見出し画像

特措法に基づく時短・休業命令、6月に急増 11都府県が実施

 飲食店等に営業時間短縮などの措置を命令できるよう、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法が施行されて、まもなく4ヶ月となる。
 自治体の発表などを調べたところ、6月11日までに11の都府県が、特措法に基づく要請に応じなかった店舗に命令を出していたことがわかった。
 第2次緊急事態宣言下の3月に東京都が時短命令を出した以外は、すべて5月以降に出されたもの。本プロジェクトの集計では命令の対象は320店舗を超えているが、その7割が6月に入って発出された。
 感染状況や病床使用率が大幅に改善しているにもかかわらず、期限の終了間際に駆け込み発出されるケースも相次いでいる。

<メモ> 特措法の改正について
 改正前の特措法では、緊急事態宣言下で、休業や時短等の要請、公表はできたが、命令はできなかった。
 2月13日施行の改正特措法では、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置のいずれに場合でも、命令(従わなければ過料)、公表ができるようになった。
 また、政令や告示改正により命令できる措置内容を拡大できることになり、4月23日の厚労相告示改正で「酒類提供停止」の要請・命令をいずれの措置でも実施できるようになった。

画像5

7県が店名公表 大都市は公表しない傾向

 6月11日現在、緊急事態宣言が適用されている10都府県のうち、飲食店に対し措置命令を出したのは、東京、大阪、愛知、岡山、沖縄の5都府県。
 居酒屋等の事実上の休業命令を意味する「酒類提供停止命令」を、沖縄県は68店舗、東京都は53店舗に出している。

画像4

 一方、まん延防止等重点措置が実施されたのは、4月以降、17都道府県(終了したものも含む)。うち6県が時短などの命令を出し、5県が店名を公表していた。
 店名の公表は、東京、神奈川、大阪、愛知といった大都市で見送られ、地方都市で実施される傾向があるようだ(なお、対象外の店舗名を誤って公表した事故も発生している。時短「命令」の公表予定ない店 HPに誤掲載 岡山県)。

画像1

(詳細版はこちら参照)

5都府県が酒類提供禁止命令 4月の告示改正で可能に

 4月から厚労省告示改正で「酒類提供の終日停止措置」、いわば居酒屋の事実上の休業停止も命令できるようになったことを受け、東京都、大阪府、愛知県、沖縄県、埼玉県がこの告示に基づいて休業命令を実施していた。
 埼玉以外の4都府県は緊急事態措置として特措法45条3項に基づく命令を出した。まん延防止等重点措置として法36条の6第3項に基づき、酒類提供店への休業命令を出したのは埼玉県だけで、全国で初とみられる。
 まん延防止等重点措置に関しては、政府は国会で営業時間短縮より強い制限措置はとれないと答弁しており、酒類提供禁止を可能とする告示改正は、特措法による委任の範囲を超える違法性の疑いが指摘されている。

 酒類提供終日停止を要請しつつ、命令を出す段階で営業時間短縮にとどめていた自治体もあった(神奈川県、岡山県)。

措置期限ギリギリに命令を出すケースも

 各自治体の飲食店に対する命令が、措置の期限目前に駆け込み発出されるケースも目立っている。
 東京都は第2次緊急事態宣言の終了(3月21日)の3日前と2日前に、計32店舗に時短命令を出した(うち27店舗を経営するグローバルダイニング社は東京都を提訴している)。
 宮城県も重点措置の終了(5月11日)の4日前に時短命令を出した(宮城県が時短命令 重点措置解除の4日前に 店名も公表 「実効性」高める狙いか)。
 群馬県や石川県も、政府が重点措置を6月13日に解除することを決めた日(6月10日)に時短命令を出していた。両県とも6月8日時点で、重症病床使用率は20%未満で、他の指標も全て「ステージ2」以下になっていた。

<メモ> 特措法に基づく命令の手続き
 特措法は、まず措置の開始時に飲食事業者全体に向けて包括的に要請を行い、要請に応じていない事業者に個別の要請を行う必要がある。
 そして、個別の要請に応じていない事業者には、弁明の手続きを経て、要請に応じないことに正当な理由がなく、かつ、まん延防止のため特に必要と認める場合に限り、要請に従うことを命令できる仕組みとなっている。
 そのため命令を出すまでに一定の時間がかかることは避けられないが、措置の開始から19日後に命令を出したケース(岡山県)もある。

命令に従わない店舗に過料手続きも

 特措法に基づく命令に従わなければ、過料20万円ないし30万円が科せられる可能性がある。

 命令を受けて従った店も一定数あるとみられる(店名を公表している自治体は、命令に従うと削除する運用を行っている)。
 一方で、命令に従わないで営業を続けている店もある(そもそも命令は、要請に応じていない店舗全てに出されているわけではなく、営業を続けている店がどれくらいあるかはどの自治体も公表していない)。
 命令を出した後も営業を継続していることが確認されたとして、過料の手続きをとったと公表している自治体もある(例えば、宮城県 時短命令違反の11飲食店に過料求める手続き 全国初)。
 これは各自治体が裁判所に通知して行う手続きで非公開のため、実際に過料を支払った店舗数は不明だ。

<お知らせ>
「コロナ禍検証プロジェクト」はメルマガ(無料)配信を始めました。
ご関心のある方は、是非ご登録ください(いつでも解除できます)。
また、本プロジェクトの運営・調査活動には様々な経費が発生しております。
活動を継続するために、ご支援をいただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
【ご支援のページへ】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?