあなた』歌詞

歌詞については後程言及します。
ここで褒めちぎりたいのは映像の部分。

動画の17秒辺り「止まれやしないよ」の部分で、画面が黒くなるのですが、「想う」だけは黒くならずに残っているんですよね。
いろいろ言葉を並べているけれど、事実としてあるのは、「想う」気持ちだけだということが伝わってきて、浮気じゃなければどれほど素敵だったか…と思わされます。

2.プロローグ

「笑顔が綺麗だな」そんなことを思った
ドラマじゃプロローグになるような出会いだな(※1)
君の知らないもの 見せてやりたいと思った
それだけの純情が チャンネルを切り替えた(※2)
(※3)

『無辜のあなた』歌詞

俺とムコちゃんの出会いのシーンです。

※がある部分の映像に言葉が書かれているので、その部分について話します。
まず※1にはこう書かれています。

想いを伝えた人がいた。
彼女は後輩だった。

※1

ムコちゃんは俺の後輩。
そして、俺の方からムコちゃんに想いを伝えたことがわかります。

次に※2には、こう書かれています。

今思えば、あのどうしようもない感覚はいわゆる一目ぼれというやつだった。

※2

俺は一目ぼれをした。
「今思えば」からは、当時はそんなことを思う余裕がないほど、「想う」に占められていたことが伝わってきます。
全体を通して、俺とムコちゃんとの関係は衝動的に描かれています。

そして、※3は次の場面に変わる直前に一瞬だけ現れます。

どうやら向こうも同じ気持ちだったらしかった。

※3

俺とムコちゃんは同じ想いを抱き、浮気の関係が始まったのだとわかります。
これが物語のプロローグです。

3.比況

「ねぇ、私達ずっとこのまま何処だって行ける気がするの。」
台詞をなぞった
嗚呼、俺はただその無垢な目を
フレームで囲むことしか出来なかったんだ

『無辜のあなた』歌詞

「ねぇ、私達ずっとこのまま何処だって行ける気がするの。」という言葉は、『マーシーキリング』の「『そと』に出るのはおすすめしないよ」と対照的な表現だと感じました。2人の違いがわかりやすく読み取れます。

そして、俺は序盤から「ドラマ」「プロローグ」「チャンネル」、「台詞」「フレーム」と、物語になぞらえてムコちゃんとの関係を語っています。

物語だから。浮気じゃない。現実じゃない。
そんな俺の卑怯な気持ちが伝わってきます。
そして、現実じゃないという言い訳は「夢じゃないからね」と言ったマキリちゃんを彷彿とさせます。作りこまれている…。

4.序列

簡単に追い抜かれてった
俺の幸せの序列はとっくに狂ったな 
騙す心で真に
君の願うストーリイはもうここには生まれない なのにさ。
目がそらせないのはこのフィルムのせいだろ。

『無辜のあなた』歌詞

ムコちゃんが俺の最上の幸せになった。
浮気をしている事実を隠しながら、ムコちゃんとの関係を続けている。

「ストーリイ」「フィルム」とこの関係性を正当化させるための卑怯な言葉も続きます。
「ストーリイ」という書き方からは、この幸せな関係に酔っていることが伝わって来るような気がします。

5.騙す心で真に

「君だけが恋しいんだ。」
くり返し上辺の愛のことばを紡いだ
騙す心で真に
君の願うストーリイはもうここには生まれないけど
未来を望んでしまったよ。

『無辜のあなた』歌詞

マキリちゃんとの関係は続いているので「君だけが」恋しいというのは、嘘。
「騙す心で真に」という想いが「上辺の愛の言葉」という歌詞にも表れています。

マキリちゃんとの関係を終わらせる覚悟もないけれど、ムコちゃんとの未来を望んでしまっている。そんな俺の浮気心が、気味の悪いほどに綺麗な歌詞で表現されています。

6.間奏

間奏部分に現れる長文。解読大変でした。

一つの感情がとうてい許されていいものではないことは知っていた。
俺にはすでに彼女がいた。
実のところここ最近あいつはやたらと重い愛情を強制してくるようになっていた。
なにかにつけて「約束」だの「嘘をついたら」どうやらああやらばかり言ってくるので正直うっとうしくさえ思えていた。
自分と同じ量の愛を相手に要求するというのは
ずいぶんとわがままなんじゃないか。
それならずっと鏡に向かって告白でもしてりゃあいいじゃねえか。
今日も雑な言い訳を並べて家を出た
大丈夫。
単にあいつは俺に愛してもらえなくなることを怖がってるだけであの子との関係に気付きゃしないさ。
前から鈍いやつだし。
俺はちゃんと賢くやってるんだ。
今日はあの子はどんな表情を見せてくれるのだろう。
そう考えると自分がさっきまで抱えていた憂いがふきとんでいくような気分になった。
しかしあの子にはまだ今の俺の状況について話していない。
罪を二等分してせおわせるのは気がひけるが、どちらにしろもう戻れはしないのだろう。


まず、「一つの感情」とは「彼女がいるのにムコちゃんに恋心を抱いてしまったこと」でしょう。

マキリちゃんについての文章ということもあり、『マーシーキリング』に対応する文章も出てきます。

約束→「小指4本分の約束」
嘘をついたら→「嘘ついたら針千本飲ますって言ったよね」
家を出た→「『そと』に出るのはおすすめしないよ」
俺はちゃんと賢くやってるんだ→「自分が賢いって信じてたよね」


この時点ではムコちゃんはまだ浮気をされているという事実を知らされていないようです。

「罪を二等分してせおわせるのは気がひけるが、どちらにしろもう戻れはしないのだろう。」からは、俺の卑怯さがよく伝わってきます。
前半部分で「マキリちゃんの愛が重いから」と言い訳じみたことも言っていました。「俺が悪い」とは言えないんですね。

7.四

四季めぐれど 血はめぐらず 空の心臓が跳ねまわった
あと一回 あと二回 いや あと三回出会ったら終わりにしよう
のちの四回目 いつもより赤らんだ
それだけの純情が チャンネルをきりかえた

『無辜のあなた』歌詞

いけないことをしているときは、生きた心地がしない。マキリちゃんにバレないうちにこの関係を終わらせたい。
しかし、先程も書いたように俺にはこの関係性を終わらせる覚悟がありません。
「あと一回 あと二回 いや あと三回」とずるずると終わりを引き延ばしています。

そして注目してもらいたいのは、4という数字。
『マーシーキリング』のnoteではあまり言わないようにしていたのですが、『無辜のあなた』の「のちの四回目」と『マーシーキリング』の「小指4本分の約束」は対応関係にあると思われます。そう考えると「体温で溶けだす」も上手く考えられた表現だと思います。

それから、「四回目」は「何回目?」と発音しているようにも聞こえます。
二人の関係が4回で終わるとは到底思えないので、何度も約束を破り(マキリちゃんを裏切って)、ムコちゃんに会っていたのでしょう。「いつもより赤らんだ」という歌詞から会うのをやめない理由は一目瞭然です。

「いつもより」の歌詞のところは「いつものように」って言ってるんだと思ってました。「いつもより」の方が想いの強さが伝わってきていいですね。(マキリちゃんとしてはたまったものではないけれど)

8.針

嗚呼、君の背に、指に、瞼に、
針を突き立てられること 許せはしないが
もう既に俺は 自分を殺すこともできない 屑だった。

『無辜のあなた』歌詞

⚠️この部分は『マーシーキリング』の私の考察を含めた上での説明になります。

針という部分が重要です。
この「針」という言葉には三者三様の意味があると私は考えます。

①ムコちゃんへの針

この曲に出てくる君は「君の知らないもの見せてやりたい」などの歌詞からムコちゃんが多いと思われます。(間奏部分でマキリちゃんはあいつと呼ばれている。)

マキリちゃんにムコちゃんとの浮気がバレたら、ムコちゃんに何らかの危害が加えられる可能性はゼロではありません。ドラマでは、そういう展開もありますよね。(ここでドラマという言葉が期せずして出てきてしまった。)

②マキリちゃんへの針

『マーシーキリング』では「先の尖った慈悲」という歌詞があり、マキリちゃんにとっての針は、どちらかというと救いのようなものという印象を持ちます。マキリちゃんは自分にその針を突き立てました。

③俺への針

『マーシーキリング』に「嘘ついたら針千本飲ますって言ったよね」という歌詞があります。
物理的な針はマキリちゃんに刺さったわけですが、「私の牢獄」を完成させることによって、俺に精神的な針を突き立てたと考えることもできます。

関係がばれることによって起こりうるリスクは理解していても、自分から関係を終わらせることができない。歌詞にある言葉で言えば「屑」な様子がよく描かれています。

9.理性

「私、一番が良かった。」
涙と血がともに流れたような夜に 
かすかなささやき声が
俺の理性をけとばした ロマンの欠片もなくなったのに
君の顔は なんで 満ち足りてるんだろう

『無辜のあなた』歌詞

「私、一番が良かった。」
その声は俺の一番近くで小さく、でも確かに、聞こえてきます。
この時点でムコちゃんはマキリちゃん(彼女)の存在を知っていることがわかります。
間奏部分の「罪を二等分にして背負わせる」が現実になったわけです。

「涙と血が共に流れた」の歌詞からは、精神的にも身体的にも傷つくほどの悲しみが伝わってきます。そして血という言葉からはマーシーキリングを彷彿とさせるものがあります。

かすかなささやき声は、2人の関係を加速させます。
物語なんて言い訳もできなくなってきて、決して綺麗な関係ではない。
しかし、自分に意識を向けてくれて、ムコちゃんは嬉しそうです。

この「満ち足りてるんだろう」は「満ち足りてるんだよ」という叫びのように聞こえます。
これは私の推測になりますが、自分から関係を終わらせたくないから、ムコちゃんの方から終わらせてほしかったのかもしれません。

10.心臓

心臓にまた血がめぐった 2つ目は俺のすぐそばにあったよ
願う 騙す心で真に
今こそ最終回にしたい もうどこにも行けないから

『無辜のあなた』歌詞

先程いけないことをしているのは生きた心地がしないと書きましたが、同時に最高に生きていると実感する瞬間でもあります。
深夜にお菓子を食べたり、想定以上にソシャゲのガチャを回してしまったり……あなたにも心当たりがありませんか?

2人の関係性はまさしくそのようなものなのでしょう。
2つ目の心臓は恐らくムコちゃんのことだと思います。
あるいは「あったよう 願う」とも聞こえるので、浮気がバレてほしくない(見出し8.針の①②の死の可能性を否定したい)という俺の想いも感じます。

もうこの関係は終わりにしたい。せめてまだ物語だと言えてしまう間に。
その感情が「最終回」という言葉には込められていると感じました。

少し余談ですが、何回も聴いていると、「もうどこにも行けないから」が「行けないなら」に聞こえるときがあります。こちらの方が選択肢がないから仕方なく、という俺の屑が増すなと個人的に思っています。これは意図しているのかわかりませんが、いよわさんの曲は調声も魅力のひとつですよね。

11.鏡

鏡に写った自分と目が合った
なぁ俺達さ こんな顔で笑ってたっけ
鏡に写った自分と目が合った 
嗚呼、地獄がそこに待っていたんだよ

『無辜のあなた』歌詞

「罪を二等分にして背負わせた」俺とムコちゃんは心からの笑顔を作れなくなっていたのでしょう。そのことを鏡を見て気づきます。

「鏡」という言葉は、見出し6・間奏部分の「自分と同じ量の愛を相手に要求するというのは ずいぶんとわがままなんじゃないか。それならずっと鏡に向かって告白でもしてりゃあいいじゃねえか。」に繋がります。マキリちゃんを突き放した仕返しのような、巧みな表現だと思いました。

「地獄」とは『マーシーキリング』における「私の牢獄」のことだと考えられます。マキリちゃんは、虫の集った愛に耐えられなくなったのです。

12.私達が大丈夫なら良いじゃない

簡単に追い抜かれてった
私達が大丈夫なら良いじゃない
想う 騙す心で真に
君に願う幸せならもう ここには生まれない
そんな事 知っていたけど
嗚呼 止まれやしないよ。

『無辜のあなた』歌詞

歌の冒頭でも同じ歌詞がありますが、冒頭部分はプロローグであり、言葉そのものの意味というよりは、「物語」を構成するものだと個人的に考えています。
たまにミステリーなんかで人を殺したところから始まる冒頭がありますが、そんな感じです。

本当に意味を持っているのはこの最後のサビの部分で、私はこのように解釈しました。


俺の騙す心でマキリちゃんは死んだ。
でも「私達が大丈夫なら良いじゃない」
こう言われたから、そう言い聞かせて、俺達は関係を続けようと思う。
彼女の牢獄に閉じ込められて、もう幸せはないことは知ってる。
でもここでやめてしまったら、何もかもが終わってしまうから。
止まれやしない。これが俺達の未来なんだ。


「私達が大丈夫なら良いじゃない」は「ねぇ、私達ずっとこのまま何処だって行ける気がするの。」と俺が発する「なぁ俺達さ こんな顔で笑ってたっけ」という歌詞の人称からムコちゃんが発した言葉だと考えられます。

そして、何回も聞いていると「騙す心で真に」の「真に」の部分が「死に」と発音しているように聞こえてきました。これが解釈を後押しする要素でもあります。


この歌詞あるいは解釈が、動画の概要欄に書いてある「裁かれる罪ならまだマシですね。」に通じてきます。
この罪は裁かれません。罪を背負って2人は死ぬまで一緒にいるのでしょう。なんとももやもやする結末です。

動画の方の歌詞、この歌の醍醐味と言ってもいい部分にだいぶ経ってから気づいたのですが、まじですごいわ……と感嘆した記憶があります。(気になる方は今すぐ動画のラスサビ見て)

きっとこの隠されている歌詞はムコちゃんから主人公に対するメッセージであり、無辜の怪物はムコちゃんというよりは主人公だったということを伝えたかったのではないでしょうか。

「私達が大丈夫なら良いじゃない」がムコちゃんの言葉だとすると、ムコちゃんは想像以上に強かな女性です。
「罪は二等分だし、私も好きになってしまったからあなたは悪くないよ」と伝えているように思えました。

それから動画部分で、ムコちゃんが飛び出しているように見える図は、今まで散々ドラマになぞらえてきた俺に「フィクションじゃないよ」とムコちゃんがフレームを壊して訴えているように思えます。

現実に存在しているのに、フィクションだと言われるのは納得ができないという、ムコちゃんの強さ、意地のようなものを感じました。
ムコちゃんもマキリちゃんも、なんというか…芯の強い女性でしたね……。

おしまい

いよわさんのアルバム「ねむるピンクノイズ」の『無辜のあなた』では、曲が終わったあとに声が聞こえてきます。
その声はこのnoteの見出し5の内容です。

マキリちゃんとの関係はこれ以上続けることができないけれど、ムコちゃんとの関係も終わらせることができず、未来を望んでしまっている。そんな今の俺の心境が綴られているのだと感じました。(ただ、マキリちゃんにとって、マーシーキリングは「巻き戻せない時間を続ける手段」だったので、マキリちゃん目線では永遠に関係を続けられるという構造も抑えておきたい。)

それと、YouTubeにある「ねむるピンクノイズ」のクロスフェードでは、『無辜のあなた』と『マーシーキリング』はいよわさんがよくやる赤と青の対比関係で表現されています。見事な物語が色彩でも作られています。

YouTubeに関連すると『無辜のあなた』の英題『You are Innocent Monster』の大文字を見ると、「Y」=俺(You)、「I」=ムコちゃん(Innocentの意味から)「M」=マキリちゃんで頭文字にもなります。最後の隠された歌詞の「あなた」の解釈からも整合性は感じます。

もしかしてムコちゃんから見たマキリちゃんは得体の知れない怪物のように見えていたのかも? 歌詞を見る限り2人が知り合いという様子はなさそうだし🤔

私の解釈ではマキリちゃんがムコちゃんを殺したわけではないので、クロスフェードのイラストでムコちゃんがあんなに怯えているのが若干謎だったけど、この解釈だと納得感が増しました。
正直ここまで狙ってるかはわからないけど、もし狙ってやってるんだとしたらまじですごいです。

そろそろ語彙力がなくなってきたので、この辺りで終わりにしたいと思います。本当に素晴らしい曲で、ムコちゃんがとても可愛かったです。

感想は、noteのコメント欄やマシュマロで伝えてくれると嬉しいです。次に考察してほしい曲があれば、それも教えていただくと、いつかnoteを書くかもしれません。

それでは、今回も長々とお付き合いいただきありがとうございました。
このシリーズの他の曲も読みたいという方は、マガジンがあるので、こちらを是非ご活用ください🙇‍♀️


最後まで読んでいただきありがとうございます🙇‍♀️